今日は「ネット上の誹謗中傷」について精神科医目線で考えてみようと思います。
誹謗中傷の外枠を理解することで冷静になれると思いますし、少しでも誹謗中傷で傷つく人を減らしたいと思います。
コンテンツ
誹謗中傷の段階
Lv.1 実名←匿名
Lv.2 実名←匿名?
Lv.3 職場から
Lv.4 友達から
Lv.5 親、兄弟から
僕自身の経験を言うと、親・兄弟から嫌なことをされた経験はありませんが、レベル1~4までは全部あります。職場で冷や飯を食わされたこともありますし、ネット上でも嫌な思いをしたこともあります。それほど酷くはないかもしれないけれど、誹謗中傷を受けた人の気持ちは結構わかります。それについて何日も悩む、眠れなくなる、食事も忘れるなどの経験もありました。
人は嫌な思い出は忘れません。それは人間の脳みそがそういうふうにできているからです。崖がある、ヘビがいるなど危険なことは忘れないようにできています。逆に楽しいこと、嬉しいことは比較的重要度が低いので忘れるようにできています。ですから、100のGoodボタンより1のBadボタンがすごく嫌なのです。
本気で真面目に一生懸命やっていると、すごく内面を出してやっているので、そこに何かを言われると頑張っている分すごく傷つくことがあります。
・上の方が苦しい
誹謗中傷に関して言うと、レベルが上がるほど苦しいです。つまり、距離が近い人から言われるほど苦しいです。
・下のものも上の思い出を連想させる
匿名で「ばか」と言われた時、傷つかないといえば傷つかないのですが、同時に過去に親や友達から言われたことを思い出すこともあります。ですから、レベル1や2だけで起こっているのではないのです。やっている側は「匿名でばかって言っただけじゃん」と思うかもしれませんが、やられた方は過去の記憶まで思い出してしまいます。
・自他の区別がつけにくい→考え直すことが必要
混乱している時はなぜ落ち込んでいるかもわからなくなります。実際に今何が起きているのか、どういうことで傷ついているのかがわからなくなってしまうので、一度頭の中を整理することがすごく大事です。
意地悪をする人は、自分がされて嫌だったことを真似たりしています。僕も昔先輩から意地悪をされたことがありましたが、意地悪をしてくる先輩はだいたいイケてない人でした。多分そのイケてない人は自分がされて嫌だったことを僕にやってくるんだろうな、ということが見えてきます。そうすると彼の嫌だった経験や思い出までこちらに来て、自分の過去の嫌なことまで思い出すわ相手の嫌な思い出まで引っ張ってくるわで、実際起きていること以上の苦しさがあります。
共感性が高い人ほどそのようになってしまうので、一旦冷静になって、「これは引っ張ってきている問題だな」「これは今起きていることではないな」「これは相手の問題だから自分は考えなくていいな」など整理することが重要です。整理するためにこの動画を活用してください。
傷つきやすい人の特徴
・虐待の経験、トラウマがある
・知的能力、発達障害→白黒思考になりやすい
・精神的疲労度(疲れているときは防御力が落ちている)
・社会状況(経済的な問題、プライベートな問題を抱えている)
・精神疾患の有無
傷つける人の特徴
・子供、重大さがわかっていない
自分が何をやっているかがわかっていません。ネット関連の法律も変わっていくので今後は捕まる可能性もありますが、それがわかっていません。
・他責的、他力本願
悪いことがあると相手のせい、自分がうまくいっていないのもあいつらのせい、全てがそうなっている人たちです。
・衝動的、攻撃的(発達障害)
・パーソナリティ障害:自己愛性、境界性、演技性
俗に言う人格障害のB群の人たちです。誹謗中傷するのは人口の1~2%と言われていますが、人格障害も人口の1~2%といると言われているので合致するかなと思います。
自己愛性はナルシスティックで自分が良ければ良い人、境界性は見捨てられ不安があり理想化とこき下ろしをする人、演技性は自分を良く見せようとして演技くさくなる人たちです。
・金儲け、力の誇示
誹謗中傷をすることでお金が儲かる、力を誇示できる場合です。
・自暴自棄
別に捕まったって構わないなど自暴自棄の状態です。
・正義感?
自分がやらなければいけないのだという幼い正義感です。全体が見えておらず、狭い視野の中で文句を言う人たちです。
・嫉妬
ネットの世界
・法律がない
・物理的距離
・悪ふざけで目立ちたい
ネットの世界はまだ法律が整備されておらず、物理的距離を取ることもできないので妙に近かったりします。
悪ふざけで目立ちたい人も一定数いますし、目立てばOKという世界でもあります。目立つことがお金にもなりますし、力の誇示にもなります。
多くの人はなぜ誹謗中傷があるのかについて個々の原因をそこまで考えません。面倒くさいから近寄らないでおこうとなります。結局、悪口を言ったり悪ふざけで目立っている人たちだけが得するような形になっているのがネットの世界です。
大手のネット掲示板なんかも、ユーザーが悪口を言ったりしている方が盛り上がるのでそれを放置しています。法律が入ると「表現の自由が」となります。確かにそういう面もありますが、ルールがないと困ります。ルールはあるけれど縛りすぎないというのが大事です。
そもそも悪口を言っているのは普通の人ではないのです。かつての友人関係や職場での嫌な記憶とネットで起きていることはまた違います。変わった人たちがやっているということを理解することが大事です。
うちのクリニックの話
うちのクリニックもクチコミがいっぱい入っていますが、もうねえ、滅茶苦茶ですよ、本当に。時々本当に嫌な思いをします。
開業当初も何人かドクターショッピングをしてきた人たちがいて、何が気に入らなかったのか★1だけを付けていった人が何人かいます。それは僕はすごく覚えています。なので知り合いの先生が開業するときはその話をいつもしています。★5がつくと★1をつける人もいます。
完璧な診療をしているわけではないという自身の反省もあって最初はクチコミに返信をしていましたが、途中からぐちゃぐちゃになりかえって炎上するようになってしまったのでそれもやめました。
その後、自己防衛としてTwitterを始めたり、HPで情報提供をしたりYouTubeを始めたりしました。YouTubeやHPは僕が趣味でやっていると思っているかもしれませんが、自己防衛でもあるのです。
うちのクリニックは学生も多く、「子供、重大さがわかっていない」「他責的、他力本願」に当てはまる人が多いです。まだ社会に出ていない、あるいは出たばかりの人で社会=学校だと思っていて「治してくれない」となります。
同業のクリニックのクチコミを見ていると、この地域にはこういう患者さんが多いんだな、このクリニックはこういう患者さんが多いんだななど、ドクターの腕というより雰囲気がわかります。もちろん僕も含め医師の実力不足もあると思いますが、その辺りは難しい兼ね合いです。
とにかく、この動画を最後まで見てくれている人は誹謗中傷で悩んでいる人だと思います。実際に診療の中でもそのような話は結構あり、僕の経験や匿名化して他の患者さんの経験談を話すこともあります。そうすると安心される方も多くいらっしゃいます。
おそらく今回のような視点で考えたことがない人が多いと思いますので、連想の話、傷つきやすい人、悪口を言う人の特徴を解説してみました。
前向きになる考え方
2021.4.18