本日は「4月病」について解説します。
「4月病」というのは、もちろん精神科の病名ではありません。
造語になるのだと思いますが、4月になってメンタル的に調子が悪い人のことを指すようです。
精神科医的に考えると「適応障害」です。
ストレスが溜まってうつっぽくなっているということなので、4月に発症した適応障害のことを4月病と呼んでいるのかなと思いました。
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4月病の症状、なりやすい人
症状は、落ち込み、不安、動悸、肩こり、腰痛、お腹の不快感、下痢便秘、痛みなどの身体症状、軽いうつ症状、不眠、食欲低下などではないかと思います。
原因はストレスが溜まっているということなのですが、4月特有のストレスとして考えられるのは、環境の変化です。
3月に卒業して社会人になった人もいれば、4月を機に部署を移動した人もいます。
転職した人もいるかもしれません。
4月は年度変わりなので、そこで大きな環境変化が起きて調子を崩したのかな、と思います。
なりやすい人は、適応障害になりやすい人と同じなので、ストレスを感じやすい人、不安を感じやすい人、白黒思考の人、完璧主義の人、変化に弱い人などがあります。
ベースに発達障害傾向のある人は変化に弱かったりするし、ベースに不安になりやすい人というのも変化に弱かったりします。
不安障害的な人、俗っぽい言い方をするとHSPというやつです。
もちろんHSPは医学用語ではありません。
元々家庭内で問題があった人、生い立ちに問題がある人、トラウマがある人もなりやすいです。
最近の傾向
・コロナ
最近の傾向としては、一つはコロナです。
コロナが影響しているので、職場に行ったり色々な人とコミュニケーションを取らずに家にいながら色々な変化が起きたりするので、急に不安になってしまう人は結構います。
職場ならば変化があったりしたとき、新しい仕事を振られてもどんな人なのかなとわかるのですが、家にずっといて新しい仕事を振られると相手はどう考えているのかわかりません。
相手は相手で新しいことでピリピリしていたりするので、ピリピリしている人と対応していると疲れます。
そういうことは考えられると思いますし、実際診察室でもそういうことを聞くことが多いです。去年はそうでした。今年もそうだと思います。
・発達障害
また最近の傾向では発達障害はバズワードというか流行っています。
自分は発達障害なんじゃないか、だから新しい環境で上手く適応できないんじゃないか、マルチタスクをこなせないんじゃないか、ミスが多いんじゃないか、と思って受診する人もいます。
発達障害傾向がある人で、「障害」とは言い難い「グレーゾーン」とも言い難いような人も結構います。
もちろん発達障害傾向のある人もいます。
・回避性パーソナリティ障害
あとは回避性パーソナリティ障害的な人が最近増えました。
YouTubeでも回避性パーソナリティ障害、社交不安障害の動画は伸びやすいです。
コロナの影響で人と会わないことが増えたので、人付き合いが苦手な人、元々対人不安が強い人、人と会うと体質的に緊張しやすい人たちは、その傾向を強めてしまった感じはします。
マスクをしているので相手の表情がわかりにくく、Zoomだとちょっと間が違ったりして相手の気持ちも読みにくいし、メールやLINEでもよくわかりません。
だからすごく不安になりやすいのかなと思います。
これは最近の傾向であったりします。
予防するには?
では、4月病にならないためにはどうしたら良いのか。
・頑張らない
予防としては「頑張らない」ということです。
4月は大変なので、セーブしておくということは大事です。
4月になったから仕事を頑張ろう、ジムにも通おう、読書をしよう、新しい手帳をつけてランニングも頑張ろうなどとすると潰れてしまいます。
全部頑張ろうとしたら潰れてしまいます。
この時期は疲れやすいので、新しいことを始めずに余力を残しながらやるというのが良いのではないかと思います。
子どもの場合、変化に弱い子どもは多いです。
新学期に入るとクラス替えなどにすごく弱い子どもはいます。
大人でさえ弱いのに子どもだと基本的には弱い。その中で特に弱い子たちもたくさんいます。
そういう場面だといじめが起きたり、ケンカが起きたりする子たちもいます。
大人はそういう子どもたちのストレスに注意を払う、4月は普段以上に注意を払うことが大事です。
「ピリピリしているのは今だけだよ」ということをちゃんと教えてあげることです。
子どもは、先のことを見るとか中長期的にものを考えることは苦手なので、この状態がずっと続くのではないかと思います。
だけど、あと1~2ヶ月もしたら変わるよ、人間関係のピリピリもすぐなくなるよ、と教えてあげることが重要です。
中長期的にものを考えるということも学習してもらう良い機会なんじゃないかなと思います。
・5月病、6月病?
5月病や6月病もあるんですか、違いはありますか、という質問を受けます。
基本的にはないのかなと思います。
皆さん意外と思うかもしれませんが、患者さんの調子が悪かったり外来の患者さんが多い時期のイメージがあります。
この動画を撮っているのは2月の頭ですが、今ぐらいはあまり忙しくありません。
だんだん疲労が溜まってきて、3月、4月くらいがピークだったりします。
5月のゴールデンウィークでみんな休まって、6月、7月と増えていき、7月は結構調子が悪くなります。
8月で夏休みがあるので患者さんが落ち着いて、9月もシルバーウィークがあるので8月ほどではありませんが結構落ち着いて、10月、11月と調子が悪くなっていく。
12月は年末なのでキツイのですが、忙しいから受診できないという感じで、そのまま冬休みに突入して少し楽になる、というのが一年のイメージです。
大体こういうことが起きます。
意外と6月よりも7月の方が患者さんの数が多いですし、調子の悪い人が多いです。
5月病に調子が悪い人が多いんじゃないですか、と皆さん思うかもしれませんが、意外とそうでもありません。
Googleのアナリティクスを見ていても、5月だからうつ病という文字を検索するということは、あまりないということが分かっています。
アナリティクスを見ても7月が多かった気がします。
だから一年をかけてやっていかなければいけないのです。
さっきの予防の話でもお話ししましたが、一年間こういう形で忙しくなっていくな、こういう形で人の気持ちは荒れたりするな、ということがわかっているので、今の時期はちょっと抑えておこう、今の時期は12月だから頑張ってみよう、という発想は重要です。
メンタルの調子が悪くなるのは、変化、休日・祝日の数、疲労の蓄積具合に適応障害は影響を受けやすいです。ですから、4月よりも7月が多かったりします。
こういう発想で動くと良いです。
働くお母さん
働くお母さんについてはどうですか、と聞かれるのですが、働くお母さんで4月病になりやすい、調子を崩しやすい人というのは今までの話と結構似ています。
ただ、お母さんと普通の新社会人や普通の会社員との違いは、子どものケアまでしっかりしなければいけない人が多いことです。
他の人よりも抱えなければいけない責任の範囲やフォローしなければいけないことが多いので、疲れやすいのかなという気もします。
特に旦那さんに発達障害の傾向のある人だと、カサンドラ症候群になりやすかったりします。
旦那さんが育児や家事などを手伝ってくれないので、その場合はひとりに負担がかかり過ぎて疲れてしまうということがあります。
またその人自身が虐待やトラウマの経験を持っていたりすると、家族のために必死になり過ぎてしまうということも多くあります。
実家がちょっと良くなかったので、自分の家族のことは幸せにしなきゃいけないんだ、と思って完璧なお母さんにならなければいけないと思い、頑張りすぎるということも結構あるかなと思います。
でも旦那さんが発達障害だからというわけではなく、ただ仕事で忙しかったりすると、奥さんの方へ皺寄せがいくこともまだまだ日本の社会ではあるので、それも大変だなと思います。
コロナ前であれば、旦那は4月だから新人歓迎会で飲み歩くのに、お母さんは行けない。旦那は遊び歩いているから負担がかかっていたということもありましたが、最近は飲み会がないので、そういうことは減っているかなと思います。
受診の基準
精神科へかかる基準としては、気軽に受診してもらえば良いのですが、「寝られない・食べられない」というのは一つのポイントです。
眠れなくなってきた、食べられなくなってきたというのは受診の目安です。
動悸、お腹が痛い、過敏性腸炎のようになっている場合も受診したら薬で良くなります。
頭痛やめまいも一つの目安です。
身体に出てきているというのも一つの基準だと思います。
当然ですが、うつがひどい場合、落ち込みがひどくて出勤前に突然涙が出てしまう、死にたいと考えることが増えたときも受診かなと思います。
残業時間が月100時間を超えているということも受診の目安です。
気をつけなければいけないのは、双極性障害や季節型うつ病です。
冬に落ち込む人が多いというのを季節型うつ病と言ったりするのですが、1月~3月は調子が悪い人が多いです。
寒いと調子を崩す人もいるので、注意が必要かなと思います。
双極性障害の場合は、春先にあたたかくなってくると躁状態になる人が結構います。
躁状態になってきてケンカをしてしまう人、躁状態になってきて買い物をすごくしてしまう人、多動になってしまう人もいるので、それも注意のポイントかなと思います。
統合失調症の幻覚・妄想みたいなものが出てしまうパターンも時々あったりします。
春先というのは注意すべき一つのポイントだったりします。
薬の飲み忘れ、4月になったら慌ただしくなって薬を飲み忘れたりすることもあったりします。
双極性障害の人、発達障害の人は注意が必要かなと思います。
アルコール依存、薬物依存の人はこの時期に手を出しやすかったりします。
これも注意が必要かなと思います。
今回は4月病をテーマに動画を撮りました。
適応障害
2022.2.14