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【ゼロから学ぶ精神医学①】精神疾患とは何か?

01:09 発症の原因と症状の出方
02:42 遺伝子の違い
04:03 社会的ストレス
04:50 不運の重ね合わせ
06:32 精神疾患の種類
08:44 精神疾患の種類:脳の機能によるもの
11:52 精神疾患の種類:複合的な問題
13:03 精神疾患の種類:二者関係

本日は「精神疾患とは何か?」というテーマでお話しします。

今回から精神疾患を全般的に語るシリーズを始めます。

どのような人に見てもらいたいかと言うと、「精神医学に興味はあるけれど、知識は全然ない人」です。このような人に向けて動画を撮ろうと思います。
患者さん、これから精神科を受診しようかと考えている人、学生さん、ご家族、会社の上司や社長、そのような人が対象です。

「精神医学に興味はあるけれどなんだかよくわからない」という方に、広く見てもらえたらと思います。

発症の原因と症状の出方

「遺伝子」+「社会ストレス」、これらの複合的なもので病気は発症します。

遺伝子単独の問題ではありません。こういう遺伝子を持っている人は必ず発症するというものでもありません。
社会的なストレスも、虐待があったから必ず発症する、会社でパワハラを受けたから必ず発症する、というわけでもありません。

もともと持っている本人の素質と、社会的なストレス、これまでの育ちの問題、経験、今起きている出来事の「複合」で病気は発症します。

病気の症状の出方も多種多様です。
うつっぽくなる人もいれば、神経質になる人もいますし、手を洗うなどの行為をする人もいます。同じような原因であっても出口が違うのです。
怒りっぽくなる人もいますし、場合によっては記憶をなくして多重人格のようになってしまうこともあります。

そこが人間の複雑さです。
入口は同じでも、ブラックボックスに入り、出口では多種多様になります。

遺伝子の違い

では具体的に遺伝子にはどのような違いがあるのでしょうか。

・脆弱性
脆弱性、つまり「病気のかかりやすさ」がわかっています。
ある遺伝子、1つではなく複数なのですが、特定の遺伝子を持っていると、統合失調症や躁うつ病を発症しやすいことがわかっています。
ですから、ある家系では統合失調症を発症しやすいといったことがあります。

・知的能力
知的能力の問題もあります。発達障害、境界知能、精神発達遅滞なども遺伝的なもので決まります。

・特性
本人の特性もあります。不安になりやすいのか、楽観的なのか、このような人格的なものも遺伝子の影響があります。育て方や環境の部分もありますが、遺伝でも結構決まります。

社会的ストレス

・会社でのトラブル(パワハラ、セクハラ、人間関係のトラブル、業務量が多い等)
・学校、家族のトラブル
・貧困、虐待の有無

このようなことが社会的ストレスとして関わってきます。

子どもの時の虐待の問題は、生涯つきまとうことが多いです。
幼少期にネガティブな人間関係の中にいたり、ネガティブなダメージを受けてしまうと、やはり残ってしまうということがあります。
そうすると病気を発症しやすくなる、ということになります。

不運の重ね合わせ

僕はよく、「不運の重ね合わせ」が精神疾患の発症につながると言います。
遺伝的な要素は自分では決められませんし、社会的な要素も自分では選べません。
育てやすい子ども、育てにくい子どもというのはあるかもしれませんが、それも子どもが自分で選んでそうなっているわけではありません。
本人の努力ではどうしようもないことがあり、病気に至ります。

精神医学のことをよくわからない人は、この不運の重ね合わせを想像できない人が多いです。
サイコロを振って6が連続で出ることは滅多にありません。6が連続で5回出るなんてまずありませんが、これだけ人口がいるとそのような「不運の重ね合わせ」のような人がいるのです。
そういう人はやはり精神科の病気になり、クリニックや病院を訪れることになります。

本人の甘えと言うよりは、いろいろなことが重なりなるべくしてなってしまう、そういうことが多いです。

精神疾患の種類

・体の病気によるもの
体の病気が原因で精神の障害を起こすことがあります。
例えば喉のあたりに甲状腺があります。ここには元気が出るホルモンがありますが、甲状腺の機能が低下しているとうつっぽくなります。これを「甲状腺機能低下症に伴ううつ症状」と言ったりします。

「脳炎」もあります。何かに感染し脳炎になって幻覚妄想が見える、錯乱状態になる。
術後の「せん妄」もあります。
ステロイドの治療中にうつっぽくなったり、精神病症状が出てしまうこともあります。

これは体の病気が原因で精神が錯乱しているので、体の病気を治すと良くなっていきます。
これらも精神科のテリトリーの1つです。

・遺伝的な脆弱性によるもの
遺伝的な脆弱性があって発症するものといえば、「うつ病」「躁うつ病(双極性障害)」「統合失調症」です。

・ストレスによるもの
ストレスが急にかかったときに起こるものとしては、ストレスが大きくかかり落ち込んでしまう「適応障害」、ストレスがかかり自律神経が乱れる「自律神経失調症」、そこから発作が出たりパニック症状が出る「パニック障害」があります。

・女性
女性ならではの病気としては「PMDD(月経前気分不快症候群)」「更年期障害」「産後うつ」があります。

精神疾患の種類:脳機能によるもの

脳の機能によって起こる病気としては、これらがあります。

・報酬系
脳には「報酬系」と呼ばれるものがあります。やると楽しくなってまたやりたくなるものです。
例えばお酒は報酬系に関与しています。お酒を飲んだらまた飲みたくなる、どんどんやみつきになっていきます。
褒められてやりたくなるのも報酬系です。

この報酬系が刺激されて病気になってしまいます。
蛇口で言うと、蛇口がバカになってしまうような感じです。

報酬系に異常をきたす病気としては、依存症があります。
アルコール、ギャンブル、買い物、性、過食嘔吐(摂食障害)、自傷(リストカット、OD)などがあります。

これも報酬系に関与するのは意外かもしれませんが、「強迫性障害」もそうです。
何度も手を洗う、何度も鍵締め確認をする、など。

「ホールディング」と呼ばれる、家にゴミを溜め込んでしまうことも報酬系が関与しています。

・記憶
忘れたくても忘れられない、生々しい記憶が残ってしまう、「PTSD」や「複雑性PTSD」があります。
嫌なことが忘れられませんし、ふとしたきっかけで何度も思い出してしまいます。

・知的能力
知的能力の問題として、「境界知能」や「発達障害」、「知的障害」があります。
知的能力と言うのは病気、障害なのかという議論は常にあります。もちろんそれ自体が病気ではありません。
知的能力が低いこと自体が病気ではありませんが、社会に出たときにやはりなかなか上手くやれません。他の人ができることを自分ができない、努力の問題ではなくもともと持っている能力のためにできないとなると、自尊心も傷つきますし周りからもいろいろ言われます。上手く生きられません。
そういう人たちも精神科の病気や障害ということになりますし、障害と認定されることで、障害年金や生活保護などの福祉サービスを受けやすくなります。

・特性
人よりも不安を感じやすいから「不安障害」になるなど、敏感さの問題があります。

精神疾患の種類:複合的な問題

脳機能の問題は、この部分だけが問題だという単純なものではありません。
複合的な問題として現れてきます。

・人格障害
有名なのは「境界性パーソナリティー障害」です。
「見捨てられ不安」や「理想化とこき下ろし」があります。「あなたはすごいね」と言ったと思ったら、突然プイッとなり「あなたなんか嫌い」となってしまいます。

「自己愛性パーソナリティ障害」は、自分のことを有能で素晴らしい人間だと思い込み、他人を駒のように扱かったり酷いことをしてしまいます。

「反社会性パーソナリティ障害」は、犯罪行為をしたり、人を傷つけることを何とも思いません。

・解離
突然記憶を飛ばして多重人格のようになったり、落ち込んでいないのに手足が痛いと訴えたり、手足が動かなくなったりすることがあります。

精神疾患の種類:二者関係

病気の人と「一緒にいる人」が病気になってしまうことがあります。

アルコール依存症の人とずっと一緒にいてうつになってしまう、正常な判断ができなくなってしまうといった「共依存」の問題。

発達障害、主にASD(自閉スペクトラム症)の人と一緒にいることでうつになってしまうのを「カサンドラ症候群」と言います。

以上、ざっくり精神疾患を挙げましたが、全部を理解するというよりは、こんなものがあるのだと理解していただければと思います。

とにかく今回は何を覚えてもらいたいかと言うと、「本人の甘えではない」ということです。
遺伝的な問題と社会的な問題の複合で病気を発症する、ということです。
ですから、治療も薬だけで治るものではなく、社会的な背景を見ながらカウンセリングをしたり環境調整をすることが重要です。
周りのサポートも必要です。ある種育て直しというようなことも重要です。

このようなことを周りの人は理解してもらえたらと思います。


2022.5.14

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