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投影、転移、投影同一視、逆転移を解説

01:16 心は脳の機能の一部
04:02 情報社会では意識の働きが重視される
06:55 無意識にある問題はどういう形で現れてくるのか
08:13 投影、転移、投影同一視、逆転移
12:08 何がわかるのか

本日は「投影、転移、投影同一視、逆転移」という精神分析の用語を解説します。

投影、転移といった言葉を聞いたことがあるでしょうか?
心理系の人や医学生、医療系の人は一度は耳にしたことがあるのではないかと思います。
これらは無意識を反映させた人間の心のメカニズムです。
「今何が起きているかの描写の方法」と言ったりします。

これらは、自分がどのような認知の歪み方をしているかに気づくために重要なキーワードです。

心は脳の機能の一部

まずは、なぜそもそも投影や転移という言葉が必要なのか、このような概念が重要なのか、についてお話しします。

僕らが持っている心や意識は、脳の中の一部です。当たり前と言えば当たり前です。
いつも心というのは脳の機能だと言っていますが、正確に言うと「脳の機能の中の一部」です。

では、脳は何をしているかというと、体を動かしたり、心臓を動かす、体温の管理、消化器系の管理などいろいろなことをやっています。
ですから、この脳1つの中で命に関わるいろいろなことをやっています。

そして当然、意識、考えることもやっています。

日本語を喋るときの舌の動かし方など、自分たちが何かをするときの準備、無意識的な作用も脳がやってくれています。
「日本語を喋ろう」と思ってから喋りませんよね。
「あ、これは犬だ」とわかった時、脳が勝手に「犬とはこういうものだ」という知識、過去の情報を全部引っ張り出して材料を渡してくれています。
そうするとようやく犬だとわかります。

こういうことは脳が無意識的にやってくれています。
キューピー3分クッキングで完成品がすでに出来上がっているように、ほとんどのことは脳が勝手にやってくれています。
ですから僕らは考えているようで、ほとんど何も考えていません。
意識的にやっていると思っていることのほとんどは、無意識がやっていることなのです。
心というのは脳の一部ですが、そのさらに一部、ということです。

意識よりもより広い概念、合理的な概念を考えると、無意識と意識の合わせ技ですし、無意識の方が広いです。
無意識の中に記憶や抽象概念の貯蔵庫があります。
無意識にあるものを意識の方に持ってきて、ちょこちょこ操作する感じです。

情報社会では意識の働きが重視される

精神科は心や意識を扱っています。
脳外科のように脳の病気を全て扱うというわけではなく、心の一部しか扱っていません。ですから医学部の中ではマイナー科と言われています。メジャー科は内科や外科です。

ですが僕らは、心や意識というのは人間全体の中の一部でしかないとはあまり思いません。
それは、情報社会においては肉体の価値は低いからです。
心の「器」でしかないと言うか。

情報社会では情報がたくさんあり、それは人間の脳に収まるものではありません。
人間の心、無意識を含めても脳の中には収まりきりません。
また、死んだ後も情報は残ります。本当に大量にあるのです。

昔の社会、原始時代ではそんなことはありませんでした。
子どもが大人になるまでに、村の長老が知っていることは全部知っていました。だから大人は何でも知っていました。

ですが、情報伝達の手段に言語を使うようになり、文字を刻み、活版印刷ができ、インターネットが広まり、人類は死後も情報を残せるようになりました。
情報の中に飛び込んで生まれてきて成長し、そして全部をわからないまま死んでいくようになりました。だから結果的に心が重視されます。

この情報社会を生き抜くためには、肉体よりも、心、脳の働き、いわゆる「意識の働き」が重視されるのです。
ですが生物学的に考えると、心は肉体の一部である脳の中のごく一部、ということになります。

無意識にある問題はどういう形で現れてくるのか

意識にどのような異常があるのかをどうやって突き詰めたら良いのか?
意識に問題があるのならば、どこに病気があるのか?

例えば脳に問題があると考えるのであれば、MRIを撮る、採血をする、といったことでわかります。
そうすると感染性の脳炎で精神が朦朧としている、体の異常がありせん妄がある、脳出血で意識が変になっているとわかります。

ですがそこには問題がなく、意識・無意識のどこかに問題があった場合、それをどのように発見するのか、ということを考えました。
精神分析では、意識と無意識をどのように行き来しているのか、無意識にある問題はどういう形で現れてくるのか、ということを考えた。それが、投影、転移といったものです。

投影、転移、投影同一視、逆転移

・投影
投影というのは、自分が怒っているときに、自分の怒りに気づかずに相手が怒っていると感じることです。
自分の感情には気づかずに、相手がそういう感情を持っていると思います。

・転移
転移とは、過去の記憶、過去の嫌なことを気づかないうちに相手に重ねていることです。

例えば父親に嫌なことをされた場合、年上の男性である上司になぜかイライラしてしまう。自分でも気づかないうちにイライラして怒り口調になってしまう。
そういうことを、父親転移を起こしていると言います。

・投影同一視
自分が怒っているときに、相手を怒りの象徴だと考えます。
自分の怒りに気づかずに、「あいつは悪い奴なんだ」と思うことを投影同一視と言います。

コロナ不安によるいじめもこのパターンです。
子どもがコロナの不安や学校に行けなくて嫌だなと思っている時に、友達に「コロナ」というあだ名を付けていじめます。
そうすることで不安を解消しようとします。

自分の中にある無意識を相手に重ねているという点では投影や転移と同じなのですが、投影同一視の方がより原始的です。

・逆転移
相手の感情、働きを無意識に察知して、何かこちら側が相手に対して怒っている、何か嫌な思いを持っているなど、治療者側が相手に向ける感情を逆転移と言います。

これはもともと転移されてきた結果なので、自分が何か相手に対してイライラしているなと思った時に、「相手は僕に対して怒りを無意識的に持っているんだ」、「でもその怒りは自分自身に対してなんだ(投影)」「これは父親を医師に重ねているんだ(転移)」と気づく。これが逆転移の応用、理解です。

相手の無意識を理解するためには逆転移を応用しなさい、と言われるのはこのためです。

人間の意識・無意識というのは、最初に説明したようにスムーズに健康的に行われることもあります。
英語を喋ろうと思った時に、最初は慣れないけれど海外の人としばらく喋っていると無意識に喋れます。それは脳の無意識がちょうど良い材料をパスしてくれているからです。
逆に、無意識が間違ったものをパスしているのがこれらのパターンです。
本来感じてはいけないものを感じてしまっている、無意識の誤作動を投影、転移、投影同一視と言います。

何がわかるのか

では、この無意識の誤作動を通じて何がわかるかと言うことです。

・投影、投影同一視
投影や投影同一視は「解離」を起こしやすい人に起きます。
相手が不可解なことを話しているときに、なぜこの人は不可解なことを話しているのだろうと考えると、自分の感情に気づけていないからだとわかります。
「僕が怒っているのではなく、実はあなたが怒っているのではないですか?」と解釈してあげると、「ああ、自分は怒っていたんだ」と自己理解につながります。

そうすると、「なぜ自分は怒っていたんだろう」という内省が始まります。
「本当は上司のパワハラに怒っていたんだ」「友達を本当はいじめたくなかったのに、不安だったし学校に行けないことにイライラしていたんだ」とわかります。だから誤解が減ります。

・転移
転移から何がわかるかと言うと、転移がわかることによって過去の虐待に気づけたり、その人のパーソナリティに気づくことができます。

例えば父親転移を起こしているときに、「あなたは僕に怒っているのではなく、過去に父親にされたことに怒っているのではないの?」と聞くと、「いやいや、そんなことありません。僕は父親のことを尊敬しています」と言います。ですが、「そんなことないでしょ、尊敬している一方で教育的な虐待を受けてきたり、恥をかかされたという恨みがあるんじゃないの? それを押し殺している結果、自分に自信を持てなくなっているんじゃないの?」ということを伝えることで、自己理解が深まりうつが良くなっていく、ということです。

・逆転移
なんだか治療に行き詰まっている時、表面的な言葉のやり取りになっていて相手の心を震わすようなやり取りができていない時、自分の気持ちのもっと深いところに潜ってみると相手の心がわかる、ということです。

今回は、意識・無意識、投影・転移などについて解説しました。


2022.5.22

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