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PTSDの診断、治療、メカニズム

01:09 PTSDの症状
02:41 恐怖体験とその影響
05:49 治療

今日は「PTSD(PostTraumaticStressDisorder)」について解説します。

PTSDとは、「死ぬんじゃないか」という恐怖体験を味わうことで、それが強烈すぎて脳にこびりついてしまう病気です。
その時のアドレナリンや、脳内ホルモンがガッと出た感じが忘れられなくなってしまいます。

忘れられない結果、
・侵入体験
・回避
・抑うつ、不安
・過覚醒
といったことが起きます。

複雑性PTSDというのは、この体験が長期にわたるというものです。
いわゆるPTSDというのは、強烈な嫌な体験があってそれがなかなか忘れられないというものです。

PTSDの症状

・侵入体験
侵入体験とは「フラッシュバック」のことです。
突然生々しい記憶を思い出す、漠然と何度も思い出す、日中のふとした瞬間にあの時の嫌な気持ちや感情を思い出す。夢の中で再体験してしまう、ガバッと起きて「あれは夢だった」となる。そういったものです。

・回避
トラウマが起きた場所を避けてしまいます。
夜道で襲われた場合は夜道を歩けなくなる。男性が怖かった場合は男性を避けてしまう、きちんとした恋愛ができなくなるというような形で、日常生活を満足に送れないことを「回避」と言います。

・抑うつ、不安
自己肯定感の低下や落ち込み、不安感。

・過覚醒
過覚醒というのは常にビクビクしてるような感じです。
緊張感が常につきまとっていて、どこにいても落ち着きません。
あまりにもその体験が強烈すぎたので、また起きるのではないかと思い続けています。
思い続けているというのが「過覚醒」です。

ピリピリしていて、どこか漠然とした不安があり、また起きないように日常生活でやってはいけないルールが多く、ふとした瞬間に何度も思い出してしまう。これがPTSDの症状です。

恐怖体験とその影響

「死の恐怖体験」とは何かと言うと、元々PTSDのトラウマは戦争体験を指していました。それが次第に、戦争以外でも同じような症状がある人がいることがわかってきました。

今一番多いのは「性暴力」です。レイプや夫からの性暴力です。

他に、自分の子供など「身近な人の事故」、「暴力」「火事」「交通事故」「自然災害」などがあります。
よくあるのは性暴力です。

<脳の変化>
単なる勘違いではないのか、傷つきやすい人がいるのではないかといった問題ではなく、脳にも変化が起きています。

・海馬
・扁桃体
・前帯状皮質
といった記憶や感情に関係するところで萎縮が起きています。

<合併症>

PTSDは合併症を起こすことがあります。
アルコール(ギャンブル、大麻、覚醒剤)依存、うつ病、そのほか心不全など体の病気にまで発展する、合併しやすいと言われます。
ベトナム戦争の後は、アルコール依存や薬物依存が増えたことからもわかります。

実際その体験を忘れようとするには、アルコールなどを使わないと落ち着かないという言い方になってしまうこともあります。だからこのようなものに手を出してしまい依存になってしまうことがあります。

<PTSDになりやすい人>
他にはPTSDになりやすい人として、女性、十分な教育を受けられなかった人、貧困、家庭内不和、シングルマザー、幼少期の虐待経験といった要素も絡ん できます。そのような人は病気になりやすいということがあります。

PTSDは単純なトラウマの問題だけではなく、それを中心にいろいろな問題がくっついています。
二次被害とも言いますが、それに対する周りの無関心、警察が協力してくれない、あなたの思い込みだと言われるという問題も絡んできて、誤解されやすい病気です。

治療

治療については、薬物治療よりは心理療法などカウンセリング的な治療が重要だと言われています。

・認知行動療法(CBT)
・暴露療法
・EMDR
などがあります。

認知行動療法はうつに対する認知行動療法ではなく、それをアレンジしてもっとトラウマに焦点を当てた認知行動療法を行います。
暴露療法も似ていますが、回避が起きないように少しずつ慣らしていくものです。

EMDRは、治療者が患者さんの顔の前で2本の指を左右に動かし、患者さんはそれを目で追いながら過去のことを思い出したり、リラックスしてもらうものです。暴露療法に似ていますが、語り直しを行うという治療です。

このような治療こそ大事とも言えますが、多くは複雑な要素が絡むので、折衷的な心理療法という形でいろいろな要素を合わせながら普通にカウンセリングをすることが多いかと思います。

また、
・安全な環境づくり
・語りあえる場(つくる、紹介する)
・心理教育(病気について知る)、ワークショップ
このようなことも行い、特定の心理療法だけでなくいろいろな介入をしながら治療していきます。

「折衷的な治療」と「特定の療法」のどちらが良いかというのはいろいろな意見があります。

その人に合わせてオーダーメイドをした方が良いのではという意見もありますし、それだと漏れがあるかもしれないし研究していけないから、きちんとした治療プログラムで行った方が良いという意見もあります。

その場限りではないかということもあるし、治療者のセンスにもよるので、独りよがりになってしまうのではないかというのが治療プログラムで、それは堅苦しくて本当の現場を見ていないよというのが折衷的な治療です。

実際のところ型通りにはいかず、CBTをやっていても暴露療法の要素を合わせているように、治療プログラムを組んではいるけれど割と臨機応変にやっています。
逆に折衷的な治療の側も、臨機応変にやっていて何も計画がないかというと、ワークブックを使ったり認知行動療法のようなことをしたりします。

主義主張は違いますが、やっていることはだいたい似ているところに落ち着くのはよくあることです。

・被害者が孤立している
被害者が孤立しているというのはPTSDの特徴です。

PTSDの治療をやっていて多いのは、誰が治療費を払うのかということです。
私は被害者なのに、なぜ私が時間もエネルギーもお金も割かなければいけないのか、なぜこんな理不尽な思いをしているのかという葛藤があります。

・あきらめ? 敵に見えるのか?
治療者側や弁護士というのは、あきらめるように促すこともあります。それが敵に見えることもあり、ややこしい部分です。
実際はそれほど強く言いません。
「でも、なかなか難しいこともあるよ」というようなことを言うと、それがすごく彼らの心に響き敵に見えたりする、被害的に感じられたりすることもあります。

かといって「私はあなたの味方だからどんどんやっつけに行こう」というのも現実的ではありませんし、治療もうまくいかなくなります。

どのように治療関係を結ぶのか、信頼関係を結ぶのか。どのように気づきを促していくのか、現実との折り合いをどこでつけていくのか、妥協点を一緒に探していけるのか、というのが治療のポイントだと思います。
答えはその人によって違います。

今回はPTSDの症状やメカニズム、治療法について解説しました。


2021.11.8

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