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内観療法について、解説及び雑感を述べます

01:17 内観療法とは
02:56 精神医学は価値観を扱わない
05:16 治療者との関係性は?

本日は「内観療法」について自分なりの意見を述べます。

診察室で患者さんから「内観療法」について質問を受けることが続きました。
内観療法は「森田療法」のことかと思っていたのですが、調べると違う治療法のようです。
調べた結果、僕なりにどういう風に思ったか、また患者さんにどういう風に伝えたかということをお話しします。

恐らく内観療法について訊ねられる患者さんは、不安やうつを改善したいと思っている方、「内観する力」を身につけたいと思っている方なのかなと思います。

内観療法とは

内観療法とは何かというと、1940年に吉本伊信(よしもといしん)という方が浄土真宗から着想した精神療法です。

方法としては、「集中内観療法」と言うようですが、静かな部屋で1週間ほど過ごします。
1~2時間ごとに5~10分セラピストが来て、何を考えていたのか話をし、引き続き一人で考えるように促します。

一人で何を考えるかというと、母親や過去の人間関係、過去お世話になった人たちのことについてです。

どういうことをしてもらったのか、どういうことを恩返しできたのか、どういうことで迷惑をかけてしまったのかを考えます。
考え続けた結果、過去の体験や出来事を素直に受け止め受け入れたり、過去の人間関係に対して感謝をしたり、我執(がしゅう=否定的な考えや自分のこだわり、相手への怒り)から解放されることを目指すようです。

内観療法に興味を持たれた方は、仏教や禅の思想、価値観にシンパシーを感じているのかなと思います。

精神医学は価値観を扱わない

精神医学的には、内観療法はあまり一般的ではありません。
決してメジャーなものではないです。

それはなぜかというと、内観療法がダメというわけではなく、精神科医は「価値観」については扱わないということがあります。

仏教的な価値観、キリスト教的な価値観、共同体主義、個人主義、道徳主義など何でも良いのですが、価値観は扱いません。
どのような価値観を持っていても基本的には自由です。
自傷他害がなければ個人の自由です。

従って「目標」があることについては違和感があるといえばあります。
上の人に感謝する、恩義や仁義、仁愛について考えるのは、個人としてそこに到達するのはOKですが、治療者側が提案することはありません。治療者ごとの相性を作ってしまうので基本的には提案はしません。

では認知行動療法や精神分析には価値観(の関わる側面)はないのか、と言えば、あります。

確かに、認知行動療法なら認知行動療法の価値観はあります。
科学的なやりとりで、客観的に分析しあっていくという価値観があったりします。
精神分析もユダヤ教的要素、キリスト教的世界観からの解放を目指す価値観、無意識を重視する価値観があります。
だからあまり精神分析とは言わないですし、認知行動療法も最初から積極的には行いません。

治療者との関係性は?

こういうことを言う患者さんについて何を考えるのかというと、今の治療についてすごく遠慮しているのかな、ということです。
治療者との関係性についてどう考えているのかな、と思います。

一人で考えたいとか、ちょっとアドバイスがあればいいと思っている患者さんは、治療者のことを上手く利用できていないのではないかと思います。
気軽に相談してくれれば良いし、かしこまる必要はないのに、「益田先生のところから離れて一人で頑張っていきます」という決意表明のような印象を受けます。どうしたのかな、と思ったりします。

僕らは教師ではもちろんなく、患者さんに対して生き方を教えることはできないので、それを心細いとか頼りないと感じてしまうかもしれません。
ただ、同じことを言いますが、僕らは教師ではないのです。

治療の中で、患者さんは最初は治療者のことを好意的に受け止め、信用できる人、頼りになる人と思い、治療に臨みます。
最初の10回くらいはトントントンと良くなっていきますが、そこから行き詰まります。
行き詰ってなかなか良くならない時期が続きます。
その中で感謝をしなければいけない、誰かを否定的に思ってはいけないというのを素直に受け止めるのは、結構苦しかったりするのではないかと思います。

瞬間瞬間ではすごく怒っても良いし憎んでも良いのです。

内観療法の中でも同じようなことをするのだと思うのですが、1940年と今の時代は違って、治療者がもう少し対等というか近い距離にいます。
1940年なら距離が近づいていたのですが、現代だともっと距離が近かったりするので、いい意味で。気軽に話せるというか、普通の人間同士であるということがわかっているます。

だから、もうちょっと気軽にやったらという気がします。
気軽に相談してもらったらいいし、気軽に自分の気持ちを言ってもらってもいいし、気軽に過去のこだわりを話してくれてもいいんじゃないかと思います。

昔の日本人はそうしたことがなかなか言えなかったんだなと思うし、お父さんやお母さんを憎んでいるということを口にするのはすごくハードルが高くて、内観療法のような治療構造をセッティングしてあげないと素直に話せなかったのかな、と思います。
今は時代が違うので、もっと気軽に相談してくれれば良いと思います。

ウチもカウンセリングをやっていますし心理士さんもいます。もっとゆっくり考えたいなとか時間をかけて自分のことをゆっくり語ってみたければ、診察は短いですからカウンセリングを利用してもらうのが良いのではないかと思います。

色々な思想や価値観、精神療法があります。
色々なものを吸収していって、治療が停滞したときには色々なものを見たりするのが良いと思います。

だけど、停滞したとき患者さんが内観療法を持ち出した場合、僕が感じるのはすごく遠慮されているのかな、頼りなく感じているのかな、自分の軸が欲しいのかなということです。色々なことを想像しながら会話をします。

今回は内観療法について解説と所感を述べてみました。


2022.2.1

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