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境界性パーソナリティ障害の対人関係

00:47 境界性パーソナリティー障害の対人関係
04:42 なぜそのようなことが起きるのか
08:00 治療法

今日は「境界性パーソナリティ障害の対人関係」というテーマでお話しします。

境界性パーソナリティ障害の方は対人関係が苦手というか、すごく不安定な対人関係になりやすいです。それはどうしてか、その背景にはどういう特性があるのか、そして治療法までお話しします。

境界性パーソナリティー障害の対人関係

彼らはどういう人間関係になりやすいかということ、大きくこの2つの言葉で表されます。
「理想化とこき下ろし」
「見捨てられ不安」

・理想化とこき下ろし
ある人が理想的になってしまいます。
1つ良いところがあり、「良い人だ」となると「まさに理想の人だ」と思ってしまいます。欠点が何もない人で、この人についていけば私は救われるんだとなってしまうのです。

例えば恋人だったら、「今までの彼氏は最悪でした。あなたみたいな人はいなかった!」と過度に甘えてべったりしてしまったりします。
医師に対しても、「益田先生は最高!こんな先生はいなかった!YouTubeもやっているし日本一どころではなく世界一の医者です!」とすごく褒めてくれます。

でもそれが長くは続きません。

少し嫌なことがあると、評価が180度変わります。
「益田は最悪だ!防衛医大しか出ていないし!」となり、腹が立つようなこと、例えば「○○先生は東大だったし、○○先生は慶應だし友達もたくさんいるし」などと言ってきます。

腹が立つことを言うというか、腹が立つまで言うのです。
それによって、この人はすごく悪い人なのだと自分でも思いたいし、怒らせるまで言います。怒らせることで、この人は最低なのだという自分の思いを確信に変えたくなってしまいます。
だから「こき下ろし」と言うのです。

理想化されたと思ったら次はこき下ろす、このアメとムチをどんどん使い分けていきます。

そうすると振り回される人は振り回されますし、アメとムチをうまく使われるのである意味洗脳状態のようになり、共依存のように相手のことしか考えられない人ができてしまいます。
ある患者さんに対して、その患者さんのことを思うことしかできないようなパートナーができてしまいます。そういうことも起きます。

・見捨てられ不安
「見捨てられ不安」というものがベースにあります。
人に嫌われたくないという思いに支配されているのです。

理想化してこき下ろしている割には、こき下ろした相手にも見捨てられたくありません。
アメとムチを使われた相手が「もう僕のこと嫌いなんだ、バイバイ」と言うと、「見捨てないで!」となりふり構わぬ努力をします。

そういうことをしているので関係はもつれにもつれ、ある意味すごくメロドラマというか、喧嘩して仲直りしてを繰り返し、妙にくっついた恋愛になってしまいます。
それが楽しい人もいるかもしれませんが、あまり見ていて良いものではありません。

第三者として僕が冷静な話をしていると、「益田は何なんだ」とか「役に立たないな」など輪の中に入っていけないことも結構あるかなと思います。

なぜそのようなことが起きるのか

ではどうしてそのようなことが起きるのかと言うと、境界性パーソナリティ障害の人は基本的に人間理解が浅いのです。幼稚だったりします。

人間には良いところもあれば悪いところもある、社会には良いところもあれば悪いところもある、あるときは味方だけど時に応じて敵になったり、利害関係が一致しているから協力し合うこともある、など複雑です。ですがその複雑さが理解できません。

その複雑さを理解する部分がすっぽり抜けてしまっているというのが、境界性パーソナリティ障害の人の人間理解であり世界観です。

子供が大人の中に混ざっているような感じです。
彼らだけがアンパンマンの世界で、社会の複雑さや多重性がうまく理解できていなかったりします。

・情緒不安定
うまく理解できていないので、常に不安で情緒不安定です。
1日の中でアップダウンが激しかったりします。

喧嘩をしてすごく怒ったと思ったら、怒っている時は怒りしか頭の中にないのですが、1人になった瞬間にそれがガラッと変わって「自分はダメなんだ」「恥ずかしいんだ」としくしく泣いていたりします。
このどちらかしかないというところも、同時に複雑な感情を抱えることが苦手ということです。

・衝動的
買い物をしすぎたり、過食をしたり、性行為をしてしまうといったことがあります。
衝動性に身を任せている間は、複雑さや混乱から救われ、落ち着きます。ですからその瞬間はそれに埋没するということがあります。

・自傷行為
自傷行為も結構覚えるとやってしまいます。
これも衝動性から来るとも言えますが、自傷行為をしている瞬間は少し頭の混乱が減るのです。スッと冷静になれます。痛みや血を見ることで冷静になれるのです。
それでやってしまうのですが、やってしまうとどんどん癖になってしまい、これをすれば楽になると思ってどんどんやってしまいます。

またあるときは、傷を見て心配してくれる人がいます。
心配してくれる人がいると今度はそれを間違った学習をしてしまい、これをすれば人に心配してもらえるのだと思いそれを見せびらかしたりしてしまいます。そうすることで人から見捨てられなくなると思うのです。
人から見捨てられないために自傷をしなければいけない、傷ついているところを見せなければいけないという思いに囚われてやってしまいます。

ですから、すごく単純な世界に生きているのです。
その単純さを理想化とこき下ろしや情緒不安定さで何かうまくやっているので、単純ではなく複雑な内面や世界があるのではと勘違いしがちなのですが、実際はそうではなく相手はすごく子供なのです。

だから子供と接するように、しっかりと愛情を持って接しなければいけません。
大人の中に子供が混ざっているようなものですから彼らは苦しいのです。

治療法

治療法としては、
・弁証法的行動療法
・メンタライゼーション
・認知行動療法
などがあります。これらは心理療法の技法です。

実際これをやってくれる精神科医や心理士は少ないです。このようなトレーニングを受けている人は少ないですし、少なくとも僕はできません。

これら3つの治療法のエッセンスは何かというと、「治療構造をしっかり作る」と言うことです。
週に何回会うのか。30分なら30分、45分なら45分、その人のための時間をきちっと作ります。そして定期的に会います。調子が悪くても良くてもその時間はしっかり会う。延長も短縮もしません。こういったことが大事です。

その中で、彼らが感じていることや気持ちを言語化することを手伝います。
相手はどう思っていたのか、社会はどのようになっているのか、これらをきちんと言語化するのを手伝うことが重要です。

こういったことをすることによって、大人の社会のルールをきちんと覚えてもらいます。
覚えてもらうことで、衝動性を落ち着かせ、不安を小さくしていくことが大事です。

ただ、これは彼らは苦手な行為でもあるし、やりたくない行為でもあります。
ですから、なかなかこれをモチベーション高くやっていくことは難しかったりします。

また、彼らの周りには、彼らを甘やかす悪い大人たちが時々現れます。
そして悪い大人たちを見抜くのが苦手で理想化してしまい、自分から傷つくとわかりながらも付いて行ってしまったりするし、性行為に巻き込まれてしまうこともあります。
それでまた傷ついて帰ってくるということもあります。

治療者がやれることと言うのは、患者さんはいなくなるかもしれないけれどまた帰ってくるので、その時はまたあたたかく迎えてあげるということです。
理想化とこき下ろしで治療者は疲れるのですが、家族も疲れると思いますが、振り回されずやっていくことが大事です。きちんと会うことも大事です。

治療は数ヶ月で終わらず、1年、2年と続くこともあるので、また会えるような仕組みを作っておくことが大事です。
短期決戦にはせず、焦らずやっていくことが重要です。


2021.11.21

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