今日は「困っている時ほど困っていないように見える人、大げさな人」について解説します。
Empathizing-Systemizingモデル(ESモデル)に基づいた、発達障害的な理解を共有できたらと思います。
コンテンツ
Empathizing-Systemizingとは
Empathizing-SystemizingはBaron Cohen氏が2006年に提唱した1つのモデルです。
ESモデルは人間の脳には2つの領域があると考えます。
Empathizing(E):社会的、感情的、女性的
Systemizing(S):機械的、物理学的、男性的
相手のことを理解するときに、理屈で理解していく部分(S)と気持ちで理解していく部分(E)の両方があります。気持ちだけで理解していくと行き詰まるし、かといって理屈だけで理解していっても人間は合理的ではないので行き詰まります。ですからこの両輪を駆使しながら相手のことを理解していきます。
発達障害の人の場合
発達障害の人は、おおむねEが小さくてSが大きく働くことが多いです。
実際のところは:
・Eが小さく、演技やたゆまぬ努力で補う
・Sは人並み以下であることも多い(視野が狭くなりがち)
Eが小さいというのは自明の感情理解力の低下、つまり相手のことを表情や声色など非言語的なもので読み取る力が弱いということで、それをSを用いて理解しようとするのですがかえってややこしくなります。
本当に困っているとき
・困っているように見えない人
ストレスを感じて本当に困っているときは、元々あったEの部分が小さくなります。
演技で補っていた部分がなくなって、元々あった部分さえ小さくなるようなイメージです。表情がより出なくなるので「困っているように見えない」ということが起きるのかなと思います。
理想はEとSの両方を使うことです。
・大げさに見える人
実体を伴っているEの部分が小さくなっていき、膨張していくようなイメージです(ホワイトボードの図をご参照ください)。とても演技臭く、嘘くさい感じになります。
風船が大きく膨らむほど厚さが薄くなるように、自他の境界も緩い感じがします。その結果、すごく衝動的だったり感情的だったり、境界性人格障害に近いイメージの行動をとることもあります。振り回したり泣いたり叫んだり、切実なように見えてどこか嘘くさい感じがあります。
治療的にどうすればよいか
まずはEの部分を育てなければいけません。Eの部分は弱くて成長の余地がないようなことを言われたりしますが、そんなことはありません。自分の気持ちを大切にする訓練をしていけば、少しずつですが成長していきます。
次にSも鍛えていきます。自他や社会の理解を進めます。
動画を見るのはSの訓練にもなると思います。
もともとEが弱い分、Sを使ってなんとか社会を理解していこうとしていたのですが、その努力をもっと手助けしてもらいながらやっていくという感じです。
また、相手にも「このような人」だと理解してもらうことが必要です。
困っていれば困っているほど、感情的な交流が少なくなっていって困っているように見えなかったり、大げさに見えたりする人なのだ、こういうタイプの人なのだということを相手に 理解してもらうことが大事です。
相手、いわゆる定型発達の人たちは、困っている時ほどSの部分が小さくなりEの部分が強まっていくのですが、その逆になっています。そのことを理解してもらうことが大事です。
自分でできる努力は自分自身の訓練ですが、将来的には社会的な理解も進めばと思います。
今回は、ESモデルを使って「困っている時ほど困っていないように見える人」を解説しました。