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精神科医は裸の王様? 正しく評価する難しさ

01:11 治療成績がわかりにくい
05:59 クチコミ
10:51 玉石混交
13:09 タブーとは?

本日は「精神科医は裸の王様か?」というテーマでお話しようと思います。

精神科医に限らず、心理士さんもカウンセラーもそうだと思います。
そもそも会社のリーダーだって、どんな人だって裸の王様になり得るのですが、特に精神科医というのは裸の王様になりやすいので、そのことをお話ししようかなと思います。

益田自身もやはり「裸の王様」になりやすいですし、危険だなと常に思っています。
ちゃんとやっているのかな、変なことをやっていないだろうか、人の意見を無視しているのではないか、僕も結構わがままというか猪突猛進みたいなところがありますから、本当にいつも考えるようにしています。

治療成績がわかりにくい

どうして精神科医は裸の王様なのか、ということをお話しします。

まず治療の成績が客観的にわかりにくいです。
今自分がやっている仕事の成果がわかったり、成績がわかれば、これは良くないんだなと自分で修正していけますし、他人からも指摘してもらいやすいです。
ですが、実際はなかなか指摘しにくいです。
それはなぜかというと、「成績がよくわからない」というのがあります。

まず患者さんごとに全然治療が違います。
治療も違うし、治療の予後も結構違います。

同じうつ病であっても、その人の社会的な背景、独身なのか家族がいるのか、男性か女性か、自分で料理を作るのがもともとできるのか、毎晩居酒屋に行ってお酒を飲みながらご飯を食べる人なのか、それによって治り方が違います。

あとは資質です。
本人のメタ認知の能力、もともと持っている能力、体力の問題。
非認知能力と呼ばれる、我慢強さ、優しさ、楽観性、いろいろな要素が関わってくるので、同じような治療をしていてもその差は出ます。
だから良い治療だったのかどうかは、実際よくわからないことは結構あります。

・結果が出るまでに時間がかかる
治療の結果が出てくるまで時間がかかります。
オペだったらわかりやすいですよね。
翌日、翌々日にはもう結果が出ます。

ただ精神科の場合は、治療の結果が出るのは半年、1年後です。
差がしっかり出てくるまで時間がかかるので、わかりにくいのかなと思います。

では精神科の治療はエビデンスはないんですかと言うと、なくはないです。
なくはないというか、ちゃんとあります。

薬物治療のエビデンスや精神療法のエビデンスもありますし、それに基づいてやろうとするのですが、なかなか…研究をしていたことがある人はわかると思うのですが、やはりサンプルデータの取り方や個人差など、時間がかかるものは取りにくかったりするので、やはり目の前にある臨床への応用、エビデンスを反映させているかというのは「?」がつくのは仕方ありません。

もちろんその中でもより高いエビデンスのあることをやろうということはあるのですが、どうしても臨床実感とのちょっとした乖離はあるのかなと思います。

・権威主義になりやすい
その結果、権威主義になりやすいです。
自分の思い込みでやってはいけない。かといって科学的なデータも出にくいとなると、上の先輩や名医とされている先生の言っている通りにやった方が良いのではないかということになるわけです。
そうと言えばそうです。

確かに自分の思い込みでやるよりは、先輩や周りの人がやっている通りにやった方が良いこともあるのですが、それは権威主義になりがちです。
本当にそれが正しいのか正しくないのかわからないけれどやっている、ということになりがちです。

それは宗教的な要素や占い、文化の要素と似ています。
なぜかわからないけれど朝は太陽に祈ってから、手を水で清めてご飯を食べた方が食中毒になりにくいとなったときに、どれが食中毒にならない要素かわからなくなってしまうわけです。
でも皆が祈っている。だから祈りというこの行為の方が権威的に脚色されてしまい、手洗いの時間がないがしろになってしまうとかそういうことはあります。
精神医学もそういう風になり得るので、ここは結構気にしなければいけません。
けれども権威主義になりがちです。

患者さん自身も弱っているときには何を信じていいかわからなくなるので、結局、権威主義になりがちです。
だから宣伝がうまいものや権威があるものにすがりがちです。
自分で考えてこれが自分の治療に必要なんだとか、家族が患者さんのためを思って、本人はこういう性格だからこういう治療があっているのではないか、という風に考えていくことがなかなか難しくなっているのはやはりあるなと思います。

だからなぜ裸の王様かというと、治療成績で評価をしにくいからですね。

クチコミ

次にクチコミの問題があります。
例えば、良いラーメンはどうやったらわかるのかというと、いっぱい売れたラーメンが良いラーメンとは言い難いです。

いっぱい売れたラーメンというのは治療成績に関わるわけで、じゃあ良いラーメンとは何かというと「評判が良いラーメン」です。
食べログランキングが良い、食通の人たちが良いと思ったものなど、クチコミによって評価できるという考え方もあります。

ただ、精神科のクチコミというのは信用しない方が良いことがあります。
僕もクチコミ1が多いですが、それは自己弁護の問題ではなく、単純に良い先生や良い病院でもクチコミはすごく悪くなることが多いです。

それから、誹謗中傷の問題があります。
精神科の中で誹謗中傷をどう扱うのかというのも結構難しい問題だと僕は思います。
僕はもう慣れましたが、開業した当初はクチコミ1をつけられてすごくショックでした。反省もしましたけど、でも嫌でしたし、YouTubeも同じような感じですごく傷つきますね。

この誹謗中傷にすべての精神科医が耐えられるとは僕は思いません。
もちろん、10年、20年経って、デジタルネイティブの人たちが精神科医になった時にはまた変わるとは思いますが。
でも今やっている精神科の先生、自分が若いときにはそういうSNSやインターネットに慣れ親しんでいなかった先生たちは、誹謗中傷に耐えられる人はそんなに多くいないだろうなと僕は思います。
これは結構傷つきますね。

あとは、批判コメントもあった方が良いだろうというのはあります。
良いコメントだけ残すと裸の王様になってしまうのではないかという意見もあると思います。ちゃんとダメなものはダメと言った方が良いだろうということもありますが、一方で、僕もYouTubeをやったりとか、クチコミのこととか色々勉強したり、実際に患者さんがクチコミとか誹謗中傷でうつになっている人がいて、そういう人たちとのやりとりで勉強してわかったことですが、コントロールをしないと荒れてしまいます。

YouTuberの会といって、YouTubeをやっている精神科医や心理士さんが集まってSlackで議論をしている会があるのですが、そこでも炎上についてみんなで話したことあります。
とにかくこれはコントロールしないと荒れます。

ちょっと悪口を残しているとそれに対して集まってきてしまい、どんどん炎上してしまうこともあるのでコントロールしないといけない。
もちろん、反対意見はあってしかるべきだし、批判もあってしかるべきだと思います。
僕は自分の目で見える範囲は全部正しくしようとしているし、精神医学に対して、絶対間違ってはいけないし、ガイドラインを遵守しなければいけない。

僕は動画を撮るときに特に気にしているのは、特定の流派に寄らないようにしています。
精神分析、認知行動療法、森田療法などいろいろありますが、どれかを好んでやる言い方をするのはやめようと思っていて、できるだけ現場の臨床感覚とか、日本全国のスタンダードな精神科医がやっていることを全体的に言えるような動画を撮りたいと思っています。

ですが、やはり間違っていることはあると思います。
その間違いを許さないわけではありませんが、それを残してしまうと今度は本当にぐちゃぐちゃになってしまいます。
だから結果的にコメント欄も、僕を称えるようなコメントが多くなりすぎて裸の王様感みたいなものがあって、不安に思う人も多いのではないかなと思います。
でもそういう問題があります。

それからクチコミの問題で言うと、結構、内部犯が多いですね。
精神科の場合は、実際の患者さん以外にもスタッフの人とか多かったりします。

玉石混交

ではSNSや情報発信をしている先生を信用できるのか、という問題もあります。
発信することで裸の王様を防げるのではないかとか、そういう先生は信用できるのかと思うかもしれないですね。

例えば、「益田先生は信用できますよね。なぜなら情報発信してくれてるから」と。
確かに発信しないよりはした方が良いと思います。
僕も患者さんのためにやっているし、アウトプットをすることで自分の勉強にもなるので意味があると思ってやっています。
ですが、SNSは質より量の問題なんですね。
量をたくさん出せば出すほどそれが見られやすいので、本当に良いのかというのはよく思います。玉石混交です。

僕もそうならないように気を付けようと思っていますが、正しいことも言っているけれど、ちょこちょこ間違っていることや、ちょこちょこタブーを冒していることを発信してる人たちもいます。
だから何か否定しにくいのです。
全部間違ったことだけ言っていたら批判しやすいのですが、ちょこちょこあるだけだと本当に困ってしまうというのがありますね。
でも量が多いから紛れてしまう。
そういうのは結構あるなと思います。

YouTubeを始める前、2年ぐらい前は、別に悪いわけではなく当事者の方がYouTubeをやられていることが多くありました。
そうすると、患者さんから「当事者のこの人がこういうことを言ってたのですが、本当にそうですか」「こういう薬の使い方は合ってるんですか」というこを聞かれ、それを訂正するところから治療が始まっていました。
訂正するところから治療が始まると本当に大変で、それでどうしたら良いんだろうと思って自分で始めたところがあります。

でも、今度は僕が他のドクターの迷惑になっているのではないかというのは毎日思います。
プレッシャーです。でもできるだけそうならないように頑張っているという感じです。

タブーとは?

裸の王様について語りましたが、ではタブーとは何なんだろう、逆に真っ暗な奴は誰?ということです。
精神科医でダメなものを4つ挙げます。

・高額商品、アフィリエイト
1つは高額商品を売りつける人です。サプリや特殊な壺など。高額商品を売るというのは良くないですね。
それから、最近あるのはアフィリエイトです。これは危険だと思うので気をつけてください。

人材を斡旋するような広告を入れるとか、そういう内容にするということです。
これは結構皆さん知らないと思いますが、人材紹介を使うと会社は紹介してもらった人の年収の3分の1ぐらいを人材派遣会社に払います。
ですから、人材紹介は儲かるのです。

そして1年あるいは2年以内は違約金があります。その期間を過ぎてから、もう1回転職するとまたお金が入る。
1回転職した人の中で、転職依存みたいになってしまう人がいます。

だから転職しそうな人にどんどん広告を出して転職してもらって、また1、2年経ったら転職の広告を流すというのがあります。
それのYouTube版が出てきているという噂があってちょっと危険ですね。

本当にそういうものに引っかかってしまっている人が時々いますから、こういうものは気をつけてください。
商品を売っていなくても、アフィリエイトという形で誘導してくる人もいます。

また、高いものは何かというと、サプリだったり栄養療法ですね。
rTMSも基本的には適用の範囲は低いです。うつ病の一部だけです。
何でもかんでもrTMSをやった方が良いんじゃないのとか、過度に値段が高いのは良くないですね。

脳波で診断がつくというのもあまり良くありません。つかないですから。
では心理検査で診断がつくかというと、それもちょっと違います。
診断というのは、心理検査をせず普通に問診だけでいけるものです。
心理検査があった方が補助的には良いのですが、心理検査がないから嘘というわけでもないですし、心理検査をやれば良いというわけでもありません。
ここは結構お金が絡みます。

あとは高いカウンセリングとかセミナーとか。
rTMSもカウンセリングもそうですが、僕は好きですよ。rTMSも別に嫌いではないし、カウンセリングも勉強するのは好きですし、効果があると思っています。
ただ、すごくあるわけではありません。

効果が限定的だったりするというのもあるので、患者さんを見てカウンセリング適応なのか適応ではないのか、カウンセリングよりも今やるべきことはあるのではないか、それがその人のお金の無駄にならないのかというのは結構重要です。
セミナーも同じかなと思います。

・恋愛
タブーとしては恋愛の強要です。
性的な関係になってしまうなど。

・不勉強
それから、医者が勉強しないんですね。
不勉強な医者というのもタブーというか、ダメな例です。

・おせっかい、スピリチュアル
あとはおせっかいな人です。
勉強はしているのですが、お節介な勉強をしている人ですね。スピリチュアルなことをやったりとか。
スピリチュアルがダメというわけではありませんが、医学的に正しくないことを熱心にやっているパターンもあるのかなと思います。
しかも悪意がなかったりします。

ここら辺の問題は、自分が悪いなと思いながらやっているのかというと、案外そうでないことも多いです。
案外というか、たぶん自分が悪いと思わずにやっている人の方が多いと思います。
普通に診療をやった方が儲かります。こういう特殊なことをしない方が良いわけです。
僕もそうです。
YouTubeをやらない方が労働時間に対する収益は絶対に高いのですが、やっています。
良いと思ってやっていたりするから、結構厄介です。でも気をつけなきゃいけないよと。
皆さんには知っておいてほしいなと思ってお話ししました。

あとは、調子が悪いときには大きな決断をしないというのが重要です。

僕のYouTubeの合間にも広告が出てくるみたいですね。占いとか転職の広告が出てくると思います。
僕が広告を選んでいるわけではなく、YouTube側が広告を選んでいるのですが、こういうのは気をつけてください。
そういう意味でも今回動画を撮りました。

精神科医は信用ならないと思う人が多いと思います。それはよくわかります。
それは構造的な問題だったりもして、できるだけ誠実でありたいと思います。

僕らもたった一回の人生を精神科医として患者さんに捧げると決めているわけです。
たった一回の人生をそれにしようとしているわけですから、やはり誠実というか、ちゃんとやりたいというのがあります。

ただ、なかなか構造的な困難さがあったりして、裸の王様になりがちだったりします。
だからそうならないように、YouTuberの会だったり、開業医の会など、いろいろな人に見てもらいながら調整して、裸の王様にならないように頑張っているということですね。

今回は、精神科医は裸の王様かというテーマでお話しました。


2022.4.26

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