発達障害の症状は一人一人かなり違います。ですので「こういうものです」というのは意外と難しいのです。
我々臨床家がどのように患者さんを理解しているのかを語ろうと思ったのですが、それは難しく、どうして難しいのかというと、「患者さんそのもの」を脳にダウンロードしていて、言葉にするときはそこから「この人はこういうことを言うだろうな」と小出しにしているからです。
人間の脳は不思議で、その人そのままを理解してダウンロードする方が、その人の特徴を羅列して文字化したものを理解するより遥かに容易です。
発達障害の特徴をあえて喋るのであれば、
・ASD的な特徴
・ADHD的な特徴
・その2つの疾患に共通する特徴
・二次障害としての特徴
この4つの問題がミックスされたものが出てくるものが発達障害の症状です。
コンテンツ
自閉スペクトラム症(ASD)の特徴
・コミュニケーション能力に難がある
・集団になじむことができにくい
・他者理解力が低い、頑固
・感覚過敏(薬物治療:リスペリドン、アリピプラゾール)
注意欠如多動症(ADHD)の特徴
・不注意
・多動性
・衝動性
薬物治療:メチルフェニデート、アトモキセチン、グアンファシン
その他、共通する特徴
・睡眠リズムが乱れやすい
・数的感覚が苦手
・言語能力(言い間違え、敬語が使えない)
・不器用さ、運動能力
・処理速度が遅い
二次障害
・うつ、パニック障害
・PTSD、トラウマ
・対人不安、強迫性
・依存症(アルコール、ギャンブル)
4つの特徴の組み合わせ
以上の4つの特徴の組み合わせが色々とあります。
・集団に一見馴染んでいるように見えるように見えるけれど、おとなしいだけで自分から発言はできない
・衝動性と数的感覚の鈍さでギャンブル依存になる
・コミュニケーション能力はあるが、他者理解は低くて頑固
など、色々な特徴の押し引きがあり、その結果その人らしさが出たりします。
それがどうして一つの疾患とわかるのですか、治療ができるのですかと疑問があるとは思うのですがわかるものです。
余談になりますが、本に書かれているものと実際の症例が違うことは多く、患者さんはよく混乱されます。
例えを考えてみたのですが、ひき肉があった時に照り焼きバーガーを作ればみんなにとって美味しいし、玉ねぎがあれば他の野菜と煮込んでカレーにすればみんなにとって美味しくなります。本や理論というのはそういう「レシピ」です。確かに正解ではあるけれど、本当のその素材らしさは失われています。
しかし三ツ星レストランのシェフならば、その素材がどういう素材なのかということを考えて、料理を提案すると思います。我々治療者は、大衆料理よりは三ツ星シェフを目指しているわけです。ですので、本に書いてあることとは違ったアプローチをしたりします。何でもかんでも照り焼きバーガーやカレーにしてしまうのは本質を逃しているし、症状が軽い人に向けた一方的なアプローチなのではないかという気がします。
とはいえ、三ツ星シェフみたいなアプローチが良いのだと思いつつ、意外とカレーの方が合ってるなということもあります。その辺りはその場の雰囲気に合わせてやっています。
発達障害
2020.12.26