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精神医学の全体像〜これからYouTubeで何をしたいか、話します

01:33 マーケティングとは何か
06:03 精神医学は何を解決したのか
08:50 精神医学での解決策
13:41 何がイノベーションなのか
16:52 学習のハードルを下げるために
20:21 「心」の水準
23:05 今の問題点

今日は、「マーケティング的な思考」から、精神医学がどのようなことをしたのか、我々の臨床はどのようなものなのか。そして僕がやっているYouTubeは、マーケティングという視点で見たときにどういうものなのか、とお話しします。

マーケティングとは何か

いろいろな言い方をしますが、現代的なマーケティングは「顧客の諦めていた問題を解決する」ということです。

すでに人類はあらゆる面で満たされています。ご飯を食べられるとか、暖かいところで眠れるとか。でもまだ人類は不満があります。
その不満を見つけて解消するというのが今の企業の務めです。

これを言っても、「なんですか? 僕、嫌なこといっぱいありますよ」と皆さん思うと思いますが、「でも本当にその不満に気づいていたんですか?」ということが結構あります。

・iPhone
例えば、iPhone。
僕は、中高とMDで音楽を聴いていました。その前はカセットテープだったので、カセットテープからMDに切り替わったときにすごく便利でした。
これ以上の進化の必要はないと思ったら、出ましたよね「iPod」が。
1つの端末に音楽が何千曲と入るのです。

こんなハイスペックなものいらないよと思っていたら、知らないうちにiPhoneが出ていました。電話機能も付いていて、インターネットもできる。
いざ、これに慣れてしまうと過去には戻れないですよね。
自分はこんな不満があったんだ、ということに気づかされたというのが僕の思い出です。

・スターバックス
スターバックスはコーヒーを売っているのではありません。
お店も含めた空間、憩いの場を演出するビジネスだと言います。

・Amazon
Amazonはものを売っているのではありません。
買い物をする手間を省くことを売っています。

「売っているのは商品でしょう」と思うかもしれませんが、本質は違います。
手間を省くということを売っているので、配送料を無料にしたり、サブスクリプションモデルを作って、紙おむつがなくなったら定期的に送るサービスを作ったり。
「ものを買う」という手間をなくすサービスなのです。

このように、本質やビジョンは大事です。

「自分たちは何をやる会社なのか」という本質を掴む。
そして、「自分たちはどういう問題を解決したいのか」が非常に重要なのだと思います。

精神医学は何を解決したのか

「心の問題を、脳の機能障害だと言い換えた」というのが、精神医学がやったことだと思います。
精神医学が出る前は、宗教上の問題だったり、個人の甘え、育て方が悪い、努力が足りないといった問題だと言われました。

それらすべてを脳の問題、遺伝子の問題と仮定した。
その仮説のもと、いろいろなことを研究しているのが精神医学です。

ただ、脳の機能障害の問題だと特定はできたのですが(できていませんが)、解決策は道半ばです。
精神医学はまだわかっていないことが多いのです。

100年後、200年後でどんどん治療が変わると思いますし、今考えられている「正しい」ということも覆えされると思います。

ただ、僕らが確実にやっている事は何かと言うと、「あなたの甘えではない」言える、あなたの甘えではなく「脳の問題」だときちんと言える、ということです。
その前提であれば、色々な建設的解決策を考えていけます。

もう少しややこしいのが、治療というのは「心」の水準で行われるということです。

治療は薬以外にもカウンセリング、就労支援、作業療法などいろいろあります。治療は、「脳」の問題をもう一度「心」に戻してしまいます。

本質は脳科学ですが、実際の治療は人と人との心の触れ合いだったり、傾聴する、自信を高めるという「心」の水準で行われるのでわかりにくいのです。

一度心の問題だとしたことを脳の問題に切り替える。
脳の問題だけれど、人間に伝えるためには心の問題として扱っている、というのが精神医学のイメージです。

精神医学での解決策

精神医学での解決策として実際にどのようなことを行っているかと言うと、中心にあるのは「外来治療」です。

外来では、診断や薬物治療、マネジメント、疾病教育、精神療法(カウンセリングのようなもの)などを行います。

この外来を支えるために、大学病院等では「研究」や、外来で働ける人を作るための「教育」が行われています。

また、外来だけだとうまく回らないので、いろいろな解決策を追加していきます。

例えば、外来と外来の合間に自殺のリスクがあるとか、事故が起きてしまうのではないかというときに、外来に加えて保護観察機能がある「入院」があります。

<福祉>

外来の中で、脳の特性で生きにくいということがわかりました。では、それをサポートする制度を利用しましょうということで、行政の協力もあって「福祉」の世界に入っていきます。

・就労支援
就職がなかなか厳しい人、仕事を覚えることにハンディキャップがある人は、就労支援を使ってトレーニングをすることで社会復帰をしてもらいます。

・就労継続支援A型B型
なかなか普通の会社では働けない人に、もう少し長く就労継続支援というところで共に働きながら、仕事のノウハウを身につけてもらって社会に復帰してもらいます。

・障害者雇用
一般枠ではなく障害者として入ることで仕事をしていきます。

・グループホーム
一人暮らしが難しい場合は、グループホームという形で共同生活をします。

・生活保護
お金の問題がある場合は生活保護を取ったり、地域の生活福祉課の人に相談したり、保健師さんに来てもらったりします。

・手帳、年金
障害者手帳を取る、障害者年金を取る、など金銭的な補助を受けられます。

<カウンセリング>

外来の中で精神療法(カウンセリング)をやるには、時間が短すぎます。
そのため、精神療法ができる人にアウトソーシングをするということで「カウンセリング」という業務もあります。

<訪問看護、デイケア、自助団体>

・訪問看護
きちんと日常生活が送れているのかを、家にいながらも緩やかな保護観察をするために「訪問看護」があります。

・デイケア
「作業療法」と呼ばれる治療です。集団で何かな作業をすることで、その作業を通じて癒していきます。

・自助団体
医師や治療者にはわからないことがたくさんあるので、その問題を解決していく有志の集まりがあります。

何がイノベーションなのか

疾病教育を外来だけでやるのは難しいので、インターネットを介するということが今は起きています。

僕自身、中学生や高校生のころにはネットのテキスト文化はあったので、精神医学のあれこれをネットで見てこんなものがあるんだと図書館で本を借り、精神医学や哲学を勉強していました。

では、僕がやっている動画は何なのか。
僕がやっている動画は何がイノベーションだったのかを、テキストとの比較で考えました。

よく患者さんは、「病気の説明をしてくれてありがとうございます」と言います。そのため、僕は「病気や精神医学のことを教えているのがイノベーションだ」と勘違いしている時がありました。

実は違うのです。

僕は医学部に来る前から精神医学のことを教えてもらえていました。それはインターネットのブログやテキスト文化のおかげです。

では動画になったことで何をしたか。
僕がしているのは「学習ハードルを下げる」ということなのではないかと思います。

テキストでは、学習意欲の高い人でないと精神医学を学ぶことができませんでした。
動画ならば、学習意欲がそこまで高くなくても学べます。
疲れていて本は読めないけれど、動画だったら見られるという人を救えるのがこのサービスなのだということに、このマーケティング的な思考からたどり着いたのです。

僕がやるべき事は、精神医学が行った「心の問題は脳機能の問題なのだ」ということを「ハードルを下げて伝える」ということで、それが僕が今やっているサービスの本質なのだということに気がつきました。

学習のハードルを下げるために

・YouTube
一番の中心はこのYouTubeです。
ここで10分間のショートレクチャーをやっているというのが僕のメインです。

・TikTok
TikTokもやっています。若い人がYouTubeよりもTikTokを見るようになっているので、YouTubeの動画を短く切っただけですがそれをTikTokにも上げています。

・YouTubeセカンドチャンネル
「精神科医の不思議なチャンネル」というセカンドチャンネルもやっています。
ここではプロセスエコノミーと言って、YouTubeの制作の裏側、今回のような話をちょこちょこあげています。

・その他のSNS
InstagramやFacebookも少しだけやっています。Twitterやnoteも一部やっているのですが、この辺はストックされないフローな感じがあります。

・書籍、TV
書籍は来年以降にやれるお話も少しずつ来ているので、やれたらなと思っています。これは宣伝でもあるし、協力プレーでもあります。

一流の編集者と話すと、自分のやっていることや、自分の発信している情報の中で何を患者さんが求めているのかが見つかります。

「心」の水準

先ほども話したのですが、心の病は脳の問題なんだと言いつつ、治療は心で行われます。
共感してもらうとか、自信を取り戻すというのは「心」の水準で起きるのです。

心の水準とは何かと言うと、人間の動物らしい本能や動物的な知覚のあり方だったりするので、インフルエンサー化は流れとしておかしくない、というのはしみじみ思います。

今の問題点

・検索性△、リコメンド機能
YouTubeで病気を検索するのはなかなか難しいです。見てもらいたい動画があってもそれが検索されないですし、検索順位が上に来なかったりします。

また、自分でわざわざ検索しないと見つけられないというのは相当不便です。困っているときに自分が見るべき情報がスッとリコメンドできるような機能になるようなやり方を研究しています。

・FAQ、AIチャットボット、ゲーム…
FAQのサイトを作る、AIチャットボットを導入する、ゲームにしていく、というのも未来の技術としてはあるかと思います。この辺りも意識しながら日々勉強しています。

今日は、マーケティング的な思考から精神医学の全体像についてお話ししました。


2021.9.9

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