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困っていないように見える、攻撃的な発達障害の治療

01:04 発達障害とは
02:38 日常でのトラブルと怒り
06:38 依存
09:43 困っていない人
16:06 治療

本日は、発達障害の治療の全体像を語ります。

発達障害にはいろいろなパターンの人がいます。
怒りっぽい人もいれば大人しい人もいます。
その中でも今回は「あまり困っているように見えない人」、「攻撃的な発達障害の人」について語ってみようと思います。

ホワイトボードはこのようになっています。
黒字:基本のアウトライン
赤字:注釈
青字:治療+α

黒、赤、青の順でお話しします。

発達障害とは

発達障害は、主に3つの病気から構成されています。
・ASD(自閉スペクトラム症)
・ADHD(注意欠如・多動症)
・LD(学習障害)

知的な能力に凹凸があり、その凹凸の形に合わせてLD、ASD、ADHDと分けます。

また、ASDとADHDは両者の要素を併せ持っていることが多いです。
ASDは診断基準を満たし、ADHDはグレーゾーン。
逆に、ASDはほとんどないけれど少しあり、ADHDは診断基準を満たすなど、いろいろなパターンがあります。

僕は診察のときには、両方あるという話で進めていくことが多いです。
それはなぜかと言うと、ASDの要素はほとんどないけれど、困っているのはASDの部分ということがあります。
逆にADHDの要素は少ないけれど、困っているのはミスの多さ、といったこともあります。
診断基準を満たしているかいないかが本人の困りごとと相関しないので、僕は両方合わせて説明することが多いです。

日常でのトラブルと怒り

ASD/ADHDの要素があると、日常の中で結構トラブルが起きやすいです。

ASD的な要素ではコミュニケーションが苦手だったり、感覚過敏があってうるさいところが苦手だったり、マルチタスクが苦手だったりします。
ADHD的な要素で、ミスが多い、そそっかしい、落ち着きがない、衝動的に人に変なことを言ってしまう、といったことでトラブルが起きます。

トラブルが起きると、怒ってしまう人が結構います。
自分が悪いと思うよりは「相手が悪いのだ」と思う。
「これはそういうものを作った方が悪いんだ」、忘れ物をした時には「こんなところで宿題をしろと言う奴が悪いんだ」「片付けられないのはあんたが悪いんだ」と怒ってしまう人がいます。

なぜ怒りっぽいかと言うと、何かの出来事があったときに、過去の記憶を思い出しながら人はいろいろなことを判断するからです。
記憶の中では両親が喧嘩をしていて、嫌なことがあると喧嘩をするものなんだ、怒るものなのだという刷り込み、学習があることもあります。
実際に子どもの頃に親から虐待を受けていた、いじめられていた、誤解を受けていたということもあります。
やられたのでやり返さなければいけない、それを取り込んでしまったパターンで、相手に対して怒りを持って対応しないと自分がやられてしまうのではないかと考えてしまうことがあります。

実際、自分のことを悪いと思うのは結構難しいです。
人間の原始的な要素としては、怒るとか人のせいにするというのが基本です。
反省している猫や反省している犬は見たことがないですよね。反省しているインコとか見たことありません。
だいたい「フーッ!」っと怒っています。
ですから、怒るというのは変なことではなく普通なのです。

では実際に怒る人や攻撃的な人は多いのかというと、「素行障害」や「反社会性パーソナリティ障害」と呼ばれている人たちは社会生活を送りにくい、問題を起こしやすいことがありますが、これはまた別の疾患です。
発達障害の人でこれらの障害を合併している人、あるいは近い人は結構います。
定型発達の人の中で素行障害や反社会性パーソナリティ障害の人がいる割合よりも、発達障害の人でこの2つの疾患を合併している人の割合の方がはるかに高いです。
だから関連性があるということです。

何かそういうトラブルがあったりした時に過去の記憶と混ざって、今どういう状態なのかと思って感情が吹き出るのですが、この時に怒りに支配されてしまい、同時に感じるであろう「不安感」や「悲しみ」は妙に分離されてしまっていることがあります。

僕らは何か嫌なことがあったり誤解されたり意地悪をされたりしたときに、怒りを感じるとともに不安になったり悲しんだり、一見相反するように見える感情を同時に味わったりします。
ですがそうではなく、怒りだけを味わって反対側は感じない、分離されて無視されていることが結構あります。

依存

怒りや悲しみや不安によるストレスを解消するために、依存行為に走ることが多くあります。
定型の人よりも発達障害の人は何か分離されてしまい、自分の感情や人格が別々に分かれてしまっていてどこかに逃げ込みがちです。
アルコール、ギャンブル、ゲーム、スマホなど、何かの世界に依存してしまうことがあります。

依存すると脳の報酬系と言われるところが刺激され、はまってしまいます。
はまると後から振り返って自己嫌悪になったり、アルコールを飲んでいてトラブルになったりします。ギャンブルも借金などのトラブルの元です。スマホもずっといじっていると宿題ができなかったり仕事に支障が出たりします。そうするとまた困ります。

ですが、困れば困るほどまた依存行為をしたくなります。
楽だからです、結局。

「あー、もうやだ、お酒飲みたい」となってお酒を飲んでしまい、自己嫌悪になり、ミスも増えてトラブルが続き、また依存するという負のサイクルが続きます。

発達障害の人と依存症というのは結構関係しあいます。
発達障害の人の方が我慢がしにくいのです。ADHDがあると衝動的で我慢がしにくいです。
普通の人が我慢をするよりもはるかに、お酒やギャンブル、性、スマホなど我慢しにくいのです。衝動的に手が出てしまいます。
そのため、ますますこの負のループに入ってしまいます。

トラブルが続けば続くほどまた焦って、ADHDの症状が強く出てきます。
例えば新社会人など新しい環境に行くと、普段だったらしないようなミスが増えていきます。
だから「私は発達障害でしょうか」と言って診察に来る人が増えます。

ストレスや何かのトラブルがあると発達障害の症状は悪化しますし、悪化するからこそトラブルが増えますし、怒ったりすることもある、という負のサイクルが生まれます。
そしてもう一つ依存症のサイクルが活性化してしまいます。

精神科の病気はいろいろなものが絡み合っていて、どこを治せば良いというわけではありません。
全体を見て全体から少しずつサイクルを止めてあげる、1つずつ治療していくことが重要です。

困っていない人

困っていない人というのは「怒っている人」です。

自分が悪いというよりは誰かが悪いのではないか、何かが悪いのではないかと思っているので困っていないタイプです。

その怒りというのは外に放出されています。
ですから、攻撃を受けている側の奥さんだったり家族は困っていますが、本人は困っていないタイプです。
依存などがあり困っているのですが、その困り感は自覚していません。

困っていないのに精神科に来ることはあるのか、家族が無理矢理連れてくるのかというと、まだまだ発達障害は一般的ではないので、家族が連れてくるというパターンはそれほど多くはありません。

実際どういうことで精神科に来ることが多いかと言うと、「依存症」の問題として家族に連れて来られることが多いです。
アルコール依存で困っている、買い物依存で困っている、クレプトマニア(万引き依存)で困っている、と言って来ますが、診察してみると発達障害だったということはよくあります。

・だまされる

だまされてしまうパターンも多いです。
負のサイクルに入っているので、だまされ放題になっていることが結構あります。

依存症になると思考力が低下し、どんどん正常な判断ができなくなっていきます。
皆さんもスマホをいじっていて、もうやめなければいけないと思えば思うほどやめられないということはありませんか?
僕も夜中にTikTokを見ていて3時間ぐらい経っていたことがあります。
それと同じで依存のサイクルがひどい時はやめにくいです。

・抱えられない

発達障害の人の特徴として、不安な気持ちや自分のネガティブな気持ちを抱えられない、という状態があります。
ぐっと我慢する、ぐっと堪えて、その嫌な気持ちを味わい続ける時間というのはあるものですし、それは人間の成長のために必要なことですが、抱えることができずにすぐ放り出してしまいます。

怒りとして放り出す、考えたくないから逃げるように依存行為に走る。お酒を飲みに行ったり、ギャンブルをしたりすることもあります。

・非認知能力の発達阻害

そもそもなぜ素行障害や反社会性パーソナリティ障害のようなものを合併しやすいのかというと、発達障害特有の「共感性の欠如」が関与していたり、物事を理解するときに表面的な理解にとどまってしまうことが多いです。
AとBをくっつける、CとDをくっつける、過去の歴史とくっつける、といった立体的な考え方や相互的に考えることが苦手で、字面だけで理解してしまうことが多いからだと言われています。

一回嘘をついてしまうと、それに味をしめて嘘をつき続けてしまうのも発達障害の人で時々あるパターンです。
短絡的というか中長期的な物の見方が苦手で、ついつい嘘をついてしまう。衝動的に嘘をついてしまう。そういうことがあります。

これらの特徴があるので、いわゆる「非認知能力」が発達していくのが抑えられてしまいます。
非認知能力とは、学力やWAISなどの知能検査で出てこない力です。いわゆるEQというものです。
他人の気持ちを思いやったり、誠実であったり、諦めないこと、楽観的に人生を捉えていく、ポジティブなものとして捉えていく、優しい、などいわゆるそういった能力も育ちにくくなってしまうことがあります。

こういったことが、困っていない発達障害の人の特徴だったり、起きている現象だったりします。

・不安、悲しみ

トラブルでストレスがかかると、不安や悲しみを感じているようなところが分離して排除されてしまうので、不安や悲しみが小さくなっていきます。
普段だったら悲しみや不安を感じたり、表現できるのに、追い詰められれば追いつめられるほどその部分が小さくなります。

そのために、見ている側としては不安な表情や悲しみを言葉にすることがないから困っていないように見えて、怒りだけが目立ってしまうので「攻撃的な奴だ」と誤解されてしまうことがあります。

バーっと話しましたが、繋がっているということはわかりますよね。
怒りについても、結局は子供の時の記憶や今まで受けていたことでそういう風に思わざるを得なかった、悪い人にだまされた。
お酒やスマホについても、人を依存させるように作られていますから、こういうものについつい引っかかってしまうということがあります。

治療

では治療はどうしていくのが良いかと言うと、ADHDの不注意や多動性に対しては薬物治療が有効です。
ここは薬物治療をしっかり効かせましょう、ということです。

メインは依存症だとしても、ADHDの症状が関与していると判断したのであれば、薬物治療をするというのは結構良いのではないかと思います。
それはなぜかと言うと、薬は飲むだけで済むからです。それだけで全体の悪いサイクルを少し緩和してくれるのであれば、積極的に使うのが大事ではないかと思います。

もちろん副作用の問題など言われそうですが、これだけぐちゃぐちゃになっていると、どんどん自信を失ってしまいますし嫌な記憶ばかりが溜まっていきます。誤解も受けます。
ですから少しでも早く症状が軽くなってくれた方が、本人にとって本当に楽だと思います。ですから薬は使った方が良いです。

薬は、コンサータ、ストラテラ、インチュニブの3つがありますが、どれを使っても良いかなと思います。
あまりにも激しくて攻撃的であった場合は、インチュニブが攻撃性を抑えるためには合っているかなと思います。
もちろん、ストラテラ(アトモキセチン)で前頭葉の合理的な部分を強めることも大事ですし、コンサータで集中力をアップすることで、感情に流されないという力を高めることも良いと思います。
それは患者さんに合わせて使います。

後はトラブルが多くなりやすいので、そもそも苦手なことを減らしてあげるというのがとても重要です。
SST(生活技能訓練)やCBT(認知行動療法)も有効です。そうすることでそもそものトラブルが減ります。

トラブルを減らすためには合理的配慮も大事です。
周りの人にアナウンスをする、本人が困らないような環境を作ってあげる、といったことが大事です。

・自尊心の回復

ポイントは「自尊心」です。
周りの人に言うときに、「お前は障害者なんだから」みたいな感じでやると、自尊心が傷つきます。そこはいろいろ考えなければいけません。

子どもの頃のことや最近の嫌なことで、すごく傷ついています。
その思いをきちんと受け止めて、自分たちができることは何かと一緒に考えていくことも重要です。

困っていないように見えたり攻撃的に見えるので、過去のことをつい忘れがちです。
本人もプライドがあるので語りません。過去の嫌なことを語るのは恥だと思って語らないのですが、それはあるものだと思って接しなければいけません。
治療が進むとこういった話題は出てきます。その時のために信頼関係を作っておくことが重要です。

・コーチング

発達障害の人の治療と言うことなので、コーチング的なもの、常識を補うようなこと、人はこういう時にこんなことを思うんだよ、相手はこういうことを思ったんだよ、あの時あなたはもしかしたら怒っていたのではなくて悲しんでいたのかもしれないねなど、「人間はこういう時にこういうことを思うものだ」という感情の教育も重要です。

・アンガーマネジメント

怒りを感じたときにどうすれば良いのか、深呼吸をする、マインドフルネスのようなことをする、そのようなアンガーマネジメントのスキルを身に付けてもらうのも良いのではないかと思います。

とにかく、この全体像からわかるように、いろいろなことをやらなければなりません。
薬物治療もすれば、SSTやCBTもしますし、合理的な配慮もしますし、トラウマのケアもします。そもそも人間とはどのようなものかを教えたり、アンガーマネジメントのスキルを身につけたり、気持ちを労ったり、依存症関係のことをしたり、だまされているのであればそこのケアをしたりもします。

結構、難しいですね。
いろいろなことをやらなければいけないので難しいのですが、ここだけをやれば治るというものではないので、全体的な視点を持って治療していくことが大事です。


2022.4.21

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