コンサータの処方に関して(2021/4/10更新)
ADHDの治療薬であるコンサータは、2019年12月1日より登録制になりました。
依存性の危険があり、2020年12月31日以降は専門医・登録医でないと処方はできません。
それまでにご登録、もしくは薬の変更を主治医とご相談ください。
登録の際に、「子供の時の通知表、学校からの連絡帳、母子手帳を持参していただく」もしくは「家族、友人、職場の同僚・上司などの第三者と一緒に受診してもらう、もしくは彼らからの手紙やメモ、メールなどを持参していただく」ことが必要となります。(第三者として、教師や心理相談員なども含みます。前主治医の紹介状は含みません)
これまで処方されていた人は2021年1月1日までに登録が必要です。
20歳未満の方については、代諾者の署名(通常は親)の署名が必要です。一緒に来院してください。
ご準備のほど、よろしくお願いします。
こちらの資料を参考にしてください。情報提供書(PDF) 情報提供書(Word)
また、登録後のコンサータ処方は、登録医からのみとなります。
【目次】
- コンサータとは
- コンサータの効果とADHDの症状を緩和する仕組み
- コンサータの用法・用量
- コンサータの副作用・依存性
- コンサータと他の治療薬との違い
- コンサータの処方に関して
- コンサータに関するよくある質問
コンサータとは
ADHDの治療薬の一つです。治療薬は主に3つあります。
コンサータ(メチルフェニデート徐放剤) 18~72㎎ |
薬物成分が12h程度かけて少しずつ放出される。効果は非常に高く即効性あり。副作用は吐き気、食欲低下。依存性の危険があり、専門医・登録医でないと処方はできない。 |
ストラテラ(アトモキセチン) 80~120㎎ |
SNRIに似た、集中力アップの薬。効果が出るまでに1か月程度かかることが多い。ジェネリック品が存在するため、若干安い。副作用は吐き気。 |
インチュニブ(グランファシン) 4~6㎎(18歳以上) |
血圧の薬からできた薬。衝動性が抑えられる。副作用は眠気 |
コンサータの効果とADHDの症状を緩和する仕組み
コンサータの効果を説明する前にADHDについて簡単に整理します。
ADHDは脳の機能の発達/成熟に偏りがあるために症状が現れると考えられています。
脳はひとつの臓器ですが部位によって機能が異なります。例えば脳をひとつの大きな組織だと想像します。部位によって働きが異なるというのは複数の部署があるイメージです。そして、1つの組織と言えど、大きな組織になると各部署が、奇妙で複雑な政治的駆け引きをしつつ絶妙なバランスをとるように、脳というのも各部署で異なる主張をしつつなんとなく統合をとっている状態です。
ADHDの場合、物事を順序だてて行う、課題の優先順位をつける、などの実行機能が低下しています。これは前頭葉におけるドパミンとノルアドレナリンが不足しているためと考えられています。また、将来の報酬を志向する力(遅延報酬系)と関連している、線条体や側頭葉におけるドパミンやノルアドレナリンも不足していると考えられています。
ストレスによって、ドパミンやノルアドレナリンは増えますが、普段から少ないとそれらが過剰に反応し過覚醒となります。これは、アルコール乱用や衝動性不注意、過覚醒からくる集中困難、不安の原因と考えられています。
コンサータは、線条体(ぜんじょうたい)、側坐核(そくざかく)という脳の部位におけるドパミンの再取り込みを阻害します。ドパミンが増え神経系が活性化されます。線条体、側坐核にも作用しますので、報酬系や依存性に関与します。前頭葉におけるノルアドレナリン、ドパミンの再取り込みが阻害されます。ノルアドレナリン、ドパミンが増え、神経系が活性化されます。(各脳の部位によって受容体の分布が異なったり、作用の仕方が違うので、「どうしてドパミンだけ?」と疑問になると思いますが、そこはそういうものだと思ってください)
薬は飲んだその日から効きます。偽薬との比較などの成績を加味すると、コンサータが3剤の中で最も効果があると言われています。コンサータは12時間かけてゆっくりと放出されます。最高血中濃度に達するのに7時間かかります。急激に血中濃度が高まると、快楽を伴い依存になりやすいですが、コンサータの場合その心配はありません。まずは外側にある薬の成分が溶け、その後内部にある成分が徐々に出てくる構造だらかです。
コンサータの用法・用量
「1日:18㎎」で開始し、最終的に「18~72㎎」で維持をします。
薬価は「18㎎:344円」「27㎎:381円」「36㎎:410円」となります。
資格のある医師でないと処方はできません。医師の指示なしに自己判断で飲むのをやめたり、飲む量を変えたり、飲み忘れたから2回分を一度に飲むなどはやめてください。
コンサータの副作用・依存性
コンサータの副作用は食欲低下、動悸、寝つきが悪い、体重減少、頭痛、腹痛、発熱、口渇などです。コンサータや睡眠薬、抗不安薬には依存性があります。医師の処方を守り、適正使用をしてください。それらについて、この動画で説明しています。
コンサータの依存性を説明するために、自律神経系について説明します。自律神経系は交感神経系と副交感神経系の二つからなります。交感神経系は緊張したり集中力をアップさせるものです。例えばスポーツの試合中は、交感神経が優位になるので身体が熱くなり普段よりパフォーマンスが上がります。副交感神経系は身体をリラックスをさせるもので、眠る直前をイメージしてください。けだるさや、やる気が出なくなると思います。
人間の身体はこの二つの力の押し合いで決まります。これを人為的にコントロールしようとして開発されたのが薬でありドラッグです。アッパー系と呼ばれる薬は交感神経系を刺激し、代表としては覚せい剤やコンサータ、カフェイン、ニコチン、コカインです。カフェインもドラッグと言われると意外ですよね。
ダウナー系と呼ばれる薬は副交感神経系を刺激します。主にアルコールや抗不安薬や睡眠薬です。アルコールは合法で手に入るキングオブドラッグ(ドラックの王様)です。依存しやすいドラッグとは、作用する強さや作用時間の短さで決まります。(効果が切れるのが早いほど、また欲しくなってしまうのです)
コンサータや睡眠薬、抗不安薬には依存性があります。医師の処方を守り、適正使用をしてください。
コンサータと他の治療薬との違い
■アトモキセチン(NRI)
前頭皮質における、ノルアドレナリンの再取り込みを阻害します。ノルアドレナリンが増え、神経系が活性化されます。側坐核には作用しません(ノルアドレナリントランスポーターが少ないため)。
アトモキセチンはもともと抗うつ薬として開発された経緯もあり、コンサータと同じように作用するまで2週間以上かかります。神経伝達物質の増量により、遺伝子発現が変化し、受容体合成が減少し(受容体が減り)、神経新生が促されると考えられています
効果はコンサータに劣るという報告がある一方、劣らないという研究報告もあります。優れているという報告はほとんどありません。
※SNRIはなぜADHDに効果がないのかですが、臨床実験結果ではばらつきがあり、治療にも利用されることもあるものの詳しくは調べられていません。サインバルタの場合はセロトニンの作用が強くノルアドレナリンが弱いです。(うつ病では前頭前野だけではなく、偏桃体や海馬、視床下部、側坐核、線条体…と様々な部分での機能低下をおこしています)
アトモキセチンはコンサータと違い、24時間作用すること(効果が切れる実感がないこと)や資格がいらないこと、ジェネリックがあり薬価が安いことなどが利点であります。
利用方法は「1日40㎎」から開始し「80~120㎎」で維持をする。薬価は「10㎎:112円」「40㎎:159円」(いずれもジェネリック)
副作用は、食欲低下、頭痛などがあります。
■インチュニブ(グアンファシン)
インチュニブは前頭前皮質に高密度に存在するアドレナリン受容体(α2A受容体)を刺激し、アドレナリン様の作用をすることで、神経系を活性化させます。
副作用として、①α2B受容体は視床に局在し鎮静に関与しているためこれも刺激してしまうことがある。②α2C受容体は鎮静や低血圧に関与しこれも刺激してしまうことがある。があげられます。
もともと血圧の薬として開発されていた経緯があり、上記の副作用もイメージしやすいかもしれません。効果は前出のコンサータ・アトモキセチンの2剤に劣り、第3選択肢となることが多いです。
利用方法は「1日2㎎」で開始し「4~6㎎」で維持します。薬価は「1㎎:411円」「3㎎:543円」です。
副作用は、低血圧、傾眠などがあります。(※治療に使いにくい印象があります)
■参考文献
・ストール精神薬理学エッセンシャルズ(第4版)510-542p 監訳:仙波純一
・今日の治療薬2020 882-884p
コンサータの処方に関して
ADHDの治療薬であるコンサータは、2019年12月1日より登録制になりました。依存性の危険があるため、2020年12月31日以降は専門医・登録医でないと処方はできません。それまでにご登録、もしくは薬の変更を主治医とご相談ください。
登録の際に、「子供の時の通知表、学校からの連絡帳、母子手帳を持参していただく」もしくは「家族、友人、職場の同僚・上司などの第三者と一緒に受診してもらう」もしくは「彼らからの手紙やメモ、メールなどを持参していただく」ことが必要となります。(第三者として、教師や心理相談員なども含みます。前主治医の紹介状は含みません)
これまで処方されていた人は2021年1月1日までに登録が必要です。20歳未満の方については、代諾者の署名(通常は親)の署名が必要です。一緒に来院してください。
※登録後のコンサータ処方は登録医からのみとなります。
コンサータに関するよくある質問
コンサータ以外に治療法はありませんか?
アトモキセチンもしくはインチュニブなどの薬で、治療していくことも可能です。
薬は一生飲まないといけないのですか?
そんなことはありません。薬はあくまで補助剤です。薬を飲みながら上手に生きるコツをつかめれば、薬がなくても生活に困らなくなります。上手に生きるコツを掴むためには、本人及び周囲の人が特性の理解を深めていくことが重要です。
発達障害は病気なのか、そうじゃないのか?
発達障害は病気ではなく特性の一つです。分断されたものではなくグラデーションによるものです。白黒に分けるのではなく、薄いグレーや濃いグレーがあります。混乱の原因は人間認知の「分断本能」によります。人は二つの概念を対立させて考えがちですが、自然界にあるものは2つに分断できるものではありません。
発達障害に関する治療の概要を動画・記事で解説しています。ご参照ください。
・発達障害の診断治療について、全ての流れを説明します【精神科医・益田裕介/早稲田メンタルクリニック】
・発達障害の治療について