本日は「自殺をする人の特徴」というテーマで、自殺のリスク、このような人は自殺をしやすいというリスクについてお話しします。
どのような点に気をつけたら良いか、自殺報道はどのように扱えば良いのかというところまでお話ししようと思います。
不幸にも自分で自分を傷つけてしまう、自傷から死に至るようなケースになる人はどのような問題があるかというのは、疫学調査で割とわかっています。
疫学調査上、このような人は気をつけなさいということは、精神科医は指導されます。
そのようなお話とともに、僕個人がこのような人は危ないと思っているパターンを挙げます。おそらくこのイメージは、皆さんが考えている「自殺をしそうな人」とはかけ離れているような気がします。
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疫学的な要因
・精神障害の有無
精神疾患がある人の方が自殺に至ることが多いです。
うつ病、躁うつ病、統合失調症、パーソナリティー障害、アルコール依存症、不安障害などが代表的な問題です。
・借金、貧困
その人が借金を背負っている、家に借金がある、家が貧しいというのも自殺しやすい人の特徴です。
・虐待、犯罪、災害、自殺
虐待をされていた、されている、犯罪被害者である、災害被災者である、身近に自殺をした人がいる、親族に自殺をした人がいる、最近そのようなことがあった、という人も自殺をしやすい要素です。
これは「PTSD」に該当する項目です。
・配偶者の有無、独身、男、LGBTQ
家庭環境としては、配偶者がいない人、独身、LGBTQの人は自殺リスクがあると言われています。
これは家庭環境および性の領域です。
女性の方が男性よりも死にたいと思う人の比率は多いのですが、実際自殺に至る人は男性の方が多いと言われています。
10代など若い人の自殺はLGBTQの問題が深く絡んでいたりします。
・身体の病気、痛み、妊娠前後
体の病気や痛みにずっと悩まされている、妊娠前後も自殺リスクが高いと言われています。
身体疾患の場合は特に「がん」です。がんの診断をされた人には自殺が多いということがわかっています。
・抗うつ薬
アルコールやドラッグもそうですが、抗うつ薬も自殺のリスクを上げると言われています。
10代~20代前半の人の場合は、抗うつ薬によって自殺リスクが上がると言われています。
その原因としては、うつ病と診断されていたけれど実は躁うつ病だった、そのため抗うつ薬が原因で躁うつ混合状態になってしまったのではないか。
また、抗うつ薬自体がイライラさせるような要素があるので、そのイライラがつのって自殺に至るなどいろいろなケースが考えられます。
以上が、疫学的に知られているリスク要因です。
一つ一つ吟味するといろいろな思いや感想が出てきます。
派手な人
亡くなりそうな人はどのような人かというと、おとなしくてもじもじしている人なのではないかと思うかもしれません。
でも意外とそうではなく、逆に一見派手な人です。
タトゥが入っていたり、薬物・アルコールを摂取している、性に淫らな人、ギャンブルで借金が多い人など、アウトローで派手な人は自殺のリスクが高いのです。
分解していくと先ほど挙げた疫学的な要因につながります。
ギャンブルをするので貧困や借金がある。
性の乱れは、虐待の問題や精神障害の有無や衝動性の問題、独身であることにも絡みます。
薬物やアルコールもそうです。
タトゥなどのアウトローな世界もやはり貧困や虐待との結びつきが強いです。
ですから「派手な人」というのは危険な因子です。
相談しない人、怒っている人
もう少し入っていくと「相談しない人」です。
相談しない人はリスクが高いです。
ただ、「相談できない人」がいます。
自分の気持ちを言葉にするのが苦手なのです。
どうやってしゃべったら良いかよくわからない、会話が下手な人は自殺のリスクが高いです。
とにかくイライラして怒っている人、それをぐっと我慢するとか自分の問題として解決していくということよりは、人のせいにする、外に出してしまうという人もリスクが高いです。
精神科医のことも信用しなかったりする人です。
「薬だけくれたら良いんだから」ということを言う人は、やはり危険だなと思います
自殺報道
後は重要なポイントとして、「自殺報道」があります。
ニュースで芸能人が亡くなったということを知ると、自殺者が増えるということがわかっています。
一般的な自殺のことが話されてもほとんど自殺率は上がりません。ですが、有名な人や芸能人が亡くなったことをニュースで取り上げるとリスクが上がります。
そして、どのような方法で亡くなったのかを伝えれば伝えるほど、リスクが上がることが知られています。
ですから報道は気をつけながら行わなければなりません。
報道にあたってはガイドラインがありますので、ガイドライン通りにやってもらえれば良いなと思います。
後は個人のプライバシーのことにきちんと配慮する。
精神科医は、その人を診たことがないのにそれを「こういう人かもしれない」と語らないことが大事です。
このようなことをニュースで取り上げてしまうというのも1つ問題がある、危険なことだと思います。
ただ、まったく取り上げないというのも変な話です。
これをきっかけに、悩んでいる人に対して啓蒙するということに意味があるのではないかと思います。
まったく何もしなければ良いかと言うと、そういうわけではありません。
きちんと配慮した上で、きちんと伝える。
リスクがある人は気をつけた方が良いし、社会的な問題として解決していかなければなりません。
一番良くないのは、人類は自殺を避けられないから当然あるものだ、として裏にある問題を解決していかないことです。
「そのような人は一定数いるから仕方がないでしょ」という考えは本当にナンセンスです。
1個1個の問題はそれが重なることによって「死ぬしかない」という思いに囚われてしまいます。
精神障害の有無はきちんと治療すれば良いわけですし、借金や貧困の問題も社会的に解決できていくものです。虐待や犯罪の問題もしかりです。
家庭の平和を守るために住みやすい社会を作る、マイノリティーの人たちへの偏見をなくす努力を普段からする、といったことが大事です。
「このような時にリスクがある」ということを皆が知っておくことが大事です。
知っていれば防げることもあると思いますので、折を見て伝えていくことが重要ではないかと思います。
今回は、自殺をする人の特徴、自殺のリスクが高いとはどのようなことか、について疫学的な観点および僕の個人的な印象も含めてお話ししました。
心について考察
2022.1.4