今日は「並列的にスマホゲームをする生活」というテーマでお話をします。
このタイトルで「ギクッ」とする人はいませんか? あるいは「うちの子どもがそうかも…」と思う人もいませんか?
まったく関係ない人にはわからないかもしれませんが、刺さる人には刺さるタイトルではないでしょうか。
コンテンツ
並列的にスマホゲームをするとは
スマホに9つとかもっと多くのゲームをダウンロードしていて、朝から全部をやる患者さんがいます。大学生、引きこもりの人、会社員の方など色々です。
・無料の範囲でやる
・1つずつログインし、ログインボーナスをGet
・それなりに忙しく、充実している
無料の範囲で1つずつログインボーナスをゲットしながらストレスの溜まらない範囲でやり、また次のゲームに移ります。彼らはそれなりに忙しく、ゲームも楽しんでいます。なんとなく充実しています。
「問題視しなくても別にいいじゃない」と言う人も自他ともに多くいると思います。
彼らは無課金でやっているので課金勢にやられてしまいますが、「自分はお金を掛けてるわけじゃないからいいよね」とかわすことができます。
現実とは違い、負けても言い訳がしやすいので、流せるのです。
そして次のゲームに移ります。
こういう人は患者さんにたくさんいます。
レポートを出せないという患者さんに「何をしているの?」と聞くと、「今コロナで友達とも遊べないし、ずっとスマホゲームをやっている」と言います。「それで1年間無駄にしてしまいました」という人もいます。
無課金でゲームをするというのは、課金勢にやられるための「クリ坊役」をやっているということです。スマホゲームは課金している人がマリオで、無課金の人はクリ坊なのです。
ですが、クリ坊役をやっていてもそれほど嫌ではない。なんとなく楽しめるように設計されています。
これを言うと「無課金の人に対して優しくしないと、無課金勢が離れて課金勢も離れていく。だから無課金でも楽しめるようになっているんです」と皆さん仰います。
面白いところだけちょこちょこやるので依存でもないと言います。
診断
・ゲーム依存?
とは言いつつ、彼らは病院に来ているわけで。
うつっぽくなっています。
患者さんには「これはゲーム依存ですか?」と聞かれますが、ゲーム依存ではありません。
ゲーム依存というのはゲームのことがずっと頭から離れず、ずっとやりたくて仕方がないという感じですが、彼らはそうでもないのです。
飽きたら次、飽きたら次、という感じで1つに依存してはいません。
依存というよりはスマホの中毒性に操作されているという感じです。
しかし、いざスマホを取り上げても、特に腹を立てたりもせず、漫画を読んだり、本をパラパラとめくったり、並列的に物事を消費していきます。
そういう点が依存的ではないです。
診断としては、
・ASD受動型
・ADHD
の人に多いです。
ゲームをしている時だけ「安全な感覚」をおぼえるという人も結構います。
おじさんたちの「釣り」や「キャンプの焚き火」のようなものです。延々とスマホゲームを1個ずつこなす、その規則性に満足感を覚えるみたいです。
・能力、不適応
現実社会に対しての自分自身の弱さによって、スマホゲームの世界に入り込んでしまう人もいます。
・トラウマ、虐待、貧困
トラウマ、虐待、貧困の問題で、スマホゲーム以外に娯楽がないというパターンもあります。
ゲームを楽しんでいるから良い?
「ゲームを楽しんでいるからいいでしょ?」というかもしれませんが、普通のゲームのやり方とはちょっと違います。並列的にゲームをしている人は「消費者」のような感じです。ウィンドウショッピングを延々とし続けるようなもので、どうも深まりません。
課金勢であっても「消費者」で、「競技者」や「研究者」とは違います。ただひたすら時間やお金を消費しています。
なので無課金勢と相性が妙に良いのです。
現実でも起きている
ゲーム以外の現実でも同じことが起きていることがあります。
・転職を繰り返す
・話題(会話が深まらない、興味が移っていく、深入りを避ける)
・向上心?(向上心のなさは不適応の結果、安全な感覚に浸りたい?)
・興味(集中し続けられない発達障害の特性?)
並列的にゲームをやる患者さんは臨床的肌感覚として、全体の2~3%ですが、結構いると思いませんか?
「ゲームを1つに絞れ」とかそういう説教じみたことを言いたいのではありません。「この人は並列的にスマホゲームをしてしまう人で、今とても傷ついているのか、発達障害的な問題でそこでしか安心感を得られないのだろうか」と臨床的に考える、そういう事実を知ってもらいたかったです。
スマホゲームだと課金をしないと1つのものをやり続けられないのでどんどん移っていく、移っていって深まらないという形に誘導されている。
もともとそういう人なのか、あるいはそうなってしまったのか? そういう議論を深めていくのも面白いと思います。
今回は、「並列的にスマホゲームをする人たちがいる」ということで、それがどういう人たちでどのような特徴があるのか、そのメカニズム、気をつける点を雑談的にお話ししました。
発達障害
2021.6.1