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在宅勤務で「うつ」になった人たちのことを解説

01:32 臨床場面でよく出る話題
03:47 今後の話題
06:10 楽になった
08:07 対処方法
08:54 外的構造と内的構造の変化
11:51 新しい生活様式

本日は「在宅勤務によるうつと対処法」というテーマでお話しします。

コロナが流行してもう2年です。色々なものが変わってきています。
大きな変化としては、在宅勤務をする人が増えました。
特に外資系では、もう出勤しなくて良い、週5日在宅勤務という人も出ています。国内の企業でもあります。

今まで出勤していたのに出勤しなくなった、人と会わなくなった人が結構います。
大半ではなくても結構いるという感じです。

在宅勤務で落ち込むようになった人はいませんか?とよく質問されるので、それについて語ろうと思います。
また臨床で僕がこの2年間どういう風なアプローチをしてきたのか、ということもお話しします。

臨床場面でよく出る話題

臨床場面でよく聞くのは次の4点です。

・人に会えない
人に会えなくて困っているというのは、独身貴族的な生活をしていた人が寂しい、困ったということが多いようです。
良くも悪くも、本人が望んでいたかどうかわかりませんが、日中は働いて、平日夜や週末に仲間や恋人に会い、飲みに行ったり遊んだりしていた人が、全くそういうことができなくなりました。
誰とも会えなくて、マスクもしっぱなし、職場へ行ってもすぐ帰ってこなければいけないというときに、すごく淋しくなった。生活スタイルが変わってしまったので、うつっぽくなってしまった、というパターンがあります。

・東京にいる意味?
東京にいる意味はどうなんだろうということは、この2年間話をすることが多かったです。
大学生は実家へ帰ってしまう人も多かったですし、IT系の仕事で出勤をほとんどせず、出勤したとしても週1回、月何回かという人は郊外へ引っ越してしまったという人も結構います。
自分の患者さんでも結構います。
転院した人もいれば、月何回かこちらへ来るので引き続き通院される患者さんもいます。

・出会いがない
若い人の1年、2年は長いですから、合コンやそういうものがなくなってしまい、どうやって恋人を作ったら良いんだろうということで、少しずつアプリで恋人を探す人が増えました。

・仕事がなくなった
飲食系、航空系など色々ありますが、仕事がなくなって派遣も更新されなくて本当に困ってしまったという人がたくさんいらっしゃいます。

こういう話題が多かったです。

今後の話題

今後の話題、よく話すこととしては、効率性の問題です。
家でやった方が効率が良いのか、出勤した方が効率が良いのかというのは診察室でよく話題になります。
通勤時間が減った分良いな、どちらかというとそういう意見が多いです。

部屋や場所が変わらないので、家でリラックスして良いのか仕事をしたら良いのか分からなくて、ぐじゃぐじゃになって困ってますという人が一定数います。
家だと仕事にならない、気持ちも切り替わらない、という話も結構出てきます。

発達障害の人は、ご飯を食べる場所、仕事をする場所、という風に決めてあげたほうが集中しやすいと言われます。
子どもの治療のときには特にこのことを意識します。
そうしないと今何の時間か分からなくなることも多いので、ASDやADHDの人、特にADHDの人は構造化を意識しないと家では仕事が捗らないということがあります。
ご飯を食べる机と仕事をする机を分けてあげた方がいいよ、という話しはしたりするかなと思います。

あとは不正の問題です。
誰かが悪いことをするのではないか、データを盗むのではないか、そういう話をしたりします。
ただその後に出てくるのは、もし盗もうと思っていたら会社でも盗めます、という話です。
家だろうが職場だろうがセキュリティの観点はあまり変わっていないという話が出てくるのですが、物理的な距離は心理的なものに影響を与えるので、そういうこともあります。

でもこれは将来的な話なのかも、という気はします。
効率性の問題や不正の問題、構造化の問題というのは、将来的にもっと議論される話題かなという気がします。

楽になった

多くの人は楽になったと言います。
精神科の患者さんで、症状が重い人ほどそういう意見が多いかなという気がします。

ストレスが減った、出勤しなくても良い分効率的になった、人と接点が減ったことで仕事に集中できるようになった、余計な嫌味を言われることが減った、パワハラやモラハラが減って良かった、残業時間が今は厳しく見られているので、残業が減って良かった、という人が多いかなと思います。

たまにいるのですが、仕事が増えてしまった、会社へ行くということでサボることができたことが自分の仕事が明確化したことで増えてしまった、かえって頼られる事が増えた、そういうパターンもあります。
ですが、多くの人は会社が残業時間をしっかり管理するようになったので、可視化されたことで楽になった、ということが多いです。

これも「今はそうかもしれません」という風に僕は思っています。
つまり環境が変わってルールが変わったので、経営者やトップは忙しいですが、それを下の人にやらせる、強制力を働かせるまでにはまだ至っていません。

ただ、上の体制がしっかりしてきたら、もっと効率よく働かせるのではないか、とわかります。
そうすると部下の人たちがすごく働かされるようになり、みんながストレスが溜まって、人との接点からトラブルが増えてくるのではと思います。
まだ変わったばかりなので、概ね楽になったということの方が多いかな、という気がします。

対処方法

在宅勤務によるうつでよくあるのが、人と会えない、出会いがないということです。
対処法としては、アプリなどオンライン上のサービスを駆使することで、淋しさを紛らわせるということです。

家にいると落ち着かない、気持ちの切り替えが難しい場合は、家の環境構造を変えてあげるということです。
作業によって机を変えるなどで対処しているというのが、今の臨床で起きていることと対応方法だったりします。
寂しいのと、落ち着かないのでぐじゃぐじゃになってしまうので、家の役割をきちんと考えるということです。

外的構造と内的構造の変化

もう少し抽象的に考えると、外的構造と内的構造の変化が起きたんだな、と思います。

今まで出勤していたけれど家で仕事ができるようになったため、物理的な環境構造が変わりました。
場所と時間の使い方が変わったということです。
外食していたものが出前になった、飲み会がなくなった、通勤していたのが在宅で済むようになった、そういう構造が変わりました。

それに伴って内的な構造、心の中のストーリーや価値観も変わりました。
将来設計も変わったという気がします。

ここら辺がガラリと変わって、この変化についていけない、変化が起きたことによってすごく不安定になっている人たちがたくさんいるということです。

ルールが変わったのです。
生き方のルールが変わったので、変化に対して調子を崩してうつになっている人たちがいる、ということです。
それは外的構造の問題かもしれないし内的構造の問題かもしれませんが、相互に影響しあっているのでうつっぽくなっているということです。

僕自身の経験も含めて考えてみたのですが、僕は子どものとき転勤族でした。
転校をよくしていたので、学校が変わるとやっていた勉強の内容も変わるし、クラスのルールやヒエラルキーも変わったりします。
荒れている学校だと不良っぽい子に気を遣わなければいけないし、すごく平和で仲が良い学校だと凶暴な人たちがおらず「何なんだ、この生温い空気は」とよく分からなくなってしまいます。
それに伴って自分は何なんだろう、と思ったりしました。

最近の話で言うと、高校を出て一年浪人した後に防衛医大に入りました。
自衛隊に入った後に自衛隊を途中で辞めて、民間に出ました。
でも他の大学の人たちと違って医局のようなところには属さなかったので、民間に出てちょっとして開業しました。これもすごく大きな変化です。

自衛隊という外的な構造と内的な構造、自衛隊はガチガチです。
こういう風な働き方をしなければいけない。価値観も自衛隊的な価値観があります。
そこから抜けてくると働き方も変わるし、制服も着なくて良いし、価値観も変わります。
ここら辺もすごく戸惑ったところだと思っています。
お金が大事なのか時間が大事なのかよくわからなくなってきます。

臨床的にも、外来の診療はそれほど変わりませんが、外来の診療にプラスαどうしたら良いのだろうと考えたときに、元々はカウンセリングなどに興味があったので、どうやってカウンセリングをプラスαしていくのか、普通の診察+カウンセリングでどうやったらビジネスとして成立するのか、ということを考えていました。

当院もカウンセリングをやっているのですが、カウンセリングというよりは福祉システムを上手く使った方が良いことも多いです。
実際の外来は働いている人が仕事帰りに寄るのが半分ですが、休職中の人も半分くらい、また働けない人もいます。
そういう人たちは日中の時間の過ごし方をどうしたら良いのかというと、就労支援や生活訓練、自立訓練を利用することで良くなっている人たちがたくさんいるという感じです。
そちらの方が安いし、長い時間ケアしてもらえるので、治療効果が高かったりします。

カウンセリングは自費なので、そこから福祉のものを使うようになったという感じです。
Kaienさんとかリヴァさん、近くだとエンカレッジさん、就労支援は東京はたくさんあるのでそこの人たちに協力してもらうことが増えたという感じです。

そうかと思えば今はYouTubeをやるようになって、YouTubeと診療がミックスになりました。
一番最初は外来の診療+カウンセリングでした。
これにカウンセリングもしくは福祉というのが加わったのですが、福祉のカウンセリングを使えるのは一部の人です。
それで、今は外来の診療+YouTubeという形になり、診察と診察の合間にYouTubeを見るようになって、臨床のあり方が変わったという感じです。

これは何かというと、デバイスです。
インターネットというデバイスが付いたということで、外的構造、臨床の時間の使い方が変わり、治療法が変わったという感じです。

普通の外来の5分診療プラス45分や50分のカウンセリングという外的構造だったのが、精神科の5分外来プラス福祉、週3や週5で通う福祉に変わり、今は普通の5分プラスαの外来に、診察前後にYouTubeを見てもらう時間が増えた、という形に変わりました。
そういう変化があって、僕もすごく戸惑いながらやっています。

新しい生活様式

新しい生活様式にみんな馴染んでいきます。僕も馴染んできています。
ずっと孤独で淋しいと言っている患者さん、2年間ずっと同じような悩みを抱えている人はいません。少しずつ変化しています。

新しい洋服に馴染むような感じです。
これからはこの服を着ようという感じで、患者さんたちは変わっていっている感じです。

新しい生活様式を見つけるまで伴走してきたという感じです。
こういうことは不安だね、僕もそうだね、という話をしていく中、患者さんたちは色々な形で自分に合うやり方、その人なりのやり方、アプリの使い方を覚えたりして、仕事がなくなった人は仕事を見つけたりして、部屋の使い方や家でどうやったら効率良く働けるのかということも見つけ出している感じかなと思います。

僕らがやったのは、これが良い、という答えはないので、伴走しながらその時その時の気持ちを聞いたりして支えているという感じです。

在宅勤務によるうつってどういうものですかという質問があったので、そちらにお答えする形で動画を撮りました。


2022.2.22

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