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発達障害グレーゾーンについて解説。過剰診断、過小診断!?

00:00 今日のテーマ
01:22 困り事は知的能力によるのか? うつ? ストレス? トラウマ?
03:25 薬物治療の効果と副作用はどちらが大きいか?
04:37 診断がつくことのメリット・デメリット
05:19 医師の臨床現場によって、ネット情報は違う
07:24 医師は一人でも多くの人を救いたい
08:45 発達障害ビジネスで得をしている人、損をしている人

今日は「発達障害のグレーゾーン。過剰診断なのか、過小診断なのか」について、僕なりの見解を述べようと思います。

よく「グレーゾーン」と言いますが、それは過剰に診断しているのかそれとも過小なのか、患者さんはよく不安になります。ですのでそれがどういうことなのかを語ろうと思います。

患者さんは「どうして自分はこんなに困っているのだろう」「どうしてこんなにミスが多いのだろう」「どうして自分はコミュニケーションが下手なのだろう」と困っています。でもそれが発達障害によるものなのかどうかは確かにわかりません。

困っているのが甘えなのかどうかというのが最初の議題になるかもしれませんが、そもそも精神医学では「甘え」は想定しません。困っているのであれば何か原因があるはずだと考えます。

Q.困り事は知的能力によるのか? うつ? ストレス? トラウマ?

困っているのは知的能力の凹凸(発達障害)によるのか、気分障害であるうつを発症しているのか、統合失調症を発症しているのか、ストレスやトラブルによってパフォーマンスが一時的に下がっているだけなのか、トラウマがありパフォーマンスが下がっているのかを考えます。それで本人の知的能力で困っているのであれば「発達障害」という診断になります。

過剰診断か過小診断のどちらかで言うと、過小診断であることが多いです。

例えば:
気分の波が激しいことに困っている人が「躁うつ病」と診断された。でも躁うつ病のように7日間などまとまった期間テンションが高いかというとそういうわけではない。
→それは躁鬱病ではなくADHDなのではないか。

寡黙で自閉的、一人でぶつぶつ言っている。シゾイドパーソナリティ障害あるいは統合失調症の前駆症状ではないかと診断される。
→そうではなくASDでは。

日本全体で言うと、どちらかというとこのような過小診断の方が多いのではないかと僕は考えています。

Q.薬物治療の効果と副作用はどちらが大きいか?

この人は薬物治療まですべきなのか、その結果どれくらいの伸びしろがあるのか、それよりも副作用が多いのではないかということは考えます。

Q.診断がつくことのメリット・デメリット

発達障害という診断がつくことで本人がサボるのではないか、疾病利得を得られるのではないかと考える人もいます。親御さんも含めて。ですが、そのようなことはあまり起きません。
とはいえデメリットも確かにあり、差別や偏見の対象になるのではないかという危惧もあります。

ASDやADHDの人で病名にこだわりすぎたり、病名を得ることで変にアクティブになることもあります。病名を利用して変に行動力が発揮されてしまい、ネットで情報発信をしすぎてボロが出るということもあります。本人の性格と合わせながら診断の扱い方は考えないといけないなと思います。

A.医師の臨床現場によって、ネット情報は違う

もう1つ知っておいていただきたいのは、所属している医師の臨床現場がどのような現場で働いているかによって文章化されたものが結構違ったりします。

ネットの情報はそのドクターが言っていることもあればインタビューを受けていることもあるのですが、そのドクターの臨床現場に基づいた発達障害の話をするのでそれぞれ違うのです。

例えば、僕は早稲田大学の学生の発達障害を診たりしているのですが、でもある人にとっては早稲田のような一流大学に受かるなんて、そういう人に発達障害はいないだろう、知的に問題がなければアスペルガーとして入るといえば入るだろうけど…とそういう言い方をする人もいます。ですが、高いIQで隠れているけれど実際は課題を出せない、レポートを出せない、授業に出られない、就活でうまくいかないということは結構あります。

重い現場をみているドクターもいれば、僕みたいに軽い現場をみているドクターもいるので、文章化されたものになるとすごく意見が違うように見えることがあります。臨床家同士が顔を合わせて「このケースはこうだよね」と話していれば意見が食い違うことはほとんどないのですが、記事だけを見ると見ている現場が違うので意見が違うように見えることは結構あります。

A.医師は一人でも多くの人を救いたい

僕もといえば僕もですが、医師は一人でも多くの人を救いたい、困っていることに対して僕らの精神医学の知識を提供することで助けたいという思いがあります。それは確かに言ってしまえば医療資源を使いすぎているのではないかということと相反する感じです。

臨床家としては、その人が平均寿命は超えているけれどその人に体力的な問題がなく、認知機能もしっかりしているならば、90歳の方にガン手術をするという決断はそれほど変なことではありません。少しでも命を助けたいというか。そこら辺は難しい問題という感じはします。じゃあ、困っているなら発達障害というくくりに入れてなんでもかんでもやっても良いのかなど。

発達障害ビジネスで得をしている人、損をしている人

もう1つ別の話で、確かに発達障害の闇はあります。
おそらく発達障害ビジネスで得をしている人、損をしている人がいます。結局、行政や社会システムがまだまだ追いついていないのだと思います。

今日も他の人と喋っていましたが、学校教育は発達障害の子供たちをきちんとフォローできる体制にはなっていません。ですので仕事を増やすなよという意見にもなるのかもしれません。

見逃されてきた弱者の声、診断されないためにいじめられた、学校についていけなくなってドロップアウトしてしまったという人たちはたくさんいます。そういう意味では過小診断でもあるし、体制ができていないのではないかなと思います。

僕の中での発達障害のグレーゾーンというのは過小診断で、誤診も多いのではないかと思います。もちろんあなたの問題は発達障害ではなく職場のトラブルから来ているから過剰診断なのではないかとか、トラウマではないかとか言うこともありますが。


2021.4.19

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