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社内で発達障害(ASD/ADHD)の人がいた時の対応 上司、人事の目線から

00:36 発達障害とは
02:24 合理的配慮
07:51 本人のカミングアウト
08:39 カテゴリーではなく「スペクトラム」
10:09 どういう人が、どういう症状なのか?

本日は「社内に発達障害の人がいる場合、周りの人はどのような対応すべきか」というテーマでお話します。

主に職場の上司の人、人事担当の人に見てもらえればと思います。
もちろん同僚の方にも知ってもらいたいことです。

発達障害とは

「発達障害」は最近は良く聞くかなと思います。
自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如多動症(ADHD)、学習障害(LD)の3つを発達障害と言います。

ASDは、こだわりが強く、コミュニケーションが苦手、音が気になったり肌触りが苦手という感覚過敏がある、という人です。
ADHDは、不注意、忘れ物が多い、衝動的ですぐにモノを買う、思いついたことを口にしてしまう、落ち着きがない、という人です。
LDは、字を書くのが苦手、算数が苦手など、特定の科目が苦手な人です。

知的な問題はないにも関わらず、その分野だけができないことを発達障害と言います。
全体的な知能レベルが低いということではなく、ある1ヶ所、あるいは複数の箇所がポツンと落ちています。

ASDとADHDは別の疾患ですが、合併している場合が多いです。
ASD的な特徴とADHD的な特徴を両方とも併せ持つ人が多いので、僕は両方を合わせて発達障害と呼んで患者さんに説明することが多く、今回もそのようにします。

合理的配慮

どのようなことをしなければいけないのかということですが、一つは「合理的な配慮」です。
その人の苦手なものがあるので、その苦手なものをこちら側が理解し、配慮、考慮してあげることが重要です。

例えば、職場によってはガヤガヤして落ち着かないことがありますが、音が苦手な人には耳栓の使用を許可する、ヘッドフォンを許可するということです。
そんなことは社内的にダメだ、というかもしれませんが、ちょっと大目に見てよ、という話です。

また、通院が必要なので、月に1回あるいは2回の通院日に時短勤務や半休を取得しやすくすることも配慮の一つかと思います。

耳から入る情報が苦手なことが多く、ワーッと説明すると混乱することが多いです。
紙に書いてメモで渡すと理解しやすかったりするので、口頭指示ではなく文書で指示するような配慮も必要かもしれません。
こうしたことは色々ありますが、人によって結構違うので、病気の勉強をしてもらえると助かります。

ただこれは難しいです。
僕らが無意識にできていることができないので、改めてどうしたら良いのかを説明することは難しいです。

例えば、患者さんによってはメモを取るのが苦手な人がいます。
自己紹介のプレゼンなどごく単純なものでも苦手な人もいます。

じゃあどういう風に指導したら良いのか、と言われると、「うーん」と頭を悩まします。
メモを取るのにどう指導したら良いのかというと、「ポイントを押えて」と言うのですが、究極的にはメモを取るAIを作れと言っているのと同じです。
AIでさえ十分実現できていないことをインストールするのと同じなので、なかなか発達障害の支援をすることが難しかったりします。

でも一般的なこと、普通に病気のことを理解したり、耳栓の許可や文書での指示、通院の許可などの一般的な配慮は、できることからやってもらえると良いのではないかと思います。

何でもかんでも配慮する必要はないと思います。
職場は職場、仕事なので、社内規程に則って、例えば遅刻が多過ぎる場合は発達障害だから遅刻を許せということではなく、適正に処分しなければいけないことはあるかな、という気はします。
どこまで合理的な配慮ができるのか、するのか、ということと就業規則や社内規定の問題というのは、常に天秤ではかって考えなければいけない問題だと思います。

やってはいけないのは、感情的な叱責です。
「何なんだ!」怒ったり、「根性がたるんでいる!」「性格が悪いんだ!」と人格攻撃、気合いが足りない、やる気がないなどの根性論での叱責はは良くないです。
これは全く意味がなく、相手に不快な思いをさせ、相手が仕事ができなくなるだけです。

感情的なものではなく、本人がやろうと思ってもできない、頑張ろうと思ってもできないことなので、そこを責めるのは生産的ではありません。
淡々とやるのが良いと思います。

頑張ればできるじゃないか、頑張ったからできただろう、というのも実はNGです。
頑張らないとできないんです。

発達障害の人も頑張ればできること、火事場の馬鹿力を出せばできることというのはありますが、それはコンスタントにできるわけではないのです。
それは僕らが常に120%の力で走れと言われているのと同じなので、やればできるじゃないかではなくて、基本はできないのですが時々できることもあるというのは僕らと一緒ですから、そこを責めないようにする、そこを考えて配慮してあげることが重要です。

遅刻しないためにめちゃくちゃ努力していたりすることがあります。
それで潰れてうつになる人もいるので、本人の能力を配慮することが重要です。

本人のカミングアウト

本人がカミングアウトするかしないか、という問題もあります。
あまり知られたくない人もいるので、ここも兼ね合いが難しいです。
合理的配慮をする一方で、本人はどれくらい病気のことを伝えたいのか、伝えたくないのか、ということがあります。

合理的配慮をするのだからお前は病気のことを言え、というのは極端な話で、偏見や差別というものがあります。
偏見や差別がないように俺から言ってやるといっても、結局のところ社長、人事や上司の見えていないところで偏見や差別があったりします。
あまり力技でやらない方が良いということは常に思います。

カテゴリーではなく「スペクトラム」

発達障害の問題で一般の人が理解しにくいのは、カテゴリーではなくスペクトラムだということです。

発達障害はこう、発達障害でない人はこう、というものではありません。
身長が大きい人もいれば低い人もいる、でもメチャクチャ大きい人は困ります。
Lサイズまでならどこでも売っていますが、LLやXLになると売っているお店も限られます。

これと同じで発達障害の人も程度があります。
ちょっと忘れ物が多いLサイズくらいの人もいれば、たまにしか見ないLLサイズくらいの人もいるし、2m越えくらいの人もいます。
だから「忘れ物は誰でもあるよね」ではなく、程度の差が結構あることを理解する必要があります。

こういうことを「スペクトラム」と言います。
これをなかなか理解しにくいという人がいるようです。
大きい人は大きい、小さい人は小さいではなく、症状の重さ軽さが違うということです。

身長が大きい小さいという単純な問題ではなく、色々な症状がスペクトラムで現れます。
症状は多彩です。

どういう人が、どういう症状なのか?

精神疾患の場合は、どういう人がどういう症状なのか、を考えることが重要です。
どういう症状か、ということだけに注目すると治療は上手く行きません。

その人らしさ、その人の背景、家族、生い立ち、好みなど色々なこと、この人はどういう人なのかということを考えた上で、今どういうことで悩んでいるのかを考えることが重要です。

しかし職場で同じようなことをしようとして、「どういう人か」というところに踏み込んでしまうと、プライバシーやプライベートの問題に入ってしまいます。
そこまで介入して良いのか、ということがあると思います。
職場の人間がその人の生い立ち、家族、トラウマの問題まで踏み込んで良いのかということもあると思うので、線引きがとても重要かなと思います。

あくまで職場は職場なので、合理的な配慮はしますが、社内規定などを踏まえてやれるところまでやる、ということがとても重要だと思います。
それは決して冷たいということではなく、職場は職場としてやるべきことを淡々とやっていくことが重要じゃないかなと僕は思います。

みんな同じではなく、世の中には発達障害というものがあり、それは人類が生物として持っているもので、そういう人に対しては会社規定に沿ってできる配慮をしましょう。やれないところはきちんと線引きをし、本人に伝えていくということがとても重要だと思います。

あまりプライベートなところまで踏み込んで何でもかんでもやってあげようというのは、やり過ぎで引っかき回すだけになってしまうことがあります。自分たちができる範囲のところで留めることがとても重要かなと思います。
その代わり自分たちができることはしっかりやるということです。

今回は、社内に発達障害の人がいた場合どうしたら良いのか、ということをテーマにお話しました。


2022.6.13

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