今日は「精神科医は人に好かれる人間であるべきか」について考えてみようと思います。
よくこんなことが言われます。
・医療もサービス業
・薬だけ出せば良い
・自己啓発の場(医師はメンターであるべき)
これらは全部、僕は違うと思っています。
医療は医療でありそれ以上でもそれ以下でもありませんが、僕らの中でも混乱することがあります。医師たる者はどうあるべきか、患者さんの欲望にどこまで従うべきかなどよく考えます。
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「好かれるべきである」という考え
好かれるべきであるという考えにはこのような根拠があります。
・目標としての価値
好かれる人間になろうとする過程で能力が高まるという考えです。医療の質が高ければ好かれますし、好かれる人間は素晴らしい道徳価値観を持っているので、人に好かれるように行動していくことに一定の価値はあるといいます。(という言い方をしている時点で、僕がそのような考えで行動すべきではないと考えていることに気づいたと思いますが…)
・治療成績
人間は感情的な生き物なので、主治医のことが好きでないと言われたことを聞かないものです。また医療はチーム医療なので、看護師や事務員に嫌われていてはきちんとした医療はできません。
・承認欲求=やりがい
好かれると承認欲求が満たされるのでやりがいも生まれ、治療者自身のメンタルにも役立ちます。
「目指すべきではない」という意見
好かれることを目指すべきではないという意見もあります。
・人気を目標にすべきではない
人に好かれるようなことをやるのではなく、自分が正しいと思ったことをやるべきという考えです。
・患者からの操作に屈する
好かれようとすると、患者さんにとって厳しい事実を伝えなければいけない場面でそれを避けてしまい、診療の場では安定しているけれど外では惨めな思いをさせてしまう、患者さんが本音を言えない場を作ってしまいます。
・陽性転移の強要
医師が患者さんから好かれようとしているのを患者さんは見抜きます。「益田は私から好かれようとしているな」と医師を憎めなくなってしまうと、時に治療者を憎むべき場面があるのに陽性転移の強要になってしまうためよくありません。
結論
結論は「塩梅が大事」ということです。
好かれるような努力も大事ですが、それに屈してはいけません。当たり前といえば当たり前ですが。
アンパンマンがもっと好かれようとして全ての世代に受け入れられるようにストーリーを変えたら困ってしまいます。精神科医も精神科医らしく振る舞えば良いのではないかと思います。精神科医が嫌われるのは普通と言えば普通なので、そんなものかなと思うべきかと思います。
・もともとのキャラ(非リア充)
精神科医になろうとする人はもともと非リア充だと思います。暗かったり変なやつだったり悩んだ人でないと精神科医にはなりません。
精神科医という看板を掲げたことでもともとのキャラを超えて昔果たせなかった人気者になろうとすると、ろくでもないことが起きます。
・好かれた方が良いのは当然
身なりに気を使うといったことも含めて、医者だからとデンと偉そうにしているのは違います。
・好感度が下がることに屈しない
これに屈するとろくでもないです。また言ってしまいましたが。僕は結局「目指すべきではない派」なんです。屈せずにやるべきことをやれば良いと思います。
とは言いつつ結局は塩梅が大事です。目指すべきではないと言っている人も臨床の場面では優しかったりしますし、言葉と行動のバランスが大事です。
精神科医の裏側
2021.1.30