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クエチアピンおよびMARTAについて解説します

00:00 今日のテーマ
02:22 クエチアピン
03:48 MARTAとは
08:00 作用(クロザピン>オランザピン>クエチアピン)
09:11 副作用
12:42 雑感

今日は「クエチアピン」について解説します。クエチアピンはとても説明が難しいです。このチャンネルは患者さんだけでなく他科の先生、看護師さん、福祉方などもご覧になっていておそらくプロの方ほどクエチアピンについて知りたいと思っていると思うのですが、説明がうまくいかなかったので簡単バージョンで撮ります。もしプロの方でもっと詳しく知りたい方は申し訳ないのですがご自分で調べていただければと思います。

クエチアピンは薬理機序を理解するのはとても難しいのですが、いろいろな場面で使われる薬です。認知症の方が暴れてしまうときにも使われますので、内科の先生でも使っている方は多いと思います。

クエチアピン

クエチアピンは商品名だとセロクエルです。ジェネリックも出ています。新薬でビプレッソ徐放剤もあります。セロクエルは作用時間が6時間程度と短いので1日に数回飲まないといけないのですが、ビプレッソは徐放剤(少しずつ放出される)なので1日1回の服用で済みます。

分類としては抗精神病薬で、古いものが定型、新しいものが非定型です。非定型の中にはSDA(リスペリドン等)、MARTA、DPA(エビリファイ等)があります。今回のクエチアピンはMARTAです。MARTAのMはマルチのMで、様々な受容体に効くということです。

MARTAとは

MARTAとは簡単に言うと、

・ドパミンブロックだけでなく、様々な作用がある
MARTAのMはマルチのMですので、いろいろなレセプターにくっつきます。
例えば統合失調症の場合、ドパミンが出すぎて幻覚・妄想が起こるためドパミンブロックが大事です。ですが、ブロックをしてしまうと他の運動器への副作用(ムズムズ、パーキンソン症状)が出てしまいます。そこでセロトニンも刺激してあげます。セロトニンを刺激するとドパミンが相対的に減ります。ですので、ドパミンをブロックしなくてもドパミンが減るという作用です。セロトニンが増えるからうつにも効くということです。

よく経済に例えるのですが、政府は景気をよくするためには金融緩和だと金利を下げて銀行からお金を吐き出させようとしますが、吐き出しても飲食や観光業に流れていくわけではないからGo Toキャンペーンもやる、ただそのキャンペーンでは商店街の人は困るから商品券を作るなどいろいろなことをします。シンプルにベーシックインカムだけやれば良いのではないかというのがSDAです。いろいろな感じで行こうよというのがMARTAです。

脳は複雑でいろいろ絡み合っているので、1箇所だけ抑えても不都合が出ることがあります。いろいろなところを抑えたり刺激したりしているのがたまたま合っていてそれが商品化された感じです。

また、抗ヒスタミン作用があるので不眠にも効果があります。

・最強:クロザピンがある
MARTAにはクロザピンという薬があります。クロザピンは最強の抗精神病薬で一番効きます。ですが副作用もとても多く、なかなか使われません。クロザピンが最強なのでそれを真似て薬を作ってきた歴史があります。それがオランザピンでありクエチアピンです。作用はクロザピンほどではないけれど、副作用は格段に減って使いやすくなっています。

・副作用も様々
作用も様々なように、副作用も様々にあります。有名なのは糖尿病です。これは気をつけなければなりません。

作用(クロザピン>オランザピン>クエチアピン)

作用をもう一度振り返ります。

・抗精神病作用(幻覚・妄想) 〜750mg

・抗うつ作用 〜300mg

・睡眠作用 〜50mg

作用の強い順番は、クロザピン>オランザピン>クエチアピンです。

抗うつ作用もあるのでうつ病の増強療法として使います。抗うつ薬単剤でなかなかうまくいかない人に抗精神病薬を少量入れるというやり方はよくします。不眠が強い人に対してもクエチアピンやオランザピンを少量入れることで眠れるようにすることもあります。ただ、副作用の問題もあるので使いどころを見極めないといけないと思います。

副作用

・鎮静(だるい、ぼーっとする、眠くなる)

・体重増加→糖尿病、高脂血症

・ふらつき、低血圧

・ムズムズ、パーキンソン症状(他の抗精神病薬よりは少ない)

クロザピンの副作用には「顆粒球減少」というものがあります。顆粒球とは白血球のことで、白血球が減って感染しやすくなってしまいます。そのため、血液内科と連携が取れるような施設でないと処方ができないと言われています。そのためクロザピンを処方できる施設は限られています。

雑感

精神科医は、患者さんから恨まれたり感謝されたり誤解されたりということがあります。それは抗精神病薬のような薬を使う場合でも同じです。
精神科医は統合失調症の治療からスタートするので、このような薬の使い方を覚えていくことで医者らしさ、人生の限界性を体で覚えていくということがあります。精神科は心で理解していく部分もありますが、サイエンスの部分もあります。クエチアピンを使いながら精神科医らしくなっていったような気がします。

【参考】
セロクエル 添付文書
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1179042C1023_2_23/

ビプレッソ徐放錠 添付文書
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1179042G1025_1_10/


2021.1.25

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