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敏感者、敏感関係妄想について、ふんわり解説します

01:45 敏感者とは
03:03 精神医学の流れ
06:33 敏感者の鑑別
07:58 このような概念も重要

今日は「敏感者」という概念についてお話しします。

敏感者とはシュナイダーが提唱した概念で、「自信欠乏精神病質の一群である」とされています。
HSPにも少し似ている概念です。(HSPは医学用語ではない)

提唱したシュナイダーは20世紀初頭に活躍した非常に有名な精神科医で、ヤスパースの弟子です。
統合失調症の症状を説明した医師としても知られています。

敏感者とは

・感じやすく、小心で、体面を気にする
・体験、感情を処理することができず、長く悩む
・高い自我理想(自分はこうあるべき)、倫理観があり、恥・罪を感じる

これらを長期間保持しているとこじれてきます。
その結果「敏感関係妄想」に至ります。

参考:現代精神医学事典
https://www.koubundou.co.jp/book/b156039.html

・敏感関係妄想 
敏感関係妄想はクレッチマーが1918年に提唱した概念です。
何かを体験した後に屈辱や罪悪感を感じ続けることで、「自分のせい で世の中が悪くなっているのでは」という妄想に至ります。
妄想とは、「あなたのせいではないよ、関係ないでしょ」と言っても「いやいや私に関係があります」というやりとりになるような、訂正不可能な状態を呼びます。

精神医学の流れ

なぜ年代をお伝えするかというと、これが昔の概念だということを強調したかったからです。

精神科の薬ができ始めたのは1950年以降で、1970年代に一般化してきました。
それまで精神医学は何をしていたかというと、カウンセリング、入院の他、「こういう性格の人は、こういう傾向がある」ということを記録して発表していました。

敏感関係妄想で言えば、「このような敏感な人がいて、このような倫理観があり、このような問題を抱えていることが多い」ということをまとめていました。

ただこれは現代的な心理学でいう「統計」で立証されたものではなく、あくまで記録をし症例のシリーズとして出したものです。
そういうこともあり、結果、今日的にはなかなか使われなくなってしまった概念です。

このような概念をまとめていったものを「精神病理学」といいます。面白い学問ですが、現代的ではなくなりつつあります。
精神病理学的診断から統計的な診断学に移ってきているのが現代的な流れですが、本当にそれで良いのかというのはよく議論されています。

20世紀初頭はフロイトもいました。彼は「精神分析」という形で治療についても言及しました。
診断と治療はセットでやっていくべきだという考えです。

フロイトは町医者でしたので軽症の患者さんを診ていましたが、一方でシュナイダーやクレッチマーは大学の先生でしたので、入院している重症患者を診ていました。

統合失調症の人を多く診ていたのですが、脳病である統合失調症はカウンセリングでは治療できません。自分たちにできることは何かということで、「診断」をしっかりしていくことが重要だと考えました。そこで記録を取り、病気を見続けた、という背景があります。

ここには「診断とは相互的に変わっていくインタラクティブなものであり、治療という概念がなく診断ができるのか」という分析的な考え方と、「そもそも記録する側が関与したらきちんとした科学にならない」という病理的な発想の対立があります。

現代はどうなったかというと、DSMやICD-10のような操作的な診断という形に変わりました。
良くも悪くもこのような進化をしたわけです。

敏感者の鑑別

敏感者の鑑別としては、神経症圏ではない可能性があります。

この人はこのような葛藤の末でなっている、敏感な人だからカウンセリングをして慣れていってもらおう、不安を取り扱っていこう、というのも正しいのですが、実際に妄想があり統合失調症である可能性もあります。

統合失調症は若い時に発症するものですが、年をとってから発症した場合は遅発パラフレニーの可能性もあります。

うつ病ということも考えられます。

現代的な文脈で言うと、感情の処理ができないというのは発達障害的な問題もあるのではと捉えることもあります。
回避性パーソナリティ障害や社交不安障害の文脈で捉えた方が良いのではと言われることもあると思います。

このような形で言われるので、敏感者という言葉は今日的にはあまり使われなくなっていると思います。

このような概念も重要

ただ、敏感者のような概念はとても重要だと思います。

僕はよく「境界性パーソナリティ障害と言われていたものが、ADHDという言葉に入れ替わってきていますよ」と言います。
境界性パーソナリティ障害と捉えていた真実もあるし、ADHDに置き換わったことで失われてしまった情報や知見もあると思います。

この敏感者も同じで、なんでもかんでも回避性パーソナリティ障害や発達障害でしょと言ってしまうと、この人の恥辱の感じや、敏感関係妄想に発展する感じ、長く悩んでいる感じや倫理観などの問題を取り損ねてしまう気もします。

自我理想や倫理観はただのASDのこだわりでは?と言ってしまうと、高い自我理想や倫理観からくる恥の感じ、孤立感がうまく表現できないような気もします。

ちょっとオタクっぽい話になりましたが、このような概念もあるのです。
今回は「敏感者」という言葉を皆さんに共有しておさらいしてみました。


2021.9.18

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