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多くの人が悩んでいることをざっくり話します

00:40 悩んでいることを話す意味
05:19 年代別の悩みごと

本日は「多くの人が『悩んでいること』」をざっくり語ろうと思います。

この根拠は何ですか、データやエビデンスは何ですか、と言われたらウッと詰まってしまうのですが、臨床をしていてどんな話を患者さんとよく話しているのか、この年代だとこの話題が多いなということを頭の整理も兼ねて語ってみようと思います。

悩んでいることを話す意味

そもそも「悩んでいること」を話すことにはどのような意味があるのか、について最初にお話ししようと思います。

会話は何のためにあるのだと思いますか?

僕はよく頭の中で実験をします。
よくやる実験は「サルから人間になったときにどのような能力が進化したんだろう」「サルのときはどんなことをしていたのだろう」というようなことを漠然と考えることです。

会話は何のためにあるのかというと「悩みごとのシェア」だと思います。
悩みごとをシェアすることで発見や気付きがあったり、知識を共有するということなのかなと思います。

サルが「あそこへ行ったらヘビに噛まれた。すごい怖かった。嫌だった」と思ってしゃべると、シェアしたことで、「何かあってもこの人が助けてくれる」と思うので気持ちは楽になるます。

話を聞いた方も「じゃあバナナを取りに行くときにあの道を通るとヘビに遭うから、遠回りだけれど迂回して行こう。わかったよ、そうすれば良いんだよね」という発見があったり、一緒にそうしようと知識を共有したりできるので、双方にとって win-win になります。

不安なことがある、でも会話をする、そうすると不安が解消されるというのは、種全体として見たときに、サルのグループでもいいのですが、種全体として見たときにすごく有効です。

誰かが困っていることは他の誰かも困ることなので、それを皆で共有できるということは生存率を上げるために重要だったりします。

生存率を上げるために重要なので、不安が解消されるとすごく気持ちが良いのです。
問題が解決されるとすごく気持ちが良い。
話すと気持ちが良い。気持ち良いからついついやってしまう。不安を話したくなる。
という風に人間の脳みそはできています。

だから悩みごとはシェアした方が良いですし、悩みごとを聞いてあげるというのは、生物的には生存率を高める意味でも、その個体として見ても集団として見てもすごく有為なことだと思います。

何も知識だけの共有ではなく、そこには「感情的な交流」があります。

感情的なものは何かというと、本能的に裏付けられた、ただの合理的あるいはアルゴリズムではなく、本能的にドライブをかけてやっているということなので、ポジティブな交流があるということです。
良いようになるのです。信頼されるのです。
…上手く説明できていないですね。

とにかく気持ち良いことをやれば上手く行くように、進化の中では上手く作られているので、こういうことをすると信頼される、自分だけではなく相手にとっても信頼されるので良いことですよ、ということです。
だから悩んでいることはシェアしていきましょうということです。

では悩みごとというのはどういうことがあるのか。
どういうことを多くの人は悩んでいるか、ということを次は学ぼうと思います。

学ぶことで、発達障害の人であれば会話が上手くなるし、女性の人でしたら女性同士の会話もうまくやれたり聞き上手になれると思います。

ビジネスマンの方も、上司の悩みを聞く、部下の悩みを聞くというのは、非常に信頼されますし出世の近道になります。

仕事がちょっとできるとか営業成績がちょっと良いというのは、信頼されるかというとライバル視されてかえって出世の足手まといになることもあります。

それよりも組織の中で信頼される、営業成績よりも相手に信頼されるということの方が出世には重要だったりするので、相手が何に悩んでいるのか、そういうときにどう対応したら良いのかを知っておくことはすごく有利だと思います。

年代別の悩みごと

・10代~20代

10代とか20代の人がよく悩んでいる話は、仕事ができない、勉強ができない、周りの人に嫌われているのではないか、上手く話せないしミスが多い、上手く行っていないから転職した方が良いんじゃないか、この場にいない方が良いのではないか、という話が多いです。

ポイントは、「モラトリアム」と呼ばれるものが延長しているということです。
寿命が伸びている分、若い人は若いです。

昔の20代のときはこれくらいのことをやっていた、親から自立していた、独りで何かやっていた、もっと責任を持って仕事をやっていたと思う人も年齢が上の方にはいるかと思いますが、実は昔と今は違って、大人として自覚する年齢がどんどん上の方に上がってきています。

「モラトリアム」とは何かというと、子どもから大人になるまでの間、働かずに、勉強したり遊んだりするのを許されている期間をモラトリアムと言います。
社会人として一人前に働くまでの間、許されている期間が延長されているという感じです。

大学を卒業したらすぐ働けとか、高校を卒業して大学へ行かないのならすぐ働け、社会人として振る舞え、と言いがちですがなかなか上手くいきません。

それはなぜかというとモラトリアムが延長しているからで、20代の後半くらいまでいかないと、今の人たちに関して言うと社会人としての自覚は芽生えにくい、逆に言うと学生気分を引きずりやすいということがあるかなと思います。

逆に20代前半で引きこもっていたとしても、20代後半になると目がピカっと開いて普通に働くということはあります。
モラトリアムは終わったということですね。普通にあるので焦る必要はないのかなと思います。
昔と今は結構違うのです。

仕事ができないという悩みに対しては、自分は発達障害ではないかという話に発展することもあれば、親子問題の話をしたりすることもあります。

20代半ば、20代後半になってもまだ親子の関係に悩んでいるということは全然あります。
もういい加減昔の人たちであれば、上の世代の人たちであれば「いい加減、親子のことは悩まなくていいんじゃない?」と言いたくなるかもしれませんが、そうではなくモラトリアムが延長しているからなんだろうなと思います。

・30代~40代

人に嫌われているんじゃないか、という悩みは、どういうわけか30代、40代になってくると自然と消えてきます。
年齢が変わることによって開き直るというか、悩むテーマも変わってきます。

今の30代、40代が悩んでいるのは、「貧困」や「自己実現」の問題が多かったりするのではないかと思います。

恋愛弱者であれば孤独の問題、結婚するのかしない方が良いのか、この相手と結婚していいのか、自分にとって結婚とは何なのか、人生において結婚は必要なのか、ということについて話したりします。

「妊活の問題」もあります。
妊活をどうするのか、妊活中に旦那が手伝ってくれない、そういうことを考えます。

「すれ違いの問題」、家族のすれ違い、夫婦のすれ違いを話したりします。
後は不倫の問題もあります。
パワハラ、中間管理職として板挟みになるという話も結構あります。
その結果うつになったり、トラウマの問題を考え直すこともあります。

20代や10代のうちはモラトリアムの期間なので、ある意味自分のことに直面しなくても済んでいますが、30代になってくると勢いも無くなってきていよいよ「自分自身」について深く考えなければいけなくなり過去のトラウマについて語り出す、それに直面しなければいけなくなってしまうこともあります。

昔なら10代~20代で語るようなことが、30代~40代になって初めて語ることがあります。
トラウマの問題を回避して、アルコールやギャンブルの問題に変わっていくということもあります。

あとは「他者とのジレンマ」です。

妊活の問題もそうですが、10代~20代は自分のことに一生懸命です。
30代~40代は自分のことが分かってきて今度は自分と他人とがずれているということ、当たり前ですが価値観が同じ人というのはいないので、AさんとBさんは価値観が違い、Aさんと全く同じ価値観の人は世界中どこにもいないわけなので、絶対にずれるわけです。

だからそのずれた人と上手く付き合わないといけないのです。
それは夫婦の問題もしかり、親子だってしかり、職場の上司部下であってもそうです。

他人とは絶対に違うので、目指すものも違うし大事にしているものも違うので、その違いを上手くやる、その違いを受け入れていくことに悩むことが多いかなと思います。

モラトリアムが終わった後に悩むこと、モラトリアムの間にも悩むわけですが、30代~40代で悩むことの方が多いかなという気がします。
10代~20代は他者とのジレンマがあったとしても結局は自分の問題として自分のことばかり考えているのに対して、30代~40代は人のことばかり考えるという感じです。

・50代~60代

もう少し年齢を重ねていくと、親の介護の問題、子供の教育、子供の発達障害の問題、発達障害の治療や教育の問題、発達障害の旦那の問題、自分自身の健康の問題があります。
「これで良かったのか?」という話をよくします。

自分のことを理解して他者とのジレンマを克服した後に、「取り返しのつかない問題」が出てきます。
何かを選択しなければいけないことになるわけです。

人と自分は違うので、どちらを優先させるのか、会社を優先させるのか自分を優先させるのか、家族を優先させるのか自分を優先させるのか、とにかく選択を強いられます。
モラトリアムの期間は選択しなくて良いわけです。
モラトリアムが終わった後には選択の連続になります。それで悩みます。

選択し終えた後の答え合わせの時間になってくると「あの選択は間違えてたな」ということが結構あるのです。

選択したら全部を当てるということは難しく、外すこともあります。
「あの選択は間違えてたな(テヘ)」みたいなことがあったりして、テヘペロではなくて後悔することがあります。

後悔して「あれはヤバかった」「あれは酷いことをしてしまった」と、若いときの罪悪感とはまた別の罪悪感や後悔の念を抱くのがよくあるパターンです。

病気としては、うつ病や発達障害の問題、認知症の問題を考えたりします。

多くの人が悩んでいることは、大体このような話が多いです。

上司の人と喋る時には、この人はこれまで選択を色々してきて、でも選択を誤ったと思っていることもあるんだろうな、誤っているからそれに対してどういう風に傾聴すると相手の信頼を得やすいのかなと考えれば良いです。

逆に言うと、若いということはまだモラトリアムなんだな、一人前の人として接するよりは学校の先生になったつもりで話してあげた方が相手にとっては聞きやすいだろうな。
30代~40代の人だと他者とのジレンマに悩んでいるので、社会はこうなんだよ、という話をすると閃くというか発見が多いので信頼されることになる、というのをざっくり知ったりすると良いと思います。

妊活だったら妊活の知識があると信頼されるので、そういうことを考えると生きやすくなると思います。

今回は、多くの人が悩んでいることをざっくり語りますというテーマでお話ししました。
何かの参考になれば幸いです。


2022.1.14

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