今日は「人に会いたくない時のアドバイス例」というテーマでお話しします。
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本当に人に会いたくない
患者さんからよく「今、人に会いたくないんですよね」とか「予約は先週だったんですけど、人に会いたくなくて来れませんでした」と言われます。
(予約の変更は珍しくないのでもちろん怒ったりしませんよ)
「今、調子悪い時期みたいですね」と言うと、患者さんはいろいろなことを話します。
そこでよくあるのが、
「昔からそうで…」
「他人を好きになれなくて…」
「ひとりでいるのが楽で…」
といったことです。
このようなことを言うと他の人から否定される、母親からは「そんなこと言うもんじゃない」と怒られるので、自分の気持ちをいつも隠していた。「でも本当は、人といるのが嫌で、一人が楽なんです」と言います。
これは「本当にそう」なんです。
人からは「他人と一緒にいるのが嫌とかじゃなくて、今疲れているんじゃない?」とか「一人は寂しいよ?」とか言われるのですが、本当にそうなんです。
この人たちというのは、「他人から与えられるよりも、奪われてきた経験の方が多い」のです。
だから人といるよりも一人でいる方が楽です。好きで独身やってます、という人もたくさんいます。
でもなかなか共感、理解されにくいです。
マイノリティ
精神科の患者さんは人口の3%で400万人くらいです。
他科の病気ならば歳を取るにつれ増えることもありますが、精神科の場合そのようなことはありません。
ですから患者さんたちは常にマイノリティで、周りに同じような立場の人がなかなかいないため、孤独であり共感されることがありません。周りの常識に左右されず、自分の本心でようやく語った言葉が速攻で否定されてしまいます。
これは否定してはいけないことです。
在宅勤務はできますか?
業種にもよりますが、在宅勤務ができる職場も増えています。
会社によっては、診断書があれば週に2、3回くらいなら可能というところもあります。
人に会いたくないくらい調子が悪い時というのは、休職までに秒読みということも多いです。ですが、休職になると復帰まで大変だったりするので、在宅勤務で持ち堪えられないかは臨床上考慮することかと思います。
患者さんに「在宅勤務はできますか?」と聞いた時は、主治医はそろそろ休職かなと検討しているということかもしれません。
散々、心配、アドバイス、偽善を聞かされてきた
患者さんは散々心配されたり、アドバイスを受けたり、偽善的な押し付けを聞かされてきました。
僕らは診察室に来る前の状況をしっかりイメージし、それを踏まえて共感します。
他人嫌いを100%治すことはできないので、自分にできることを提示します。
年単位という長いスパンで、対人関係の距離感、他人は嫌かもしれないけれどそこそこならば付き合える、というところを目指していくのが臨床上の落としどころかと思います。
このようなテーマは精神科医としては当たり前のことですが、あまり聞いたことがないと思いますので動画にしてみました。
前向きになる考え方
2021.7.6