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「お前もがんばれ」への対応解説 

02:27 精神医学=生物・心理・社会モデル
04:15 生まれ vs 育ち
05:22 生まれながらの差を認め難い

今日は「お前もがんばれと言われた時にどうするべきか」を解説します。
このようなことを言われて傷ついている患者さんはたくさんいます。

上司や両親から「頑張れば大丈夫」「気合いが大事」「俺も辛いことがあった、だからお前も乗り越えられるはずだ」「努力は報われるんだ」「モチベーションを鼓舞すれば大丈夫」「息抜きをすれば仕事を頑張れるよ」などいろいろな形で励まされるのですが、なかなか期待に沿うことができません。 

うつ病の人に頑張れと言ってはいけないという基本的なルールはありますが、それ以外にも発達障害の人やパーソナリティー症の人に頑張れと言いすぎてはいけないなどもあります。

患者さんは限界近く頑張っていてそれでももっと頑張ろうとするから、無理がきて過食嘔吐やアルコールや自傷に走るのに、どうして周りの人は「頑張れ」と言ってしまうのか。相手を傷つけるつもりがないにも関わらず、どうして相手を鼓舞してしまうのかを解説しようと思います。

結論としては、「能力と伸び代のバランスや「運」は人それぞれ違う」ということを自分も相手も理解していないから、特に相手が理解していないから、だと考えます。
努力で何とかなる部分もありますが、ならない部分もたくさんあります。それをどうして、相手は理解し難いのか?ということが臨床的なネックです。

精神医学=生物・心理・社会モデル

そもそも精神医学は「生物・心理・社会モデル」を取っていると言われています。
つまり、能力や遺伝子によって差があるということを認めています。

・生物=脳、遺伝子
生物というのは「脳」のことです。筋肉のように遺伝によって決まるところが大きいです。
頭の良さ、記憶力の良さ、どれくらい頑張れるのか、どれくらい人に気を遣えるのか、優しいのか、攻撃的なのか、こういったことは遺伝で決まることが大きいと言われてきます。

・心理=学習、遺伝子変化
もちろん学習して変わっていく部分もあります。
後天的な学習によって遺伝子変化が起きることもわかっています。
が、先天的なものと後天的なもののどちらの影響が強いか?という議論もあります。

・社会=環境
人間は相対的な生き物なので、知的障害(精神発達遅滞)というのは他の人から見て相対的に劣っているということで、それが障害に見えてしまう、という問題です。
労働時間が長い、パワハラを受けるなど環境によって病んでしまうこともあります。

生まれ vs 育ち

上記をわかりやすく言うならば、「生まれ vs 育ち」ということです。
これは長らく議論されてきたことです。

ジョン・ロック(1632-1704)という哲学者は「人間は生まれたときは白紙で、その後の経験や学習で変わっていく」と唱えました。最近では、マイケル・サンデル氏の能力主義の話も近いかと思います。

努力をすれば皆一定のレベルを到達できるが、生まれつきのものもある。これは議論されてきましたが、現代は両方があることがわかっています。生まれの問題もあれば、育ちの問題もあります。

生まれながらの差を認め難い

ですが、多くの人は「育ちの問題」だけだと思っています。ですから生まれながらにして劣っていること、障害があることがなかなか認め難いです。

精神医学は偏見が多いですし、共感されませんし、理解されていないのですが、その原因の1つは「生まれながらに脳という心にまで差がある」ということを認め難いことにあります。

これは治療の中でよく扱われることです。患者さんは頑張っても頑張っても追いつかなくて、それが苦しくて逃げてしまう、過食嘔吐してしまう、自傷してしまう。

他の人からは理想が高いと言われるかもしれませんがそうではない、人並みにはなりたいなど、いろいろと受け入れ難いことを受け入れていく必要があります。
人とは違う能力、伸び代、運命、親子関係など受け入れ難いものを受け入れていく必要があります。

ただ、これをようやく受け入たところで、相手は受け入れていません。だいたい受け入れません。
例えば適応障害で「自分は頑張っているけど能力不足なんだな、だから適応障害になってしまったんだな。自分の身の丈にあった頑張り方をしなければいけないんだな」とわかって職場に復帰しても、相手はわかっていないのでまたたくさん仕事を押し付けられるとはよくあります。
それはどうしてかというと、生まれや育ちの問題を理解できていないからです。

精神医学はすごく残酷で、生まれつきの能力、伸び代のバランス、運命など現実的なところを理解していかなければいけませんし、それが治療的に必要なことだったりします。
気持ちの問題ではありません。

「トラウマは存在しない」など言いますが、そんなことはなくてトラウマは存在しますし、「捉え方次第だ」と言われたりもしますが、それだけでは済まない問題もたくさんあります。

患者さんは治療の中で何とか理解して受け入れることができても、相手は理解していないからまた傷つく、ということはよくあります。
うつで休職し、その間に自分の限界性を受け入れ、そして職場復帰しても相手はまた仕事を押し付けてくることはよくあります。ですが、理解していない人ともうまく付き合っていくことを覚えていかないとなりません。

「お前も頑張れ」と言われた時は、うまくいなす方法を主治医の先生と話して作戦を立てていくことが重要です。


2021.8.7

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