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独裁者(カリスマ・リーダー)の精神状態を解説します

02:02 メリット
04:55 デメリット
06:21 独裁者の精神状況
12:18 平時と有事

今日は「独裁者(カリスマ・リーダー)の精神状態とはどういうものか」について解説します。

今戦争があるので、某大統領の精神状態をニュースを見ながら語る、ということではありません。
ゴールドウォーター・ルールといって、精神科医は診察したことのない人の精神状態を「これはこういう診断じゃないか?」「この人はこういう精神状態じゃないか?」などと言ってはいけないというルールがあります。
個人情報の観点からも曖昧なことは言えません。

ただ、ニュースにもなっていますし、こういう話題を取り上げることで、人間とはどういうものか、社会はどういうものか、ということを学べるのではないかと思い動画にしました。

実際にクリニックに通院している方で、組織のリーダーである方はいます。親から会社を引き継いだ人もいれば、自分で社長になった人、サラリーマン社長のようなタイプなど色々ですが、リーダーの方がいます。

そういう人たちを診察している中で、彼らの気持ちはどうなのかな、こういうことで困っているんだな、ということはよく考えますし、推測します。

今回はそういう自分の臨床経験も踏まえて、独裁者、リーダーはどういうものか、ということを語ります。

メリット

独裁者というと悪いもののように思いますよね?
カリスマ、トップ、どちらもで良いですが、一人で何でも決めてしまう人って悪い人のように見えませんか?

それは思い込みなのです。
必ずしも民主主義や多数決が常にベストではありません。
その国、その組織の人数や運営状況、政治体制、文化によって、必ずしも民主主義が良いというわけではないのです。多数決で決めるのが良いわけではありません。
チーム制が良いわけではなく、トップダウンで決めていく方が良いことも結構あります。

「民主主義の限界は何人までか」という議論があります。
ギリシャは都市国家だったのですが、都市国家くらいの人数、せいぜい1万人~数万人くらいまでだったら民主主義は成立するのですが、それより大きくなると民主主義は腐敗するのではないか、という研究もされています。

そもそもウチのクリニックのように従業員の数が少なく、5人や10人でやっているところであれば、トップ、僕が決めてしまう、僕が独裁者というか僕が決めています。YouTubeチームもそうです。
当たり前といえば当たり前ですが、みんなで決めようとするとこんがらがることが多かったりします。

三権分立でその問題が解決するのではないかという話もあります。
法律を作る人、法律を使って組織を運営をする人、それを裁く人という風に、内閣、国会、裁判所に権力を分散することを三権分立と言います。
ですが、三権分立は意思決定のスピードが遅くなります。
それよりは一人でパパッと決めていく方がスピードが速くすぐ動けるので、良かったりします。

予め決められている方が競争や裏切りが少ないという研究もあります。
世襲制は世襲制の良さがあるのです。
次の社長は誰だ?とみんなが、俺だ、俺だ、と闘ったり競争したり裏切りがあったりすると安定しません。
「トップはこの人」と決まっていた方が、変な争いや足の引っ張りあいがないので落ち着くということもあります。
ですから、独裁者が必ず悪いというわけではありません。

デメリット

では、独裁者の悪いところ、カリスマ・リーダーの悪いところは何かというと「トップの心身の状態に左右される」ということがあります。

トップが優れていれば問題はありませんが、人間なので優れた状態を維持することは不可能です。
完璧な人間はおらず、仮にいたとしても一瞬のことです。
長く完璧でいること、優秀な存在でいることはできません。

こういうデメリットとともに、完璧な人、カリスマがいることによって次の世代に引き渡すリーダーの引き継ぎが難しいという問題もあります。
この問題は難しいです。

そう考えてみると、MicrosoftをはじめGAFAMと呼ばれる企業(Google、Apple、FaceBook、Amazon、Microsoft)はトップを上手く引き継ぎました。
リーダーの引き継ぎはとても難しいので、本当にこう、うーんと思ったりします。

これらが独裁者というかカリスマ・モデルのメリットとデメリットです。
では、その本人はどういう状況なのでしょうか。
精神科医らしい話をしようと思います。

独裁者の精神状況

皆さんのご想像の通り、独裁者はすごいストレスとプレッシャーを感じています。

一人で判断、決断をしなくてはならず、批判も一人で浴びなければいけません。責任があります。
○○の組織が悪い、ではなく、そのリーダー個人が悪い、となります。

でも、いくら独裁者であっても一人で決めることはないので、上位層みんなで決めています。
ですが、その一人が決めているかのような感じで、周りの人も「最終決定はあの人がしてるから」という投げやりな感じがあったりします。

とにかくすごいストレスとプレッシャーを感じています。
そのため老化が早い、うつになりやすい、ドラッグやアルコールや性の依存症になるなどの問題を抱えやすいです。
外来では、うつになったり依存症で来る人を結構見ます。
本当に一人の決断で色々なことが決まってしまうし、誰かの人生を壊してしまうこともあるので、すごいプレッシャーですよね。

老化の問題については、高齢者にならないとリーダーになれないという今の社会の問題もあります。
リーダーになろうとしても上がつっかえているし、若くしてリーダーになれなかったりします。
高齢者であることがいけないわけではありませんが、認知症のリスクがあります。
また、決断していく精神力的な体力が弱かったりします。
知恵も人格もあるが体力がない、という問題もあったりします。

これからは人類はどんどん高齢化していくので、トップが高齢者になる国がたくさん出てきます。
そうすると認知症リスクの問題等が出てくるんだろうなと思います。
人類はそうしたことを経験したことがないので、これからの歴史の中で問題になるのかな、と思います。

「マキャベリズム」ということがあります。
共感力がありすぎてはいけません。

トップは良くも悪くも部下たち、人民を駒のように扱わないといけません。
いちいち共感していたら冷静な判断ができないからです。
だから取るところは取って、取れないところは取らないということをします。
それはある意味では必要悪だったりします。

優しいだけではいけないので悪知恵も働かせないといけないのですが、そうすると周りの人もそういう人が集まり、食う食われるの社会になってしまいます。

その中で勝ち抜くと、今度は周りはイエスマンしかいなくなり、都合の良い情報しか耳に入らなくなり、すごく孤独を感じるということもあったりします。
実際のところは皆はどう考えているのだろう、というところが気になります。
周りの人は家族でさえ本音は言わなくなり、孤独を感じます。

こんな苦しい不安をどうやって乗り越えるのか。
こういうプレッシャーをどう乗り越えるか。

ナルシシズム、自己愛、自分は優れている、自分はそれだけの能力があるからやっている、という根拠が欲しくなります。
ただの運だった、ただ親から会社を引き継いだだけ、ということだと不安で潰されるので、何か自分を固めるものが必要になります。
ブランド物やお金でも良いし、肩書きでも良いし、ナルシシズムを固める何かが必要になり、周りの人からは滑稽に見えることもあります。
ナルシシズムの強化が必要になります。

自分のことをすごいと思ってもらえなくても構いません、裸の王様でも構いません、となるかもしれません。
それで組織が上手く回るのなら良いですよ、となるかもしれませんが、ナルシシズムは麻薬です。

そのうちに組織より自分の身が可愛くなってくる。大きな問題を克服したり解決するよりも自分のナルシシズム、自分の決断を守ることにエネルギーを注ぐようになります。
本来の大義よりも、自分のナルシシズムを守ることにエネルギーを注ぐようになります。どんどん歪んでいきます。
10年、20年トップをやっていると変わっていってしまいます。

プレッシャーに適応するために脳の構造が変わっていきます。
チューニング、忘却、プルーニングしていき、使わない部分は無くして使う部分は強化していくので変わってしまいます。
変わるので、老化という認知症化していく。
疲れてしまい、摩耗して認知症化してうつになることもあれば、歪んだパーソナリティの方に変わってしまうこともあります。

平時と有事

平時と有事だとリーダーのあり方が違います。

平時であれば、人の意見を聞く人の方が良いのですが、有事のときには相手の裏をかかねばならないので、他の人が想像できないことをやらないと勝負には勝てません。
平時と有事ではリーダーの考え方は変わります。

それを普通の人は分からないことが多いのではないかと思います。
だからリーダーは孤独を感じることが多いのではと思います。

外来でこういうリーダーの人が来たときには、どうやったら共感できるのか。ただ頷くだけではイエスマンで共感にはならないので、精神科医としてその人たちときちんと対等に、その人たちの心を癒すためには、ひとつ上のレベルで、リーダーの気付いていないリーダーの苦しみをわかってあげる必要があります。

自分はリーダーにはならない、批判をするのが役割だと思うかもしれませんが、批判は思考の放棄です。批判だけしていても仕方がありません。
その背景にあるもの、この場合はどうしたら良いのかという代替案を一緒に考えるなどが重要だと思います。

今回は、独裁者の精神状態はどういうものか、どういう危険性があるのか、について解説しました。

この間本を読んだら、歴代の大統領の半分くらいは精神疾患に該当している、ということが書いてありました。
リーダーのうつや認知症の問題は危険です。


2022.3.5

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