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俯瞰的にものを考えるコツ。うつ病の歴史について解説します

00:00 今日のテーマ
01:00 うつ病、躁うつ病の歴史
06:39 科学的な治療

(※臨床精神医学テキスト 第4版では、ファルレの「循環精神病」は1854年、カールバウムの「躁病とうつ病は同一疾患ではないか」という記載は1882年となっております)

今日は「うつ病の歴史」を語ってみようと思います。
精神医学の歴史はまだ浅く、わかっていないこともたくさんありますし薬も最近出てきたばかりです。このことを皆さんと共有することで、人間の歴史について「こんなもんなんだなあ」と知ったり、世界や社会は絶対的なものではないということを感じ取ったりしていただけたらと思います。また、治療にも繋がるのではないかと思っています。

うつ病、躁うつ病の歴史

・ギリシャ時代
うつ病、躁うつ病という言葉は、紀元前400年(ギリシャ時代)にはもうあったと言われています。ヒポクラテスが「マニア(躁病)」「メランコリー(うつ病)」という記載をしました。メランコリーは日本語訳では黒胆汁病といわれます。

この時代は「体液説」というものがあり、脳の病気だとは考えられていませんでした。体をめぐる液体が淀んでいるからこの病気なのだと考えられていたのです。アリストテレスも体液説を信じていました。ギリシャ時代は科学的な思考はあったのですが、メスがなかなか入れにくかったのです。

・19世紀後半
キリスト教時代を経て、1854年にファルレ(仏)が「循環精神病」という記述をしました。1882年には、カールバウム(独)が躁病とうつ病は同一疾患ではないかという記載をしました。
(※ホワイトボードと年代が異なります)

この辺りでようやく一人の患者さんの病気の経過を追って記録するようになり、患者さんの変化を通じて病気を診断するという、精神医学としてはある意味当たり前のことが行われるようになりました。

キリスト教時代は聖書の教えがすべてで、人間は神様が作ったもので魂があってということが信じられた時代でした。ルネサンス時代(1600年ごろ)に聖書を疑うようになりましたが、人間、生物にまで疑いを持つ、つまり科学のメスが入るようになったのは19世紀後半になってからのことです。生物学に関して言えば、ダーウィンが進化論を発表したのが1850年代です。

そして、1899年にドイツの精神科医・大学教授のクレペリンが、ドイツとフランスにあった精神医学をきちっと調べて病名をまとめ、精神医学の教科書を作りました。このときに作られた疾患ごとの体系が今でも使われています。またこの頃は「気分障害(躁うつ病、うつ病)」と「統合失調症」は1つの病気だと考える派閥と2つの病気だと考える派閥があったのですが、クレペリンは別の病気だと分けました。

このように見てくると、人間の精神が病気によって病むのだとわかったのはここ100年ちょっとの話なのです。それまでは、人間は誰しも平等の力、能力、才能、魂があると思われていたのですが、脳のことがわかるにつれて人間は一人一人違うし、能力差もあるし、病気にもなるということがわかってきました。

20世紀に入ると第一次世界大戦、第二次世界大戦があり、国家というか人間の集団の恐ろしさを人類は学びました。

・フロイト
フロイトも1900年前後の時代の人なんですよね。治療法がない時代に、会話によって人を癒すことができるのではないかということを発見し、広めました。それ以前はフロイトはシャルコーに催眠術を習い、催眠術で人を治そうとしていたのですが、フロイトは催眠術が下手だったようで催眠術ではなく会話で治していくことをやっていきました。

科学的な治療

・電気けいれん療法(ETC)
薬物治療など、今日で言う科学的な治療はずっと存在せず、1938年に「電気けいれん療法(ETC)」が生まれました。それ以前のマラリア発熱療法やインスリンショック療法からダメージを与えると精神の方が良くなるとわかっていたのと、てんかんの人が精神病を合併した場合に発作を機に精神病が良くなると知られていたので、人工的にけいれん発作を起こす電圧を当てる、「電気けいれん療法」が登場しました。この治療は今日でも行われています。

・薬の登場
1950年代にもともと結核の薬だったMAO阻害薬がうつにも効くことが発見されます。
1957年にはイミプラミンという抗うつ薬が開発されました。

1950年頃に「RCT」というものが出てきます。これはエビデンス(証拠)を調べる方法で、「本物の薬を飲んだ人と偽薬を飲んだ人をごちゃ混ぜにして、しばらく経った後にどちらの人が良くなっているか」を治療者側にもわからない状態で始め、最後に有意差を調べるというものです。これをもってエビデンスの有無がわかりました。

1970年くらいに精神分析的なものから認知行動療法が生まれます。

1999年に今のSSRI(抗うつ薬)が登場し、2010年にSNRIやNaSSAが発売されました。
そして2019年にS-RIMが発売されます。TMS(磁気治療)も2019年に保険適用になりました。

このように、今僕らが使っている薬はまだこの20年くらいの話なのです。そういうものなのです。

普通に生活しているともっと昔から薬があったような気がするものですが、そういうわけではありません。携帯電話やスマートフォンもずいぶん昔からあったような気がしますが、実際は10年ちょっと前のことです。
今あるものが当たり前のような気もするし、さも昔からあったように思いますが、実際はそうではないんですよね。身近なもので歴史を振り返るとメタ認知も進むと思います。

そんな気持ちを皆さんと共有できたらと思って今回動画にしました。


2021.3.6

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