今日は発達障害の治療について解説します。
発達障害についての詳細は別の動画にもありますのでそちらをご覧ください。
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発達障害の治療
発達障害は主にASDとADHDの疾患があり、この2つの特性を持っている人が多いです。
ASDはこだわり、過集中、コミュニケーションの不器用さ、ADHDは不注意、多動、衝動性といった特性があります。
こういった特性を持っているため、ストレスにさらされた際に健康な人に比べて対処能力が弱くなります。それで困ってしまい、二次障害としてうつ、不安、トラウマ、依存症になったりすることがあります。
ストレスや困りごとがあっても「それが自分だ、これで良い」と思える人は診察に来ることはまずありません。ですが気が弱かったりすると、自責感や無価値感を感じることによってうつになってしまい来院されます。
二次障害までくると、トラブルがトラブルを呼びます。うつになってくるとより忘れっぽさが増し、忘れっぽさが増すとより困りごとやストレスが増し、それによってうつが酷くなりというサイクルに入ってしまいます。
治療に関しては、ASD/ADHDと二次障害のうつなどの両方に薬物治療をしていくかというと、それはしません。薬が増えすぎてしまうためです。薬は根元であるASD/ADHDの方の治療に使います。ストレスや困りごとに関しては一緒に考えて行くというスタンス、二次障害に関しては極力薬は使わないようにします。
まとめると、薬物治療をしつつ、困りごとと特性を理解しつつ、解決へ導く、ということです。
薬物治療
ASDの易刺激性(音や匂いなどへの感覚過敏)にはリスペリドンやアリピプラゾールといった薬を使います。副作用に手の震えがありますので量を調整しながら使います。
ADHDの不注意、多動性、衝動性に関しては、大人の場合は3種類の薬を使い分けます。
・メチルフェニデート:登録医のみが処方できます。薬の効果は10時間ほどです。副作用としては食欲低下、依存性が指摘されています。
・アトモキセチン:効果が出るまでに2週間〜8週間、12週間ほどかかり、飲み始めには吐き気が出ることがあります。
・グアンファシン:衝動性が高い人に有効です。自傷してしまう、喧嘩になってしまうといった人に使います。副作用としては血圧低下や眠気があります。僕は少ない容量で使うことが多いです。
また、睡眠リズムが崩れやすい人が多いので、ロゼレムや他の睡眠薬を使いながらリズムのコントロールをすることもあります。
精神療法
精神療法で重要なのは、「そもそも解決すべきことは何なのか」をはっきりさせることです。全部を同時に変えていくことは精神療法的にはよくないので、どれかをまず解決していくようにします。患者さんは焦っているので1つずつやっていきましょうと言うと「いやいや」となるのですが、そこはきちんと説明して1つ1つやっていく、一番重要な解決すべきことを明らかにしてからやる必要があることを言います。
解決すべき課題というのは就職、復職など具体的に落とし込むことが大事です。解決すべきことが本当にできることなのか、無理なのかも明らかにする必要があり、本人の努力でできるものなのか、合理的配慮を求める余地があるのかということも考えます。
例えば職場の雑音が気になり、皆が帰った後の残業の時間でしか集中できないという患者さんの場合、薬物治療や少しずつ雑音に慣れるように家でも慣らしていく訓練をするといったことをした上で、合理的配慮が必要な場合は席の移動をお願いしたり、在宅勤務ができるよう診断書を書くこともあります。自分を変える、外部を変える、この2つを同時に進めていくことが大事です。
周囲の助言の吟味
診察で、
「親は甘えだと言う」
「上司は我慢しろと言う」
「恋人や配偶者はやればできるでしょと押し付けて来る」
といった話が出ることがあります。
これは究極的に言うと他人の課題に悩まされるなということです。
例えば恋人の場合は、「私の恋人はこういう人であってほしい」ということを押し付けて来ることがありますが、恋人にしろ親にしろ、過度な理想との折り合いはつけにくいものです。
臨床では、それはあなたの課題ではなく相手の課題ではないのか?ということを一緒に吟味することをよくやります。発達障害の人は自他の境界が緩く、相手の問題を自分の問題のように錯覚することがかなりあるのです。
ただ、自他の境界が緩いといってもジャイアンタイプなら良いわけです。悩んだりすることはありません。(周りは困るかもしれませんが)
通院される患者さんは「自分のものはあなたのもの、あなたのものはあなたのもの」というタイプの方が多く、他人の悩み事も引き受けて一緒に悩みすぎてしまうことが多いです。
特性があるがゆえにこの辺りはなかなか理解されにくいのですが、通院していく中で少しずつ理解してもらうようにしています。
当院はカウンセリングも行っていますので、じっくり取り組みたい方はカウンセリングもご利用ください。
発達障害
2020.12.27