今日は「精神科の診断のポイント」を3つお話ししようと思います。患者さんに診断について説明すると、みなさん混乱されたり「このような疾患ではないか」と質問を受けるのですが、精神科の診断は普段の脳の使い方と少し違うのです。
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1.コアな疾患イメージからのカテゴライズ
精神科の疾患はカテゴライズされていますが、ある種の「コア」な疾患イメージがあります。うつ病らしいうつ病、発達障害らしい発達障害といったようなものです。そのコアな疾患イメージから少し広がりがあります。
ホワイトボードの黒丸が誰が見ても疾患らしい疾患で、例えばうつ病であれば「中高年発症で、真面目で、突然落ち込み始めた、眠れない、食べれない」というようなものです。コアな疾患イメージとその周囲の広がりを漏れなくブレなく含めるために、右図のようにカテゴリー分けをしています。ですので、精神科に来た患者さんはいずれかのカテゴリーに当てはまるようになっています。
ただコアな疾患イメージがないとこのカテゴリー分けは使いづらく、DSM-5やICD-10のカテゴリーを覚えているだけでは診断は難しく、コアな疾患を診た経験がないとなかなかイメージしづらいものです。
2.除外診断
精神科の診断は除外診断の要素があります。
外因:気質疾患。脳に炎症があるからせん妄が起きて妄想が起きる。
↓体の病気ではないとなると次に移ります。
内因:うつ病、躁鬱病、統合失調症の3つ
↓妄想がある疾患ではないとなると心因に移ります
心因:人格障害、発達障害等
例)心肺脳に異常がない動悸→パニック発作やヒステリーを疑う(除外診断)
最初に精神科に行った人は検査していないが?
→理学初見は会話の中で取っています。ベイズ(発生頻度的にレアすぎるので除外)
組み合わせで判断しています。
3.社会適応の有無
精神科の診断の特徴としては、社会適応の有無も大事です。極端なものを異常とします。
例えば少し綺麗好きくらいでは、潔癖症とか強迫性障害とは言いません。これが町一番の綺麗好きとなれば行動しようと思っても生活しづらく、問題となります。
精神遅滞(知的障害)も、知的障害があるからといってそれは障害ではありません。ただ、上位1%などの場合は生活しにくいので「障害」と付けることによって社会保障をつけています。
発達障害の場合はグレーゾーンという形で疾患カテゴリーのイメージが広がっていて、薬物治療によってうつが良くなるというパターンもあります。
流行りすたりもありますが、これから医学が発展する中でわかってくることもあるのではないかと思います。
このように、精神科の診断は色々な要素を考えながらトータルで判断しなければならないので、難しいといえば難しいです。治療的な要素を含めながら診断を考えていくことも大事です。診断がつくことで患者さんの自己理解が深まり不安が消えるなど、診断それ自体が治療になることもあります。他に科学的な要素(遺伝子、脳科学、薬理機序)も理解しつつ、疾患イメージを使って診断しています。
【参考】
厚労省みんなのメンタルヘルス https://www.mhlw.go.jp/kokoro/
精神医学, 精神科臨床を哲学してみた
2021.2.25