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「親ガチャ」について、精神科医目線で解説します

01:25 なぜ怒る人がいるのか
07:59 親ガチャ失敗例

今日は「親ガチャに精神科医ならどう答えるのか」をお話しします。

「親ガチャ」という言葉を聞いたことがありますか?
最近ネットやニュースで流行っている言葉で、「子は親・境遇を選べず、運次第で人生が変わること」という意味です。

「お前のところは金持ちだからいいよな、親ガチャ成功してるよね。うちは貧乏だから親ガチャ失敗しちゃってさ、うまくいかないんだよ」と言ったりします。

人生が運次第なんて当たり前のことですが、その若者語に対して「けしからん」と言う人がいるようです。
このことについて、精神科医ならばどう答えるかということを話したいと思います。

なぜ怒る人がいるのか

怒る人それぞれの意見を聞いていると、
「お金持ちにはお金持ちなりの苦労がある」
「親は一生懸命育てているのだから、子供がそんなことを言ってはいけない」
「一生懸命あなたのことを育てている親に対して失礼だと思わないのか」
「年収で愛情が決まるものではない、愛情がすべて」
などと言いますが、そういう話はしていないでしょと若い人ならば思うのではないかと思います。

なぜ怒る人がいるかには、3つのポイントがあると思います。

<現代のタブー>

「運、才能、努力、お金」は現代のタブーです。
現代は能力主義社会です。皆が大なり小なり教育機会を与えられていて、努力する自由があります。努力をすれば成功できる、成功する自由もあります。
我々は格差はあるかもしれないけれど、成功するチャンス、お金持ちになるチャンスは与えられていますよね、というのが現代社会の定説です。

それを皆が信じているので、成功している人を見ると、「あの人は頑張ったんだな、自分が怠けそうな時に踏ん張って頑張ったんだな」と思い、今の自分の貧乏生活や不遇さを我慢させるという社会です。

そう言えばそうかもしれませんが、これも矛盾があります。
その人がなぜ成功できたのか、それは本人の努力だけではないだろうし、才能や遺伝子で決まっていることもたくさんあるのです。

境遇の問題もあります。 
勉強を頑張ったから良い大学に入れたと言いますし、良い大学に入っている人たちは、ほとんどが自分の努力で入れたと言っていると思います。家がお金持ちで、親が教育を与えてくれたから自分は入らせてもらえたのだと思っている人は少数派です。

成功したのも運やタイミングの問題だったりしますし、お金持ちになったというのも運の問題です。

同じ「運動神経が良い」のでも、野球で発揮できたのかハンドボールなどマイナーなスポーツだったのか、選んだ種目によって生涯年収が全然違います。
町の少年クラブにハンドボールしかなければそこに行きますし、野球が盛んな地域で良い指導者がいればそこに行きます。ですからこれも運です。

現代は成功も失敗も本当は運によって決まることが多いのですが、それをあまり認められない社会文化になっています。

<儒教文化>

儒教は東アジアで強い影響力を持つ、孔子を始祖とする思想・信仰の体系です。
その思想の中に、「仁」という「愛すること、敬うこと」を意味する言葉があります。

儒教文化では目上の人を立てなさいという教えがあるのですが、それはつまり上司も敬いなさいという意味です。

この文化は支配する側にとって非常に都合が良いのです。
上の人には徳があり、下の人たちに対して思いやる心がある。そして、下の人たちは上の人を敬うという形です。
たがいに敬えば、愛によって社会は維持されるということです。

ただこれは階級が固定されてしまいますし、年下で才能のある人が上の人の養分になってしまいます。良くも悪くもこのような文化です。

争いが減って平和になるから良いではないかというのも1つの考え方ですが、基本は上の人にとって都合の良い文化なのです。

<高齢化社会・文化>

今は年上の人が多すぎます。
年上の人が多すぎるから、カルチャーも年寄り向けのカルチャーになっています。

上記3つのうち、現代のタブーを疑ったことがない人は、
「お前の努力不足を全部親ガチャとか運のせいにするなよ」
「きちんと愛情をもって育てられたんだから、努力すれば成功する可能性があるんだからもっと頑張れよ」
などと言います。

儒教文化の立場にいる人は、
「親は一生懸命愛情を持って育ててくれたんだから、敬いなさい」
と言います。

また、高齢化社会で孫文化ですので、同い年くらいの子供が「お前、親をちゃんと敬えよ」と言うと、上の人から「お前は良い奴だ」と言われたりします。
年上の人に合わせた方が賞賛されるというカルチャーです。

このようなことから、親ガチャは基本的には叩かれるという構図になっています。

親ガチャ失敗例

ですが批判を恐れずに言えば、親ガチャというものはありますし、その失敗例というものもあります。
精神科医的には親ガチャに失敗している人はたくさんいます。

子供は「親ガチャに失敗した」と言って親を恨む気持ちもありつつ、でも恨めません。
子供は親を恨めないようにインプットされて生まれてきますから、基本的には親を恨めません。虐待されていてもなかなか子供は親を恨めないものです。
言葉では恨むと言っていても、腹の底から恨んだり憎んだりはできません。

逆に、親の方が子供を憎むという事は意外とあります。
これは会社と似ています。先輩は仕事を教えてくれるので、後輩はいつまでも先輩に頭が上がらないというか慕う気持ちがありますが、先輩はあまり後輩のことに関心がありません。自分は上司のことにしか興味がありません。

親ガチャ失敗例としてこのようなものがあります。

・年収<資産
どちらかというと年収よりも資産の方が大事ですが、お金持ちの家庭もあればそうでない家庭もあります。お金はできるだけあったほうが望ましいですが、過度にお金持ちでもそれはそれで問題があります。ほどよく高めが良いです。

お金持ちすぎると何が問題かというと、自己肯定感が育ちにくいのです。
頑張ってボーナスが10万円増えたとしても、親がものすごいお金持ちだとそのことに達成感を感じることができません。これは少し損なことです。

・夫婦仲
両親が仲が悪いと子供は強いストレスを感じます。良い将来像をイメージしにくいということもあります。
実際、大人になったときに両親の仲が悪いと、会社で適応障害になり実家でちょっと休もうかなと思っても帰ることができません。両親の仲が良ければ、実家に帰って仕事のアドバイスをもらったり将来設計について相談したりできるのにそれができません。このようなパターンは結構あります。

・教育への関心
教育に関心がある親ならば適切な教育をしてもらえますし、関心がなければ不適切になります。
過干渉な親は、虐待に近いような詰め込みもあります。子供は親の期待に沿うことができず、双方不幸になるパターンも多くあります。

親がスポーツ選手でその子供もぴったりとはまり、超一流のスポーツ選手になることもありますが、大体はうまくいきません。

・理解、成熟度
親が自分のこと、他人のこと、社会に対しての理解が乏しかったり未熟だったりすると、子供は辛いです。
仕事で潰れてしまった時にも、社会理解がないと「もっと頑張れ」と逆に追い込むことがあります。「精神科に行っているから甘ったれたことになるんだ、もう二度と行くな」というようなことを言う親も結構います。

・土地
親ガチャというか境遇ガチャです。
地方や田舎だと教育機会が少なかったり、逆に都市部だと教育機会はあるかもしれませんが、なかなか自由に遊べないということがあります。幼い頃から競争がありすぎて困ることもあります。

・両親の忙しさ
両親が忙しいと子供は相談する機会がなかなかありません。
お金だけ渡されて親との意見交流が少なく、子が未熟に育ってしまうパターンもあります。

・知的能力、誠実さ
遺伝の問題ですが、両親のIQが高い方が子供のIQも高く生まれやすいですし、両親の運動神経が良い方が子供の運動神経も良くなります。
親が誠実であった方が子供も誠実になりやすいですし、親が嘘をつく人だと子供も「嘘をついて良いのかな」と思いながら育つことになります。遺伝的に嘘をつきやすい人もいます。

精神科の問題というのは脳の問題なのですが、脳というのは基本的に遺伝で決まることが多いです。ですから、遺伝的な問題は親ガチャの失敗として出てきます。

このように、何でもかんでも本人の努力ではカバーできるものではありません。
カバーできないから精神科に来るのです。

能力主義社会では、努力でカバーできないことがあると言うのはタブーを犯すことですが、やはり努力でカバーできないことはたくさんあります。

「親ガチャ」という問題は不謹慎な部分もあります。
ですが、この言葉を怒るのではなく一度飲み込んで、世の中には運で決まることもある、本人の努力ではどうしようもないこともある、うつは甘えではない、ということを共有してもらえればと思います。
そうすれば追い込まれる人も減るのではないかと思います。


2021.9.20

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