本日は「あなたの親は未熟な人ですか?」というテーマでお話ししようと思います。
人間はついつい親のことを理想化して見がちなので、親の実態をきちんと把握していないことが多いです。
親のポテンシャルというか、親の実力、親の社会力を過大評価しがちです。子供というのは。
「未熟な人」と考えたことない人が多いと思うんですよ。
今回はその点をちょっとお話しして、自分の親が未熟だったのかどうなのか、今はどうなのかをこの動画をきっかけに考えてもらいたいなと思います。
詳しくはこの僕の本ですね。
KADOKAWAから出てますけど、「親を憎むのやめる方法」という本を書いていますので、こちらももし良かったらご参考ください。
買わなくていいですけどね。いっぱいありますから、親の話をしている動画は。
コンテンツ
育てるのが苦手な親
親子関係を考える上で、毒親とか色々な言い方をネット上ではしていますけど、僕はあまり毒親という言葉は好きじゃなくて、使わないです。
なぜかというと、毒親と言ってもあまり解決していかないし、治療上進んでいく感じがしないんですよね。
言うのであれば、育てるのが苦手な親と育てにくい子供がいるんじゃないかという見方の方がいいと思います。
育てるのが苦手ということですよね。
子供から見て毒親だと思っている人たちはいると思うんですよ。何なんだ、じゃあ産まなかったらいいじゃないかと思うかもしれないけれど、子どもを愛した瞬間が1秒もない親はいないですね。
これは必ずそうだと思います。
もしかしたら何万人に一人かの頻度だったらあるかもしれないけれども、基本的には子供のことを愛しているんですね。
ただ、育てるのが苦手が故に、愛情が怒りやフラストレーションに変わることはあります。
育てるのが苦手な親というのはどういう特徴があるのかと言うと、いろいろな要素から成り立ちます。
例えば、貧困の問題ですね。
よくあるのは貧困で忙しいから子育てまでエネルギーが回せない。職場環境の問題とかパワハラ・セクハラの問題で疲れている。
共働きになっている、今多いんですけどね。
あとは離婚してシングルになっているとか、色々な問題があるかなと思います。
その結果、子育てにエネルギーを回せなくなっていて、結果的に育てるのが苦手な親になっている。
そして子供との間にフラストレーションを起こし、立場的に上の親が暴力に訴えてしまう。
言葉の暴力だったり、物理的な暴力だったりといったことがあると思います。
あとは親に精神的な病気がある場合。
うつ病、躁うつ病、統合失調症、発達障害の問題で親自身が虐待を受けていたりトラウマがあって、子育てに影響を与えてしまっている問題もあったりします。
その結果、育てるのが苦手ということもある。
あと親が虚弱。子供を育てる体力がないということです
昔の物語とか小説、映画、漫画など古典的なものを読むと、親が母親が病弱で乳母に育てられたという話がいっぱいありますよね。
でも現代は乳母はいないじゃないですか。
現代は乳母がいないので、全部母親が育てたりしているわけですよね。しかも核家族でね。
それは体力的に厳しくて、十分に育てられない親も出てきますよね。
そういうものですね。
体力は人によって全然違うので難しい。
体力がない女性もいますから、そういう人にとってはきついだろうなと思います。
あとは男性と同じように働いてしまうと、やっぱり家に帰って来た時に体力が残っていないんですよ。
よく臨床現場で女医さんは性格が悪いんだとか、実は女医さんて性格が悪いみたいなことを患者さんや看護師さんから言われているのを聞きますけど、性格悪いんじゃなくて、僕同期だからよくわかるんですけど、同級生とか見ていると思うんですけど、性格が悪いのではなくて、たまたま疲れていたとか、たまたまイライラしていたとか、ちょっと調子悪かったから言葉が強くなっていたんだろうなと思うことが結構多いんですよ。
性格が元々悪いとかじゃなくて、体力的な問題だったりするんですよね。
男の人はやっぱりなんだかんだ言って女性よりは体力があるので、当直明けでもバリバリ働けたりするけど、女性だと同じようにいかなくて疲れちゃって、ついつい言葉が強くなってしまうことはあるなと思います。
体力は結構影響するので、その結果育てるのが苦手な人が出てくるなと思います。
あとは自ら問題を招いてしまう場合があります。
トラブルに突っ込んでしまって、結果的にぐちゃぐちゃになっているパターンもあります。
不倫の問題、浮気の問題、酒、ギャンブルの問題ですね。
ほどほどに付き合えばいいと言いつつ付き合えず、その魔力が故に理性でコントロールできず、自分の家庭や生活を壊してしまうことはありますね。
こういうもののせいで結果的に家庭の方にエネルギーがさけなくて、あと夫婦仲が悪くなってしまって育てるのが苦手、というタイプもあったりします。
子供の問題
親だけの問題じゃなくて、もちろん子供の問題もあります。
育てにくい子供はいるわけですよ。
知的な問題、発達障害の問題、うつ、いじめからくるトラウマ、子ども自身の虚弱さ、体力的な問題とかあったりする。
育てるのが苦手な親もいれば、育てにくい子供もいるという感じです。
親と子供は遺伝子が一緒なので、基本的には。
両親の遺伝子を半分ずつもらったのが子供なので、似ることが多いんですよ。
虚弱な親からは虚弱な子が生まれやすい。体力がない子がね。
発達の問題や知的な問題があると親にも同じような傾向があったりする。相乗効果になりやすいですね。
独立した問題ではなくて、相関関係があるので、マイナスの出来事が連鎖しやすいということがあります。
それはよく思いますね。
子育ての問題で僕はよく相談を受けますけど、他の人の子育ての話を聞いても意味がないことは結構あるんですよね。
それでかえって傷つくことがあるんですよ。
例えば、芸能人がやっている子育て、東大に送った母親の子育て術とかよくバズったりするし、大衆の目を引きますけど、ある種のキャンプ場のカレーみたいなことはあるんですよね。
つまり、誰が作ってもおいしく作れるみたいなもので、そういう子供っているわけですよね。
誰がやってもうまくいく子供はいるし、誰が育ててもなかなかうまくいかない子供もいる。
人間は動物なので、どうしてもそういう要素はありますね。
育てにくいからといって、人間として価値がないとか、そういうわけでは全くないですよ。もちろんね。
全ての人間に価値があるんですけれども。
でも育てやすい育てにくいというのはあるので、そこら辺は遺伝的な問題で決まってきますから、育て方だけの問題じゃないよということです。
親は変わらないのか?
じゃあ、親は変わらないのか。
こういう事実を知った上で親は変わらないのか。
育てるのが苦手な親は、いつまで経っても育てられないのか。育てるのは苦手なんですか、ということです。
それもちょっと違うんですよ。
育てるのが苦手な親は、しっかり教育をしてあげることによって育てるのが得意な親に変えていくことができます。
例えば、引きこもりの親と教育というテーマがあって、引きこもりの親に対してしっかり疾患教育をしたりとか、親にサポートをしてあげるとか、親に教育をしてあげると、親が引きこもりの子に対してうまく接せられるようになるんですね。
そうすると、今まで引きこもりの子供を傷つける行動しかできなかった親が、子供を後押しする親に変わるんですね。
治療者側に回ることがあります。
教育はとても重要なので、教育によって変わっていきますね。
子育てって今は難しいんですよ。
それはなぜかというと子供時代が延びているからですね。モラトリアムが延長していると言います。
子供時代が延びているのと、子育てに求められるレベルがすごく上がっています。
最近は就活を手伝ったり、転職の相談に乗るのも親の責任だったりするしね。
孫を一緒に育てるのも親の責任だったりしますから、それは難しいよね。難化している。
今時の親はやってくれる親はそこまでやってくれるんですよね。
転職や復職まで一緒に考えるところまでします。
でもやらない親は全くやらないので、ここの格差はすごく大きくなっているなというのは臨床していても思います。
当然手厚いケアをできる親とそうじゃない親、人間理解がある親とそうじゃない親とで治療成績の差があります。それはすごく思いますね。
親の成熟・未熟
親の成熟・未熟とはどういうことなのかという話をします。
当然、稼ぐ力があるとか仕事で成功しているとか、学歴とは別ですね、人格の成熟は。
もちろん相関関係はありますよ、ある程度。
稼ぐ力がある人、リーダーシップを取っている人の方が、取っていない人よりも成熟度は高い可能性が高い。
学歴がある人の方が、学歴がない人よりも成熟している可能性は高いですね。
知識が多いとか、受験勉強を我慢できるという点とかでね。
だけど、必ずしもイコールではないですね。
人格に成熟と未熟があるんですか。そんなの差別的じゃないかと思う人もいるかもしれません。
これはまあいろいろ分かれるところですね。
哲学の中でも教育学の中でもよく議論されているテーマかなと思います。
多様性が大事だと言っておきながら、成熟と未熟という上下関係はあるのかということですよね。
人間の人格に質的な差異はあるのか、ということですけども、これはよく哲学的にもディスカッションされていて、答えは出てません。
ただ、あるとすれば、成熟した人間というのは未熟な人間よりもメタ認知が進んでいる、つまり、俯瞰的にものを見る力が強かったり、マインドフルネスを身につけている。感情が高ぶっても自らの力で感情を落ち着ける。
そういうボディコントロール、マインドコントロールが上手い。
脱中心化、自己中心的なことではなく、他人の視点で物事を考えられる。
第三者の視点で物事を考えられる、視点を変えることがうまいなどは成熟している人間の特徴というか要素なのかなと思います。
そういう風に言われることが多いですね。
育てるのが苦手な親が未熟なのかとか、育てにくい子供が未熟なのかとか、そういう話だけではないんだけれども、成熟・未熟という観点からその人の人格をしっかり押さえていく。
そして教育できるところは教育していくことはとても重要だったりします。
未熟な人ですかと言った時に、未熟・成熟と言うよりは、育てるのが得意・不得意で考えつつ、でも未熟・成熟の観点も大事だということですね。
うまく説明できていない気がしますけど、ちょっと勘弁してください。
今回は、あなたの親を未熟な人ですか?というテーマでお話ししました。
親子問題
2023.9.5