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記憶と学習。どうやって性格ができあがるのか? 脳科学の初歩

00:38 脳について
01:25 チューニングとプルーニング
06:07 上手くチューニングするには
07:27 プルーニングされるとき
08:16 脳の配線はどう決まる?

本日は、記憶と学習、そして、どうやって人格、性格や認知の歪みが生まれるのか、ということをテーマにお話します。

脳科学の中で患者さんが知った方が良いこと、一般の方が知っていた方が良いことを軽くまとめて解説します。

脳について

脳は神経細胞の集まりです。
小さい神経細胞がたくさんあります。
それがいくつも繋がってネットワークを作っているのが脳です。

神経細胞は核があり、ブワーッと手が伸びています。
一つの神経細胞から次の神経細胞へ化学物質を送ることで動かしています。

神経細胞の間は電気がビビビと走ります。
「あ、こういう情報が来たね」と次の化学物質を出し、別の神経細胞へ情報を送るということをやっています
複雑なネットワークができているということです。

チューニングとプルーニング

その中で記憶と学習は何かというと、「チューニング」と「プルーニング」で説明されます。

チューニングとは「良く使う大事な情報は強化される」ということです。
プルーニングは逆で「忘れて整理される」ということです。

最初に情報が入ってくるときは全部繋がっています。
例えばラーメンを食べに行ったとしたら、「ラーメンを食べに行った、それは高田馬場だった、歩いている途中におじさんがいた、値段はいくらだった、美味しかった、ネギが入っていた、途中で犬がワンと吠えた…」という情報が全部入っています。

「高田馬場のラーメン」と思い出そうとしても余計なことまで思い出してしまいます。犬が吠えた、とか。
でもそんなことは必要のない情報です。
だから大事な情報以外は削がれます。

高田馬場、ラーメン、美味い、ネギは入っている、値段はいくら… でも途中で思い出してくると、犬が吠えたから女性は怖いかもしれないね、という風に情報が整理されます。

最初はグジャグジャとなっていて、「犬が吠えた、あ、高田馬場のラーメン」と変なことを思い出したりしますが、プルーニングによって整理されるということです。

これだけ聞くとわかりにくいかもしれないですが、そういうことは実社会でもありますよね。
余計なサービスは削れてシンプルになっていくとか、シンプルになったと思ったら新しく加わるとか。

路線図もそうだと思います。
バスや地下鉄はたくさんあった方が便利ですが、コストがかかります。
お金もかかるし維持費もかかるので、主要な路線だけ残そうということに似ています。
飛行機もめちゃくちゃ飛ぶのではなく、ハブ空港があって、東京からロンドンだとそれほど本数が必要ないので、東京から香港、香港からロンドンという風に整理されていくということです。

そういう風に聞くと、いろいろなことが患者さんの頭の中に思い浮かぶと思います。
「私が何でもかんでもトラウマを思い出してしまうのは、すごい太い線になっているからなんだな」
「男の人を見ると怖くなってしまうのは、男の人を見ると毎回毎回、過去の性的虐待を思い出してしまうからなんだ」

パニックの人もそうです。
職場に行くと気持ち悪くなるのは、職場から連想して電車に乗ると気持ち悪くなる、駅に行くだけでも気持ち悪くなる、その連想の幅が広がってしまう。
プルーニングが上手く行っていないケースだったりします。

逆に、妙に職場でのパワハラを忘れて気持ち悪い感覚だけが残っており、「なぜかよく分からないが電車に乗ると怖いです」という形で変に配線ができてしまうこともあったりするかなと思います。

治療としては正しいプルーニングとチューニングをやっていく、ということが大事です。

電車が怖いのではなく、怖いのは職場だった。
職場が怖いのではなく、長時間残業とパワハラ上司が怖かった。
怖いものはコレで電車は怖くない、ときちんとチューニングとプルーニングをし直してあげると、パニック障害は良くなります。

トラウマも、グジャグジャとなっているので、整理して、怖かったのはかつての弱いあなた、弱くて誰にも頼ることができず助けてと言えなかったあなただから苦しんだ。
だけど今のあなたは違う。
今のあなたはちゃんと助けてと言えるし、怖い大人からも逃げることができる。
その人を信用しないこともできると言うと、チューニングとプルーニングができて、くっついていたものが分かれ、日常生活はしやすくなります。
新しい男性と恋愛もしやすくなります。

チューニングとプルーニングをしっかり理解することが大事です。

上手くチューニングするには

では、上手くチューニングするにはどうしたら良いでしょうか。
治療者からの言葉が患者さんの心に残っていくには、感情をきちんと刺激してあげることが大事です。

勉強と一緒で、嫌々やる英語のドリルなんて覚えないじゃないですか。
覚えなきゃいけないな、テストは嫌だな、と思いながらやっている単語帳は覚えられません。
でもみんなで喋ったり、海外の人と喋ったりして「Oh, Thank you」と言いながら英語を学ぶと覚えていきます。

あとは嫌なやり方ですが、不安にさせることもあります。
「明日テストだ!覚えないともうだめだ!」僕の場合だと「国家試験に落ちる!そしたら自衛隊で普通の兵隊として勤務しなければいけない」という感じになると、最後は焦って不安に駆られ勉強ができるわけです。

恐怖や楽しさという感情が揺さぶられるほど「大事な記憶」だと身体が判断して覚えます。
カウンセリングでは不安を煽るわけではないので、安心しリラックスした状況の中で覚えてもらう。
悲しいことを思い出したときにグッと安心感を与え、感情に働きかけることで、整理してもらうということです。

プルーニングされるとき

プルーニングの問題は、「きちんと寝る」ということです。
寝ると頭の中が整理されます。
だから眠れない人には睡眠薬を出す、眠れるように環境調整をしてあげることがとても重要です。

プルーニングをしているときは「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」と言ったりします。
ぼーっとしているとき、散歩しながら色々なことが頭の中に浮かんでいるとき、夢を見ているときがとても大事で、プルーニングがしっかりされているときです。
いらない情報は省いて大事な情報だけ残ります。
頭の中が整理されてアイデアが生まれてくるというのもこういう時間だったりします。

脳の配線はどう決まる?

では、チューニングとプルーニングだけで人間の性格や考え方のクセができるのかというと、それだけではなく、遺伝子も関係しており、遺伝子とチューニングとプルーニングによって脳の配線が決まります。

子どものときに一度脳の配線ができると、そこから新しく配線を作り直すのはとても難しいです。
新雪の丘と言いますが、雪の上にソリの跡が最初にできると、次のソリもその跡を通ります。
だんだんとソリが通る部分の溝が深くなって、そこのチューニングがどんどんされてしまい、毎回同じようなことを考えがちになります。
これが性格だったり認知の歪みだったりします。
最初に出来上がってしまうとなかなか覚えていってくれない、なかなか矯正が効かなかったりします。

治療は、時間をかけて過去の間違った配線を直してあげることになります。
遺伝子や過去の虐待などでできている配線を新しくチューニング、プルーニングし直してあげるのが精神科の治療です。

今回は記憶と学習および脳の配線というテーマで解説しました。


2022.5.6

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