今日は「うつになった社員が知るべき会社の本質」というテーマで解説してみようと思います。普通の社員の立場では経営者がどういうことを考えているのか、会社とはどういうものなのか、会社の本質とは何なのかなどあまり考えないと思います。考えたとしても真摯に考えることはないのではないかと思います。
ですが、ストレスがあったりパワハラや休職となった時に「あれ?会社って何だろう?」「仕事って何だろう?」ということを初めて考えると思います。危機や問題が起こらないと人は何かを考えることをしません。それは僕もそうです。僕の場合は自分で経営をしていますし、患者さんとそのような話もするのでなんとなくわかっているという感じです。
今回は重要なポイント5つを喋ってみます。
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走りながら考える
経営者は走りながら考えた方が良いというのはよく言われます。これはどういう意味かというと、走らないで考える人がいるとか他との比較の中で考えなければいけない言葉です。
僕も「経営者は実行」という書籍を読みましたが、とにかく行動しない人が多いし考えない人が多いということです。
経営者の中では:
・走りながら考えない経営者→多い
考えなくても雰囲気でやれるので優秀といえば優秀ですが。
・走らず、考える経営者→サラリーマン社長
これは本当はダメなのです。サラリーマン社長に多いタイプで、走っているつもりで走っていません。このパターンだとイノベーションに負けてしまいます。
仕組みが出来上がっているからこそ走れないということもあるかもしれませんが、走らず考える経営者はたくさんいます。
・走らない、考えない経営者→たたむことを考えている
走らないし考えない経営者もいます。「うちの社長は何も考えないし、何にも行動しない」と言われる社長もいるのですが、これは無能ではありません。結構優秀でたたむことを考えていたりします。企業の寿命は30年と言われているのでだんだんフェードアウトすることを考えています。だからもう走らせるつもりも考えるつもりもありません。
これらのパターンの中では「走りながら考える」のが一番良いとされています。
これの本質は「問題がなくなるとは思っていない」ということです。社員の立場では「あの問題がなくなればいいな」と思いながら働きますが、社長は問題がなくなることはないと思っています。だから一人のうつの人が出ても、心を痛めているとは思いますがそれほど気にしていないように見えることはあると思います。問題がなくなるとは思っていないためです。
人は財産
人は財産というのもよく言います。最初は資金で悩みますが、あとはひたすら人事関係で悩み続けます。銀行からお金を借りられるかどうか、商品が売れるかどうかは仕事の本質に見えて本質ではありません。人事が本質です。
社長というのは会社には常に人事のトラブルがあると思っているし、それが大きくなりすぎなければ良いと思っています。だからパワハラなどの問題がある社員がいたとしても、小さければそれほど問題視しません。会社を揺るがすほど大きくならないと会社は動いてくれません。そういうものです。
仲間→契約
これからの企業は終身雇用からジョブ型雇用に変わっていくと言ったりしますが、半分本当で半分嘘です。
中小企業は基本的には侠(きょう)の世界、仲間の世界です。大企業になってくると契約関係なり、文の世界、ドライになってきます。この本質はあまり変わりません。中国の歴史なんかもそうで、小さい組織では仲間の連携が重要ですが、大きくなってくると契約の形が変わってきます。
ベンチャーは三国志の劉備と曹操みたいなもので、曹操はエリートなのでドライで最初から契約関係で成立していますが、劉備はたたき上げなので侠の世界の人です。張飛や関羽とは義理兄弟の契りを結びますが、ある程度蜀も大きくなって後から入ってきた人は契約関係になります。とはいえ中核にあるのは侠です。それは人類がずっとそうなのです。
これからIT化、AI化が進んで仕事のやり方が変わっても人間の本質は変わらないので、中小企業である限り、社長のお気に入りの群に入らないと出世はできないし、侠の中に入っていかないとうまくいきません。もし中小企業で侠の中に入らなければ、やはり外側の人間ということなので、契約が成り立っていれば良いやと思っているかもしれませんが、いざというときに切られてしまったりします。嫌なことですがこれが人間の本質です。大きい企業は企業で侠の世界というか、メンバーシップ型の要素もありますが。
やらないことを決める(差別化)
これはリスクを取りに行くということです。会社は他の企業との競争なのでリスクを取って相手のパイを奪いに行くと いうことです。成長産業ならば奪い合う必要もないくらい潤沢にあるじゃないかと言うかもしれませんが、他の会社はリスクを取っているので相対的に弱かったりします。
イメージとしては競馬などの賭け事に似ています。「ここに賭ける」ということです。全部に賭けると負けてしまいます。負けないにしても利益が少ないです。これだと思ったところにリソース(エネルギー、お金、時間、人)を集中させるのが会社です。
社長はある意味リスクを取りに行っているのです。社員の立場だとリスクは自分の時間や健康でありそれを投資しているのですが、そこにプラス借金をしてリスクを取りに行っているのでやはり考え方が違います。
仕事=面倒で誰もやらないこと
仕事とはそもそも面倒で誰もやらないことです。面倒で誰もやらないことを安いお金で動くから利益が出ているわけです。「せどり」のように安く買って高く売るというようなものもありますが、本質的にはそのような仕事は続きません。本質的には面倒で誰もやらないことが仕事です。
江戸時代には「水売り」という仕事がありました。自分で汲みに行けば飲めるのですが、それが面倒なので安い駄賃で汲んできてもらった方が良いということです。仕事の本質はそこだと思っていて、面倒で誰もやらないからそこに利益が生まれます。
時代の変化や、他の人は知らないけれど自分は知っている、他の人はやりたくないけど自分はやる、などの「差分」で利益が出ます。庶民であるほど、特殊な技能がないほど人がやらない面倒くさいことをやることで仕事は生まれます。勉強すれば誰でもできることはたくさんありますが、その勉強が面倒ということもあります。
仕事が楽しくない、面倒くさい、やりたくないというのは当たり前といえば当たり前で、仕事の本質なのです。
ということで、今回はよく診察室で話すような内容を動画にしてみました。
結構耳が痛い話だとは思いますが、シビアで現実的な見方も大事だと思います。これが受け入れられると「思ったより悪くないな」とか「まあやっていけるな」と思えるようになるとも思います。
参考書籍:
ラリー・ボシディ著(日本経済新聞出版)
『経営は「実行」―明日から結果を出すための鉄則』
https://www.amazon.co.jp/dp/4532310377