今日は「あなたが幸せを感じられない理由」について語ってみようと思います。それは、「幸せ」について考える時間が足りていないのです。これまでの人生で、どういうことが幸せなのかを考える時間がなかったから幸せを感じられないのです。幸せを感じるから幸せがわかる、というものではありません。こういうことが幸せなのかなと考えていれば、幸せがどういうものかがわかります。
今回も治療のゴールに関する話題です。前回の動画では治療のゴールとして他人から適切に助けを借りることについて語りましたが、今回は幸せについて考える時間を作りましょうよという動画です。
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「幸せ」について考える時間
「幸せ」について考えたことがないというのは、基本的には「問題解決にばかり頭が支配されている」ということです。
僕も「あれやらないと」「今のYouTubeの問題はこれだからああしないと」「クリニックの問題は…」「自分のこういう欠点を直したい」「借金があるからどうしよう」などと考えてしまいますが、きりがありません。
患者さんも「あの問題や不安を解決しようと思っているけれどどうしましょう」「あれがあるから不安なんです」と言ったりします。もちろん診察は不安や問題を解決する場所ではありますが、不安がなくなれば幸せなのだという考えは違うのです。
確かにそういう理論もあります。不安がない状態、欲望に支配されない状態、フロイトも「快楽原則」という形で言っていますが、不安がまったくゼロになることはないので、できるだけ不安は少なく、だけど幸せを感じる育てていく力を育てるのが精神科治療の基本です。
なぜ幸せについて考えられないのか
精神分析的には心は「超自我」「意識」「リビドー」3つの要素でできていると言います。
超自我は、社会の教え、親の教え、常識、道徳などです。「もっと頑張れ」「こうあるべきだ」といったいわば権威が意識に対して命令をします。リビドーは食欲、性欲、不安などで、意識に衝動的に刺激をしていきます。
意識はこの2つからの命令をこなしながらなんとか問題解決をしていきたいと思っていますが、これらに支配されてしまうと人は不幸だし神経症が悪化してしまいます。ただ支配されないというのは、超自我とリビドー2つの力の課題解決ではありません。2つの力を弱めていくということです。ですが、そこだけの視点だと治療はうまくいきません。
なぜ超自我やリビドーに支配されやすいのか
どうして超自我やリビドーに支配されやすいのかというと、自分が楽しんだことを否定、妨害されてきたことにより、本人たちの中で「楽しんではいけない」「好きなことをやってはいけない」と思い込んでいるためです。
診察室でも「何か楽しかったことや良かったことはありますか?」と聞くと、患者さんは急に焦ってしまうことがあります。患者さんでなくても、楽しかったことや良かったことを話すのは苦手な人が多いと思います。僕も苦手です。足を引っ張るのが好きな人もいますから。でも楽しくするのは良いことだと思います。
いいお金を使う、良い時間を過ごす
患者さんがやったことなどに対して「いいお金の使い方をしましたね」とか「良い時間を過ごせましたね」といった良いフィードバックができるようになりたいなと最近思うようになりました。
あるうつの患者さんで、子犬を飼い始めた人がいました。基本的に治療中にペットを飼うのはよくないとされていますが、おそるおそる飼い始めました。ですがその子犬が病気になってしまい、子犬の値段が10万円くらいだったのに、治療費が80万円くらいかかってしまいました。
患者さんはその話を僕にするのが怖かったようですが、僕は別にそれを聞いて怒りはしないわけです。親ならば怒る人はいるかもしれません。僕が「これまでうつになるくらい頑張って働いてきてお金を貯められたからそういうことができたのですね」と言うと患者さんは喜び、「成功体験」として治療がぐっと進みました。それで、そのような良いフィードバックが大事なのだと患者さんから学びました。
いいお金を使う、良い時間を過ごすのが幸せの一つなのかなと思います。
フロー状態
あとは幸せとは何かというと「フロー状態」に入ることです。フロー状態とは集中している、やりがいを感じている、没頭している瞬間です。良い感じで集中しているときは幸せです。人のためになることだけがやりがいとも限りません。僕の好きな「スラムダンク」の流川楓もすぐフローに入るのが良いですね。
前向きになる考え方
2021.1.24