今日は「パラフィリア(性嗜好障害)」について解説します。
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どこからが障害なのか
性的な問題については人の好みもいろいろあるので、どこからが病気なのですかと良く聞かれます。これに関しては正常と異常を見分けるのは難しく、ディスカッションが続いています。
1つの説ではありますが、
「行動上もしくは心理的な症候群」
があり、かつ
「それが原因で苦痛や能力の低下が見られる」
場合に疾患だと言われています。
「症候群」というのは「まとまり」です。「生物学的なまとまりがある」ということです。
「この人の個性でしょ」というよりは、「こういうパターンの人っているよね」というものがあります。
かつ、それが原因で社会的な能力の低下が起きている場合に障害という言い方をしたりします。
・同性愛の場合
異性愛を好む人が多い中、同性愛の方は一定数の割合でいます。
それが原因で苦痛や能力低下を起こしているかというと、苦痛はあるかもしれませんが、能力低下はありません。また、苦痛を起こしているのは本人の問題ではなく社会の問題だったりするので、同性愛は精神障害ではないとされています。以前は障害の中に入っていたのですが、今は抜けています。
・やりたくないのにやってしまう
今回お話しするフェティシズムや露出症などもまとまりはありますが、「やりたくないのにやってしまう」というパターンが多いです。苦痛や能力低下(仕事に行けなくなる、遅刻が増えるなど)もあるので、病気として認められています。
パラフィリア
パラフィリアには、フェティシズム、服装倒錯症、露出症、窃視症、窃触症、サド、マゾヒズム、小児性愛などがあります。
・フェティシズム:女性は好きになれないけれど、ハイヒールだけは好きでそれに性的興奮を覚えるなど
・服装倒錯症:女装をすることに快感を覚える
・露出症:公共の場で露出しそれに驚かれることに性的快感を覚える。またはただ露出しているだけで気持ちが良い
・窃視症:のぞき
・窃触症:痴漢
・サド:攻撃的行為に性的な快感を覚える
・マゾヒズム:攻撃を受けることに性的な快感を覚える
・小児性愛:性的に成熟していない人に対して興奮を覚える
これらは性的な快感を伴うので、なかなかやめにくいですし諦めにくいです。
依存症の治療に似ています。
治療
頭ではわかっているけれどやめにくい、ではどうしたら良いかということです。
・外的な制御
行動制限をかけることが重要です。
例)窃視症→スマホのカメラをキリで壊す。そうすれば盗撮はできません。
例)窃触症→混んでいる電車に乗らないようにする。
・合併する精神疾患の治療
うつなど他の病気が被っている場合はそれをしっかり治療します。
・カウンセリング、心理教育
これらは重要です。自助団体もありますので、そのようなものに参加するのも良いと思います。
ちなみに当院はパラフィリアの専門機関ではありません。軽いものは診ていますが。
・相手…目的・手段<人格
相手は目的や手段ではなく、自分と同じ人間であること。相手は傷つくし、嫌な思いをするし、それがトラウマになることもある。そういうことを丹念に理解していくことが大事です。
パラフィリアの人たちは、相手がどう思うかを考える習慣がなかったりするのでそれをやっていきます。
重症例はこういったことを身につけるのが難しいということでもありますし、軽症例でしたらすぐにわかってもらえるし、外的な制御の提案にもすぐに応じてくれます。
【参考】
カプラン 臨床精神医学テキスト第3版
レイチェル・クーパー著「精神医学の科学哲学」(名古屋大学出版会 2015年)
依存症
2021.7.23