今日は「人間関係の問題、すべてのパターンは起きている」という説についてお話しします。
精神科医や心理士は、よく占い師と比べられます。
占い師との違いは、僕らは「どんな未来も起こりうるし、どんな性格のパターンもあると考えている」ということです。
「あなたはこういう性格の人だから、実はこうでしょう」とは言えません。
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人間関係のパターン
虐待があった人で、
・パワハラ上司に会ったことがあるかないか
・その上でDV彼氏を選んだか選んでいないか
というのはどんなパターンもあります。
・虐待を受けたことがあり、パワハラ上司とDV彼氏がいる
・虐待を受けたことがあり、パワハラ上司が今いるけれど、DV彼氏ではない
・虐待を受けたことがあり、パワハラ上司は回避できているけれど、DV彼氏がいる
・虐待を受けたことはあるけれど、パワハラ上司とDV彼氏は回避できている
・虐待はなかったけれど、パワハラ上司とDV彼氏がいる
・虐待はなかったけれど、パワハラ上司がいて、DV彼氏ではない
・虐待とパワハラ上司はないが、DV彼氏がいる
・虐待もパワハラ上司もDV彼氏もない
このすべてのパターンがあります。
どのような比率ですかとか、このような人はこういうことが起きやすいと聞きますがそれはどうですか、という質問が出ると思いますが、これも何とも言えません。
<反復強迫はあるのか?>
「虐待を受けたことがある人は、パワハラをする上司のところに行っても苦に思わないから引き寄せてしまう」
「虐待を受けたことがある人は、DV彼氏やダメ男を選んでしまう」
「ダメ男選んだ人はその後もダメ男選びやすい」
などと言いますが、そうでないパターンもたくさんあります。
ですが、僕らはどのパターンもあるなと思いながら治療をしています。
逆に占い師の人だったら、「あなたはこういう運命だから次に選ぶ彼氏もDV彼氏なのではないか、だからあなたは変わらなければ次の彼氏もDV彼氏になってしまう。変わるためには壺が必要だ」と言ったりするのかもしれません。
僕らはこのようには思いません。
その人が変わらなくても、次の彼氏にDV彼氏を選ぶか選ばないかというのは、その時の縁だったり偶然の要素が大きいので、どのパターンもあり得るなと思いながら治療をしています。
性格のパターン
性格のパターンもそうです。
外交的なのか内向的なのか、ASD傾向はあるのかないのか、ADHD傾向はあるのかないのか。
そして、何かトラブルがあったときに自分を責める自責の人なのか、他人を責める他責の人なのか。
全部のパターンがあるのです。
患者さんとお会いして、「この人は外交的でASD傾向もあって、ADHD傾向もあるから絶対に自責の人だor 他罰の人だ」とは思いません。それは、どのパターンもあると思うからです。
これは結構大事だと思います。
・このような発達傾向があるから、この人は仕事ができない。
・このようなことがあるから、仕事ができる。
ということではありません。どのパターンもあります。
決め打ちしない、予測もしない
そういうものでしょうと思われるかもしれませんが、この話はとても重要です。
俯瞰的にものを見るのはこの発想がすごく重要ですし、僕らは臨床をするときもやはりこの発想を持ちながら見ています。
どういう人なのか、というのを決め打ちしないのです。
こういうパターンだなと思いながらデータは集めていきますが、予測はしません。
未来についてもそうです。
データは集めますし、「こういうことが起きたら危険ですよね」とアドバイスはするかもしれませんが、決めつけないし予測もしません。
それが「抱える力」であり、正しい治療のあり方ではないかと思います。
よく患者さんは自分には1つのパターンしかないと思いがちです。
「+、+で来たから次も+しかない」
と思うかもしれませんが、そんなことはありません。
「+、+で来たけれど、それが続くことはないだろうから次は絶対-だ」
というとこれもそんなこともありません。また+のこともあるわけです。
「こうだから、こう」というのは、人間関係の問題や性格の問題では起こり得ません。
僕らと占いの違いはそこにあるのではと思います。
今回は、人間関係の問題はすべてのパターンが起きる、ということをお話ししました。
精神医学
2021.9.25