本日は「上司はなぜ分かってくれない?」というテーマでお話しします。
精神科の患者さんとお話ししている中で、上司について語る場面がたくさんあります。
「なんでウチの上司はわかってくれないんだろう」「ウチの上司のあれが悪いから、僕らは残業させられているんだ」という話が出ます。
確かに患者さんの仰ることはもっともで、前の上司のときには何も問題がなかったわけです。
現在の上司の元でうつが酷くなったり調子が悪くなっているということがあり、不満、どうなってるんだと思うことは至極当然だと思います。
ただ、「全ての上司は無能である」という説があります。
上司に期待しすぎる、上司におんぶに抱っこではなく、自己判断していかなければならないということもあります。
上司はなぜ無能なのか、ということについてお話しできたらと思います。
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ピーターの法則
「全ての上司は無能である」という説は「ピーターの法則」から導かれていると言われています。
ピーターの法則とは何かというと、
1. 人は能力の限界まで出世する
平社員の中で優秀な人は係長に、係長の中で優秀な人は課長に、とどんどん自分の限界まで出世していき、社長までいく人、部長、課長で止まる人という風に、人は能力の限界まで出世していくということです。
2. 限界まで出世すると、有能な人でもそのポジションでは無能化
少年野球で優秀だった子は野球の名門中学へ、名門中学で優秀だった人は名門高校へ行く。
でも途中のどこかで挫折するわけです。
高校の中ではちょっとダメな方だった、高校野球では上手く行ったけれどもプロでは通用しなかった、プロで通用したけれどもメジャーリーグでは通用しなかったという風に、頭打ちする場所で無能化していきます。
ですから出世していく途中ではなく、出世してしばらく経った人はすべて無能な状態であるということになります、無能になるまで出世するので。
3. 組織は限界に達していない人たちで運営される
中堅や若手の方が仕事ができるというのは、こういうことから言えます。
ただその中堅どころも出世していけば、また無能化していくので、まだ無能なポジションにいないから無能でないだけ、ということです。
これを「ピーターの法則」と言います。
何となく臨床実感としてもありますし、面白い説だと感じます。
出世はランダムでも良い?
ですから組織は降格制度が必要です。
また、社会の階層性、誰もが管理職になる必要はありません。
例えばプログラマーならプログラミングに専念することも一つだし、臨床ができる人が皆研究職になる必要もなく臨床をずっとやっていても良いわけです。
その場所で給料を上げていくというのもあると思います。
また出世というのはそもそもランダムで良いのではないか、ランダムの方がかえって良いということもあります。
結局、どの人が有能で、このポジションに合う合わないというのは分からないわけです。
純粋に分かるためには模擬訓練、模擬テストで一斉にすべての平社員を管理職に相応しいかどうかテストしトレーニングさせてみて、その結果誰かを残すということをすれば良いのですが、実際の会社でそこまですることはできませんし、そんな余裕はないのでそれだったらランダムで良いのではないかという説もあります。
「上司は有能」という思い込み
上司は有能、出世は有能という思い込みが患者さんにはあります。
上司は有能だから自分をちゃんとコントロールできるはず、出世できる人は有能だから、出世できていない自分はダメなやつではないか、という思い込みがあるのですが、そういうわけではありません。
採用面接もよくわからないものです。
相手の能力がどれくらいかなんてぶっちゃけ分かりません。
いい加減なものです。
出世システムや上司からの評価も同じようなもので、きちんと評価できているかというとそういうことはないと思います。
スポーツだと、監督がしっかり見ていますし割と優劣が分かりやすいのですが、実際の仕事ということになると分かりにくいのだろうと思います。
もう一つ言うと、患者さんの常識や思い込みを外すために話をすると、歴代のアメリカ大統領の半分が実は何かしらの精神疾患にかかっていたという噂があります。
ストレスでうつっぽくなっていた、アルコールの問題があった、という話があります。
何が言いたいかというと、「パフォーマンスが落ちている」ということです。世界で一番優秀だと言っても過言ではないアメリカの大統領であっても無能化していく、ピーターの法則が成立してしまうということです。
精神科の患者さんが無能というわけではなく、うつなどでパフォーマンスという意味では100%発揮できないので、無能化していると言えると思います。
いい加減だけど回っていく
でも世の中というのは結構うまく回ります。
我々は国家や社会、世界が厳密に作られているように錯覚しています。
最初に神様が完璧な世界を造ったと思っているけれども、そんなことはなく、完璧な世界を造っている最中だというような言い方をされます。
神様から国家というものに代わったのですが、それでは国家というのは厳密にコントロールされているのか、ギチギチで作られているのか、重箱の隅まで考え尽くされているのかというと、そんなこともありません。
今回のコロナ対策などを見てみると、国家というのはいかにそこまでコントロールできていないのか、ということがよく分かると思います。
いい加減なものです。
いい加減なのですが、世の中はそれでも成り立つのです。
国家よりもっと大きなものだと、今だとGAFAMになります。
マイクロソフトなどの多国籍企業をGAFAMと言ったりします。
それだって全てのインフラを担っているわけではありませんし、問題もあるということはご存知かなと思います。
自然の摂理、歴史の摂理から見るとこれからボロが出てくるかもしれません。
人間が作ったものなんていい加減なものです。
ただ、いい加減だけれども回る、ということです。
患者さんによく言うアドバイスとしては、
・上司のひとことに一喜一憂する必要はない
あなたが上司が無能だと感じた直感は間違っていないことが多いです。
・会社はいい加減でも回る
あなたが一生懸命やる必要はないし、責任感を持って身を粉にして命からがらやらなくても何とか会社は回ります。
いい加減にやっている上司が最適解だったりします。
・運をつかめ
と言ってもつかめないので、つかめたら良いよねという話をしています。
ちょっと気を抜いて、所詮運だな、と思いながらやるのは結構重要かなと思います。
あとは、上司は有能で自分は無能なんだという思い込みは捨てた方が良いですね。
今回は「なぜ上司は分かってくれないのか」また「上司は無能である」というピーターの法則について解説・紹介しました。
仕事の悩み
2022.1.23