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発達障害の国語力・メカニズムと対処法

00:00 今日のテーマ
01:41 発達障害の患者さんの国語力
08:56 メカニズム1:共感性、自明性の欠如
10:20 メカニズム2:中枢性結合の弱さ
12:00 メカニズム3:自動的な行動
15:06 どうしたら良いのか?

今日は「発達障害の患者さんの国語力」というテーマで動画を撮ります。
臨床で発達障害の患者さんと喋っているときに、なかなか会話がうまくいかないというか、うまくいっているように見えてなかなか相手が理解してくれない感じがあります。これはどういうメカニズムなのかということを解説しようと思います。

これに関しては心理士の方から相談を受けたのですが、うまくその場で言えなかったので動画にしてみました。参考にしたのは広沢正孝氏の「成人の高機能広汎性発達障害とアスペルガー症候群」という本です。

発達障害の国語力

発達障害には「自閉スペクトラム症 ASD」「注意欠陥多動性障害 ADHD」「学習性限局性障害 LD」の3つがあります。昔は自閉スペクトラム症は「高機能広汎性発達障害」や「アスペルガー症候群」と呼ばれていました。

上記の3つは別々の病気というよりは結構絡み合っています。国語力というとLDやASDの人が持っている要素と思われそうですが、ADHDと呼ばれる人にもASDやLDの要素があるので国語力はよく問題になります。

患者さんがよく言うのは:
・テストの成績はよかった。本は好き
・知識はある(知能検査で言語能力は高かったりする)
・空気は読めない(人との交流が下手)
・説明が下手

このようなことは国語力の問題なんだよなと臨床的には思われたりします。言葉はたくさん知っているけれど、使い方が貧困な感じがあります。会話をしていても薄っぺらくて奥行きがない感じを受ける

・共通する言語が乏しい(交流が乏しい)
・比喩が通じない
・経験の応用がきかない

親子の間やカウンセリングの場ではスムーズに会話ができるようになるが、新しく会う人や職場の人には応用がうまくいかない。

僕の場合でいうと、自衛隊の時の寮生活の経験があるので、その経験を思い出しながら患者さんのパワハラの話や会社の話を理解しようとしています。自衛隊は特殊な組織なので普通の会社と違うと思われるかもしれませんが、やはり組織らしさはあるのでサラリーマンをしたことはないけれど何となく想像はつきます。

また、YouTubeをやっているので、ITがどんなものか、Googleがどのようなことを考えているか、エンジニアの人がどういう仕事をしているのかをできないけれど想像しようとしています。開業をしているのでビジネスのことやマーケディグのことも何となくわかりますし、僕自身毎日お酒を飲んでいたのを去年の6月5日からお酒をやめているので依存症の人の気持ちが何となくわかります。アルコール依存の人の気持ちがわかるから、ギャンブルや過食嘔吐など他の依存症の人の気持ちも想像していって共感していって理解しようとしています。

このような応用が発達障害の人はできないし苦手なのです。「違うでしょ」と言ったりしますが、確かに違うのですがここら辺のことを応用してあそことあそこを組み合わせればあなたの気持ちがわかる、ということがなかなか通じません。
親子関係や診察室で起きたことを他の場面で生かすことがなかなかできません。

基本的に精神分析やカウンセリングでは、日常生活で起きている問題を診察室で再現することが多いですし、診察室で起きていることを解消すれば日常生活でも問題を解消できるという理論、治療メカニズム、根拠にしています。だからカウンセリングでは多少相性が悪くてもうまくやっていかなければいけないといったことがあります。発達障害の人だと診察室で起こったことの応用がうまくいかなかったりします。

比喩もそのまま使いにくく、例えば「あなたは柔らかなものに包まれたいんですね」と言ったとしてもよくわからない。逆に専門用語で伝えた方が良いこともあります。

このような具合なので、カウンセラーやスクールカウンセラーなど相談業務をしている人は困ったりすることもありますし、逆に治療者は会話が通じているような気がしてその困りごとに気付いておらず、親から見ると「全然わかっていないのにな…」ということが起こったりします。

メカニズム1:共感性、自明性の欠如

発達障害における3つの特徴の1つ目は「共感性、自明性の欠如」です。
僕らは何も努力せずにアップデートできています。周りの空気から無意識に情報を仕入れて勝手にアップデートしていることはたくさんあります。

自分の子供を見ていても思うのですが、下の子の方が上の子が怒られているのを見ているから要領よくやります。同じことが社会でもあって、共感したり当たり前のことを空気のように吸い込んで身につけています。だから困ったりしないのです。

ですが、発達障害の人は共感性が欠如していたり弱かったりするので、一つ一つルールとして説明されないと理解できないところがあります。「何となくわかるでしょ」というのがわかりません。

メカニズム2:中枢性結合の弱さ

2つ目は「中枢性結合の弱さ」です。
色々な出来事を全部バラバラに覚えるのではなく一個にまとめて記憶していたりします。(高次の意味にまとめあげる)
発達障害の人はいろいろなものを見てから1つの抽象的なものにしていく力が弱かったりします。発達障害の人に限らず精神科の患者さんはそういう人が多かったりしますが。

まったく同じではないけれど、似たようなことが起きた時に応用がききにくいです。

普通の人であれば抽象的なものを 1つにまとめることで、余分なことを忘れることができる、むしろ忘れてしまうのですが、発達障害の人は余分なことまで鮮明に覚えていることが多いです。写真を見るように覚えています。テストは結構できるのですが応用が苦手だったりします。

メカニズム3:自動的な行動

3つ目は「自動的な行動」です。
いちいち考えて動いているとやはりキツいわけです。大衆は共感性や自明性でふんわり動いているのですが、発達障害の人は「自動的な行動」と言われています。皆が動いている通りに動くのではなく、自分の中でプログラムされた一定のリズムで動きます。

自動的に動いているからいざ自分の意見を言えと言われると困ってしまいます。自分でも何で動いているかわからなかったりします。

記憶力は良かったりするのでテストの成績は良く大学にはスッと入ってしまいますが、レポートだけがなかなかできなくて進級で困ることが多いです。これは「経験する自己」が欠如している、あるいは弱っているということです。

自分が感じていることがよくわからない、不快感に対して鈍感、今の気持ちに対して鈍感だったりします。自分が何をしたいかにも鈍感だったりして、主体がない感じはあります。主体がないのだけどこだわりは強いので自分がある人だと思われたりするのですが、そうではありません。

また戻りますが、共通する言葉が乏しいのです。共通するもの、つまり共感性とかがないので貧しい感じがあります。言葉をたくさん覚えていても、言葉1つ1つの膨らみがなかったりします。それは高次の意味にまとめあげるといったことがないためです。俳句のように単語の連携によって複雑な意味を持たせることがありません。

比喩が苦手ですし、経験を応用することが苦手です。Aという場面での失敗をBの場面でも繰り返してしまうという感じです。

どうしたら良いのか?

それでは実際に治療者、家族、本人はどうしたら良いのかということです。

共感性や自明性の欠如といってもまったくのゼロではありません。ゼロではなく弱いのでサポートしてあげれば良いのです。1つ1つ伴走してあげます。

中枢性結合の弱さがあるのであればそれも手伝ってあげます。Aの場面のミスとBの場面のミスは違うように見えるけれど同じなんだよ、といったことを1つ1つ伝えていきます。

自動的な行動については、自分の意見を言うのは苦手なので、待ってあげて自分の意見が言える環境を作ってあげます。自分の意見が年不相応なことが多く、子供みたいなことを言うなということもあるのですが、それをきちっとキャッチして、そこを褒めることです。

「自分の意見が言えた」というそのか細い火種が消えないように保護してあげます。知識はあっていろいろ大人っぽいことも言うのだけど、彼の彼女の言葉はすごく幼い、だけどそれが本音だったりするので、その火種を丁寧に守ります。「これはあなたの意見だね」ということをきちんとフィードバックすると「経験する自己」に気づくことができます。

とても大変ですが、このような作業です。小さいことを1つ1つ丁寧にやる、当たり前のことを当たり前のようにあやっていくことが良いと思います。

よく発達障害の人は真面目だったり勉強するとか言いますし、困っていて自分の言葉が乏しい場合強力な鎧を求めに行きます。僕が高校生の時に自衛隊に憧れて自衛隊に行くとか、精神科医の世界に入るとか、それは強力な鎧を求めにいくような形です。ですが、大人になっていけば鎧だけ強くても良くないなと思うわけです。当たり前ですが。外殻だけではなく中身を見るようになります。

ですが、発達障害の人だとなかなか中身を見る力が育っておらず、うまくいかないとまた外側だけ求めていってしまいます。転職をするとか、ナントカ療法を学びに行くとか、ドクターショッピングしてしまうとか、その結果騙されてしまったりします。

とにかく、初心に戻って言葉を1つ1つ守っていく、言葉だけでなく就労支援やデイケアなどで体を使いながら覚えていくことが重要だろうと思います。

参考:
広沢正孝 著
『成人の高機能広汎性発達障害とアスペルガー症候群―社会に生きる彼らの精神行動特性』
(医学書院 2010年)


2021.5.10

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