今日は「虐待経験がある人の特徴」を解説します。
虐待を受けたことがある人全部がそうだとは言いませんが、虐待が原因でこのような特徴を持っているから治療で改善していかなければいけない、ということを述べます。
もちろん、自分の力で、または周囲の力を借りて克服している人もたくさんいますが、精神科に来られる方で虐待の問題が続いている場合は、今回述べるような特徴があり、治療の中で改善していこうと取り組んでいます。
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特徴①自己評価が低い
親から虐待を受けていると自己評価が低いです。
自分は価値が低いからと一発逆転を狙って行動的になる、ギャンブルなどの投機的な行動に走る、もしくは少しでも価値を上げるために真面目に振る舞おうとして過剰適応してしまうといったことがあります。
あるいは、自己評価が低いためにまったく行動できなくなるパターンもあります。
すごく行動しているかと思ったら、急にベッドから動けなくなってしまうこともあります。
動けなくなって「私は躁うつですか」「うつですか」と聞かれたりしますが、そうではなく元々の虐待の問題が大きいのではないかという話をよくします。
キョトンとされますが、治療が進んでいくにつれて理解してもらえることが多いです。
特徴②人を信頼できない
人を信頼することが難しく、親切にしてくれた人に対して過剰にお返ししないといけないと思ってしまいます。
お金だったり性的なものだったり自分から捧げに行ってしまい、親切にしてくれた人ももらいすぎて困ってしまうことがあります。困っている姿を見て「やっぱり私は嫌われているんだ」「私は価値がないんだ」と負のループに入ってしまいます。
このような感じだと、信頼すべき人間を間違えてしまいます。
普通はもらいすぎるとお返しもできないので困ってしまうものですが、悪い人はいくらでも搾り取ってやろうとなります。そういう人との人間関係は妙にしっくりきてしまいます。
他の人からは「何であんな人を信用するの」と言われても、本人とその人の間だけでは成立してしまいます。このように悪い人を信用してしまいがちです。
特徴③安心できない
日常で安心できないので、これからどうなるのだろうとかすごく不安でせっかちだったりします。人生の説明書がほしいという気持ちに囚われていて、権威、新興宗教、マルチ商法などに引っかかりやすいです。
人間は未来に対して悪いイメージを持ちがちですが、未来は絶対に明るくなります。
単純に言うと科学技術が上がるため人々の生活が豊かになっていくからです。
日本だけで見ると高齢化の問題など、先進国の中で相対的に順位が下がっていくので悪くなるイメージがありますが、そんなことはなく生活しやすくなっていきます。
例えば僕は3年前に開業したのですが、その当時は残業なんて当たり前でした。働いている人が受診しやすいようにと22時まで、当時東京で一番遅くまで開けていましたが、開業して1年くらいで「働き方改革」が始まりそこから見事に変わりました。
今は診療時間は20時までですが、それでも19時台の患者さんはほとんどいません。
やはり世の中は良くなっていると思います。リモートワークや自動運転も進むでしょうし、YouTubeでは無料で情報を伝えられます。ですが、それがわからないのです。
特徴④内面は未熟
パリッとスーツを着て外的にはしっかりしていても、内面はすごく未熟だったりします。
一軒家と車を持てば僕は一人前で幸せな人間なのだなど、幸せのイメージが平面的で貧相です。そのため応用がききにくかったりするので、内面の豊かさをどう耕していくかが治療のポイントになります。
治療
トラウマの問題をどうやって治療するかというと、EMDRなど直接トラウマを掘っていく治療もありますが、一般的には上記の4つポイントを一つ一つ普通の人に近づけていくという感じです。
自己評価が低ければ「あなたは無価値な人間ではない」と何度も伝えますし、信頼すべき人を間違えていれば「あの人は信頼してはいけない、あの人は信頼できるね」と伝えます。
未来への不安は杞憂だったりするので、「大丈夫じゃない?」と普通の大人の意見を伝えます。マルチに騙されそうだったら普通に言います。
そういうことをしていると内的なものが育っていくので、それを評価するようにしていきます。
親子問題
2021.8.24