東西線「早稲田駅」徒歩1分。夜間・土曜も診療。心療内科・精神科。自立支援対応

WEB予約はこちら

再診患者専用

03-6233-9538

予約制:木・日・祝休診

0362339538
初診WEB予約

  

再診患者専用TEL

03-6233-9538

自分の気持ちや不安をうまく言葉にできない人へ。どうして苦手なのか、どうしたら得意になるのか、解説します

00:00 今日のテーマ
00:50 診療ではどういうことが起きているのか
02:38 言語化の利点
06:18 問題を抽出する力
08:41 なぜ問題を抽出する力に問題があるのか

今日は「言語化の困難さ」をテーマに、自分の気持ちをなかなか言葉にできない、自分の考えや混乱、不安が何なのかよくわからないという人に向けて、こういうことが起きているんだよということを話せたらと思います。

前回の動画で、診療ではどのようなことが起きているのかをモデリングしてみました。これを利用して、どうして言語化ができないのか、苦手なのかを語ってみようと思います。

前回の復習:診療ではどういうことが起きているのか

・語り
まず患者さんの『語り』があります。いろいろなことを喋ります。無意識的に喋ることもあれば意識的に伝えることもありますし、混乱の中で伝えていることもあります。身体症状や表情なんかも語りの中に含まれます。

・問題点の抽出(診断)
語ったことから医師は問題点を抽出します(診断)。問題の抽出のために医師は精神医学プラスαの知識、自分の経験、先輩の経験、臨床経験、ロジカル思考などを駆使します。そして治療プランを作成します。

・治療プランの作成
薬物療法、精神療法、社会資源の活用を複合して治療プランを作成します。

・行動(次の診察へ)
治療プランをもとに、行動に移しましょうと伝えます。

医者は薬物治療だけと思われがちですが、カウンセリングもしますし、生活保護を取るのかといった社会制度の情報提供もしています。

言語化の利点

診療における言語化がどこかというと、「問題抽出」になります。

言語化することの利点は、言葉にすることで今の不安や問題を扱いやすくできることです。逆に言うと、言葉にしないと扱えないのです。言葉にすれば理解や納得が進みますし、不安を扱ったり解決に導いたりできますし、不安を抱える力も付きます。こんなことがあるのは嫌だなと思っても、自分できちんと言語化できればそれを抱えることができます。

例えばパワハラを受けていた場合、「何でこんな目に」と思うかもしれませんが、「今、業績が悪くてあのパワハラをしてくる上司はもっと上の上司に怒られているからこちらに怒りが向いているんだ」とか「上司は今夫婦げんかしているからこちらに怒りが向いている」「自分が警戒していなかったから嫉妬をかったんだ」など言語化し、「そういう人は自己愛性パーソナリティ障害なんだ」など理解が進むと不安を抱えやすくなるし、対処もしやすくなります。

言語化の基本的なメリットはこのようなことですが、これは「問題を抽出する力」にすごく似ています。ほぼ同じと言っても良いかもしれません。

人間の脳みそは何のためにあるかというと、僕は「不安を感じてそれを解決するためにある」と思っています。幸せを感じるためにあるとはあまり思っていません。

道端を歩いていて何も問題ないときはボケーっとしていますし、気がついたら歩き終わったりしていますが、道がでこぼこだったり山道だったりすると結構頭を使いながら歩きます。人間の脳みそがこんなに大きいのは問題に対処して生き残るためですから、基本的には不安を感じやすくできていますし、不安を感じて解決するためにあるのです。

問題を抽出する力

問題を抽出する力は何かというと大きく3つあります。

・背景となる知識は十分にあるか?
知識がなければ言葉で特定したり名付けたりもできません。

・経験はある? 共有されている?
知識はそのままでは使うことができません。経験など人間の手垢がついていないと使いこなしにくいものです。自分の経験でなくても親や友人が経験したことを聞いているなど、そのような手垢がついた状態にしていかないといけません。ネットワークを組んで人から情報を得ていることも大事です。

・ロジカル思考のトレーニングを受けているか
数学、国語、論理学、ディスカッション、哲学などのトレーニングを受けていないと物事を考えることが難しかったりします。全体を俯瞰してここが問題の本質だとわかるにはロジカルな思考回路が必要です。

子供の場合は知識や経験も不十分ですし思考のトレーニングも受けていませんので、問題を抽出する力が弱いです。大人が言葉にしてあげないと、不安に怯えて困ってしまうことが多いです。
大人でもこれらが十分にあるのかというと難しいところです。

なぜ問題を抽出する力に問題があるのか

大人の場合になぜ問題を抽出する力に問題があるのか、言語化が難しいのかを考えていくと、精神科の場合は「言語化の障害となるもの」を考えます。

・虐待、トラウマ、不安、抑圧
虐待やトラウマがあると回避してしまいます。または麻痺して止まってしまいます。また、抑圧されて思考の中に盲点ができているとロジカルな思考が難しくなります。

・能力、生物学的不得意
今はこれに寄りすぎている感じがします。ASDだから自分の興味のあることしか入っていかない、ADHDだからロジカル思考ができないなどといった言い方になりがちです。何でもかんでもそう見がちですが、生物学的な問題だけにしてしまっても良いのかというのはよく思います。やはり虐待やトラウマ、不安、抑圧なども考えた方が良いと思います。

・病気の発症(うつ、妄想、依存…)
もっと大事なのは病気の発症です。うつ病があるから考えにくい、思考が止まっている。幻覚妄想が起きているから思考が歪められている。アルコール、ギャンブルなどの依存があることで合理的な判断ができなくなっているといったことがあります。

これらの障害の見極めが重要です。
言語化の障害になることを解決するのと同時に問題を抽出する力もつけていかないと、なかなか不安は解消していきません。鶏が先か、卵が先かといった話ではありますが、この辺りをうまくやっていくのが臨床的です。


2021.3.12

© 2018 早稲田メンタルクリニック All Rights Reserved.