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個人セラピーと集団セラピーの違い。その危機について

00:59 個人セラピー
07:32 集団セラピー

本日は「個人セラピーと集団セラピーの違いや進展の仕方」についてお話しします。

この話は、ある患者さんとのやりとりの中で生み出したものです。
良い話だと思いますので皆さんと共有したいと思います。

個人セラピー

個人セラピーはどのように進展していくかというところからお話しします。

1.発散・整理
まずは話します。話すことで発散できます。
カウンセリングは1回45分、50分、60分などありますが、喋るので発散できます。
歌うことが気持ち良いのと同じように、自分の話を聞いてもらえるのは気持ちが良いことです。

その上で整理もできます。
あなたはこういうことを考えていたのですね、と整理してくれます。

これが第1段階です。

2.課題と対応
整理されたことの中で何が今問題となっているのか、それに対応するにはどうしたら良いのかを話します。

夜眠れないけど、夜にスマホをいじってしまうのであれば、触らないようにする。
その人が今困っていることの原因は何なのかを整理した結果、睡眠時間が短いということがわかった。そしてその原因はスマホだったりするので、対応としてスマホを触らないようにする、といったことです。

落ち込みが多い、でもお酒を飲んでいる時間が長い、などいろいろあります。

このあたりまでをカウンセリングだと思っている方も多いのではないかと思います。
発散・整理して、課題と対応をまとめていく。

課題を見つけるのがうまい、対応の仕方をよく知っている人が腕のあるカウンセラーだ。発散や整理をするときに、話に茶々を入れずにきちんと聞いてくれるのが良いカウンセラーだと思うかもしれませんが、これはまだまだ序の口です。

3.本音、家族
これらをやっていくと、もっと深い本音や気づかなかったかもしれない家族の話、生い立ちの話、トラウマの話をするようになっていきます。
表面的な話や日常的な話から、どこか深い話、コアな話をするようになります。

4.治療者への転移
コアな話をしていると、治療者への転移が起きます。これは絶対に起きます。
治療者のことを特別な存在のように思い始めます。
それは怒りかもしれないですし、過度な理想化かもしれません。

そりゃそうだと言えばそうですよね。
そんな話なんかしないわけですから、特別な関係になりますよね。

その結果すごい怒りを感じるかもしれませんし、理不尽なほど悲しんだりするかもしれません。

5.克服→成長
それらの治療者と患者さんの間で起きるトラブルを克服することで、問題解決することで、無事成長できます。
治療者と患者さんの間で起きる問題を解決すれば、日常の問題も解決していきます。

良い治療者、腕のある人というのは、4番、5番を扱える人です。
でもなかなか難しいです。
4番、5番に無用心に入っていって変に投影や転移を起こして抱き合ってしまうということではなく、ちゃんとした手続きで、ちゃんとそこに突入する、ということが重要です。

そもそもこの段階に入らなくても1番、2番で片付けば良いわけです。そこだけを繰り返して生きやすくなればそれに越したことはありません。4番、5番は患者さんも治療者も心が折れます。
折れますし、傷つきますし、すごくえぐる作業です。できればこのようなことをせず、1番、2番で済ませるのが良いです。

・頭でわかっているのにどうしてこんなに「不快」なのか?
治療者なんて別に何もしません。ただいるだけです。
赤の他人がちょっと喋るくらいで、上司が怒るのと全然違います。

上司が「ダメじゃないか」と言った時に感じる怒り、給料に響くという実害を被る怒りとは違います。
奥さんや家族が何か言ってきたら、距離が近いので「何なんだ」となります。
甘えや退行もありますから。

でも治療者は家族のように全てを知っているわけでもありませんし、ほとんど知りません。
本音を喋っているといっても作られた自分ですし、利害関係もありません。そもそも患者さんが自らお金を払って来ているわけです。
ただそれだけですから、嫌だったら来なければ良いわけです。

ですが、上司の人に向ける以上の怒りを感じたりすることが起きます。
なぜこの怒りが起きるのか、そしてなぜこの怒りを解決しなければいけないのか、怒りをどうやって解決するのかが治療の面白いところでもありますし、人間の不可解なところでもあります。

「投影」や「転移」が起きるのです。
治療者に対して怒るというのは、自分の不甲斐なさへの怒りかもしれません。
わかってくれない父親や母親を転移しているのかもしれません。
自分の中にある弱さの投影同一視かもしれません。
いろいろなものが考えられます。

集団セラピー

では、集団の場合はどうなるのでしょうか。

1.発散・受容
たくさん喋ると気持ちが良い。皆の前で喋ると気持ちが良い。
皆の前でカラオケを歌うと気持ちが良いですよね。

皆の前で自分の悩みを話すことが気持ちが良いですし、皆が聞いてくれているのは「受け入れてくれている」感じがします。
すごく受容してもらっている感じがして楽です。

2.知識が増える
色々な人から色々なアドバイスをもらえますし、色々な人の体験談を聞くことで、「こういう生き方もあるんだ」「こういう考え方もあるんだ」「こういう苦しみもあるんだ」とわかり知識が増えます。
それが治療につながります。

集団セラピーの良さはこの1番と2番です。

ただこれも、その先があります。
ここで収まれば良いのに嫌な問題も起きます。

3.本音、個人らしさ
本音や個人らしさも出てきます。
匿名であってもやはり個人らしさが出てきます。
オンライン自助会をやっていて、やっぱり起きるな、面白いな、と思います。

4.集団、個人への転移
そうすると、この組織が悪いのではないか、誰々が悪いのではないか、という転移が起きます。
匿名の赤の他人ですし、スレッドで書いているだけなので別にどうでも良いといえば良いのですが、どうでも良いとは思えません。

そしてルールを犯します。
ルール違反が起き、逸脱行動が起きたりします。
個人セラピーでも逸脱行動が起きたりしますが、集団セラピーでも起きます。

5.克服・成長
この問題はどうやって克服していくのか、何か問題が起きたときにどうやってその不快感を克服していくのか、成長につなげるのかが集団セラピーの大事なポイントです。
ここも難しいなと思います。

でも、不快感を受け入れていくことは大事ですし、それは他の人が受け入れているから受け入れる、ということもあります。

例えば僕が自衛隊にいたとき、「何でこんな訓練をするんだよ」「何で自分たちは他の医大のようにやってくれないんだ」と腹を立てたり憤慨したりしていました。
でも受け入れるのです。「仕方がないな」と。

それはなぜかと言うと、周りが受け入れているからです。
周りが受け入れている姿、先輩が受け入れている姿を見て、「うーん」と思いながらも受け入れ、怒りや混乱に支配されず成長していくということです。
そういうことだったんだろうなと今はわかります。

そういうことってありますよね。
死ぬのは嫌だけれど、これまで永遠に生きた人はいないから、自分もそうなんだな。病気も老いの問題もそうです。
親の年収で東大に行けるかどうかが決まるとしたら、ウチはそんなにお金持ちではないし地方だし何なんだ。東京に住んでいて近くに良い予備校があったら自分だって、と思うこともあると思います。

でも仕方ありません。
そうと言えばそうですが、他の人が受け入れているように、ある種の残酷さも受け入れなければならないというのはあります。

集団セラピーの良さは、周りの人が受け入れているから自分も受け入れよう、というような考えができるということもあります。

でも例えばかつてのナチスドイツのように、皆が不満を持って皆が不満を受け入れられないと、集団ヒステリーが起きます。そのようなことはいけません。
集団が病的でなく健康的であれば、ひとりやふたり不健康な人が出ても治療をしていくことも可能です。

今回は、個人セラピーと集団セラピーの展開や違いをざっくり解説しました。


2022.5.28

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