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意外としらない? 感情や衝動を抑えるコツをお伝えします

00:00​ 今日のテーマ
01:05​ ひと息ついて、冷静になる
03:30​ 感情と自分を切り離す
04:46​ 人間の脳
07:21​ 感情に飲みこれそうになったとき

今日は「感情や衝動に飲みこまれない方法」について解説しようと思います。
なかなかできないですよね。冷静に考えたらこうすべきなのに衝動に駆られてしまう、飲んではいけないのにお酒を飲んでしまう、仕事をしなければいけないのにサボってゲームをしてしまうなど、人間は感情や衝動に飲み込まれてしまいます。

こたえ:ひと息ついて、冷静になる

精神科医だからさぞ良い知恵があるだろうと思われるかもしれませんが、ありません。
当たり前ですが、一息ついて冷静になる、一旦間を置くということです。それで自他の状況を客観視します。

「自分はすごく怒っているな、それでついつい言葉が荒くなってしまっている」
「冷静に考えると相手は僕を怒らそうとしている」
「自分を馬鹿にするような発言をしてきたな」
「でもそれは、それより前に相手の プライドを傷つけるようなことを言ってしまったからかもしれない」

といった具合です。
その上で、合理的な行動を取ることが大事です。

「謝っておこう」「仲直りした方が良いな」…ギャップ作戦です。相手が自分のことを嫌な奴だと思っているところに「さっきはすまん、一番信頼しているのは君なんだ」「普段から仕事の仕方を尊敬していたんです。生意気言ってすみません」とか何でも良いのですが。

「相手は部下だし、今月仕事辞めるからほっといても良いか」というのも合理的といえば合理的です。
敵を作るより味方を作った方が良いですからね。言葉はタダです。いつも僕も自分に言い聞かせています。

感情と自分を切り離す

これがなかなかできません。そもそも「感情と自分を切り離す」という発想をみなさん持っているでしょうか。そこが抜けている人が意外といるのではないかと思います。

「この喜びこそ自分」
「愛する気持ちこそ私です。でも好きなんです」←これは共依存の人は良く言いますが、優先すべきは頭の方で感情に負けてはいけません。でもなかなかそうはいきません。

僕ら医師がみなさんと少し違うのは、科学の知識があるので感情と自分は切り離した方が良いと考えやすいところです。

人間の脳

脳を半分に割った図を描いてみました。
脳は大脳皮質、大脳辺縁系、脳幹の3つに分けることができます。脳幹は心臓や肺(呼吸)を司っていて、大脳辺縁系が人間の本能や感情を司っています。大脳皮質は理性に関わる部分を司ります。

同じ哺乳類でもネズミは脳の中で脳幹の占める割合が大きく、大脳皮質が小さくなります。人間は大脳皮質がグググっと進化した生き物なので、理性が強いのです。つまり、重視すべきものは感情ではなく理性なのです。辺縁系に支配されてはいけないなと思った方が良いのです。

もちろん、人間の幸せはお金が増えることより愛する人と一緒にいること、それが人間らしさだし感情としてはそうなのだとか色々言い方はありますが、こと精神科の問題に関しては理性を重視するのが正解です。

感情に飲まれそうになったとき

たとえば眠れなくて不安だというとき、まずは生活リズムを取ることを目指します。そして日誌をつけてPDCAサイクルを回しましょう。それと薬の補助も考えましょう。これだけなんですよね。

健康は大丈夫ですか?と聞かれても、2、3日なら問題ありません。しかしこれだと患者さんへの答えにはなっていなくて、おそらく本題の本質は「眠れなくなった時の不安感をどうしたら良いですか」ということだと思います。

これをどうしたら良いかと言ったら、また話は戻るのですが「眠れない、困った。嫌なことばかりを考えてしまう」となったら一息ついて「寝れないだけだな、これで死ぬわけでもないし、布団の中で目を閉じているだけででも体は休まるからそうしておこう、そのうち寝れるかもしれない、朝になったら起きにくいかもしれないけど起きてリズムをつけよう」というようにします。不安に飲み込まれない、飲み込まれているのだったらそれを自覚するようにします。

アルコール、ギャンブル、買い物依存なども同じです。依存症は衝動性がすごく強いので人間の理性の力では抑えられません。だから自助団体に入りましょうと言ったりします。
確かに自分の意志の力だけではコントロールできないのですが、でも感情と自分を切り離すという気持ちがまずないと人の助けがあってもできません。

「自他の状況を客観性する」とか「合理的な行動をとる」ことに関しては協力、サポートをすることができます。

たとえば「ギャンブルの借金をどうしよう」といったことは、自分だけでも時間を掛ければ合理的な解決方法にたどり着くはずですが、一人でやるのは非常に時間がかかりますし不安になって進めなくなったりします。だから一緒に問題を整理してプランを考える、インターネットで法律の知識を調べるより弁護士さんに相談してしまいましょう、などと協力をします。

それも精神科医療の本質といえば本質だと思っています。特別なことをやっているというよりは、感情と自分を切り離して当たり前のことを淡々とやっていく。切り離しにくい原因が脳の病気のせいかもしれないということであれば、意志の力では難しいので薬を補助的に使っていくようにします。

感情と自分を切り離すことがなかなかできないのは、マインドフルネスや禅の世界観はこれと似ていると思いました。僕らは医学を学ぶ前に日本人であり、禅的な世界観が染み付いています。感情に流されてはいけない、感情は儚いもの、そのような合理的な世界観を美意識として持っていると思います。

それを現代語であらわすなら、大脳辺縁系の問題に過ぎないのだから大脳皮質である我々は冷静に行こうよということです。もちろん大脳皮質ばかりが育ってしまって感情を抑圧し続けるとヒステリーになってしまうという話もあります。とはいえ、基本は理性を重視します。

以上、感情・衝動に飲みこまれない方法を語ってみました。


2021.3.26

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