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精神科医YouTuberの役割と時事問題の扱いについて

00:00 OP
02:19 インフルエンサーとは?
07:06 今困っていること
09:46 時事問題の扱い
13:13 時事ネタの扱いで気をつけること

本日は「精神科医YouTuber・インフルエンサーはどういう存在なのか、どうあるべきなのか」について解説してみようと思います。

この1、2ヶ月、いろいろな機会がありました。
学会発表があったり、テレビの仕事をちょっとさせてもらったり、いろいろなメディアの方、雑誌やメディアの方と少しお話しする機会がありました。

そういう中で自分のYouTubeのコメントを読みながら、いろいろなことを考えました。
本当にこの3年間、すごく変化が起きました。
コロナによっていろいろなことが変わりました。

僕の外来に来る患者さんで、テレビを見ている人が本当に減りました。
テレビやマスメディアに対する不信感を持つ人が本当に増えたなと思います。

そういう中で、インフルエンサーからの情報は信じられるという人もいるし、くだらない議論ばかりでもうインターネットすらなんか馬鹿らしい気持ちになった、という人もいました。
こういう中で僕はどういう存在であるべきなんだろうとか、どういう風に情報発信していくのが良いのだろう、そしてそもそも僕は何のためにこんな思いを…というとアレですが、苦しいんです、YouTubeを撮り続けるのは。

こんなに辛くてお金にもならないと言うと失礼ですが、労力の割には儲からない、遥かに儲からないことをなぜやらなければいけないんだろうと、本当にずっと考え続けました。
ただ、僕なりにわかっていること、今考えていることがあるので、それを皆さんと共有して、またコメントとかでディスカッションをしたいと思います。

とにかく、これからマスメディアというものからインフルエンサー型のメディアに変わっていくにあたり、インフルエンサー側はどうあるべきなのかということを、きちんと話したりしている場所は少ないと思います。
だから僕自身の言葉でお話ししたいと思います。

インフルエンサーとは?

インフルエンサーとはそもそも何なのかというと、人々の心の代弁をする人、言語化する人で、オンラインコミュニティの中心にいる存在をインフルエンサーと言うのではないかなと思います。

いわゆる芸能人やインフルエンサーの人たちは、自分たちの気持ちを代弁してくれる人。
腹が立つとかこれが美味しいとか何でも良いのですが、そういう気持ちを代弁してくれる人で、その人を中心に、「そうだよね、あれ美味しいよね」「ああいうことって腹が立つよね」という議論を引き起こすシンボルなのかなという気はします。

皆さんいろいろなインフルエンサーの方を知っていると思いますが、頭に思い浮かべながら話を聞いてください。

僕の場合は精神科医+インフルエンサーなんですよね。
精神科医としての立場があり、精神科医としての発言をし、そして患者さんたち、メンタルの病で苦しんでいる人たちのオンラインコミュニティの中心にいるというのが僕という存在なんだろうと思います。

・精神医学のデザイン化
僕がやるべきことというのは何かというと、まず「精神医学のデザイン化」なんですよね。
精神医学はやはり難しいです。
それをできるだけわかりやすい言葉で伝えていくということが僕に求められていることだし、社会にとって必要なことだと思います。

精神医学的なことを知ってもらう、人間の心というのは脳の問題であるとか、心の病は甘えではなくて、脳の問題だと。
脳には良くも悪くも優劣というものがあるとかそういう話です。
ストレスによって病気は引き起こされてしまうとか、そういうことをわかりやすく説明することがとても重要かなと思っています。

そのためには、学ばなければいけないことが多すぎるので、それをみんなが学ぼうと思うととても大変です。
できるだけ省略して必要な部分を伝えていくことが重要です。

・オンラインコミュニティ
次の重要な役割として、オンラインコミュニティの中心である、シンボルとしての機能を果たすことが重要です。
他のYouTuberの方もそうですが、コメント欄でいろいろな人が意見を言ったり、ディスカッションしています。

僕も腰のヘルニアで痛いといろいろネットで調べるんですよ。
どうするのかなとか、どれぐらい治ったのかなとか、ガイドラインはどうなっているのかなとか、手術した方がいいのかなとか、いつまでも薬飲んでていいのかなとかいつも調べてしまいます。
そういう中でやはりコメント欄も見ます。
「ああ、こんな人もいるんだ」「自分と同じだな」「自分と違って早く治ったな」「自分と違ってなかなか治ってないな」とか見ます。これはすごく心の支えになります。

そういう機能は良いものなので、発展させていきたいなと思っています。
メンタル疾患に関しても同じで、どうやってそのコミュニティを良いものにするのか、荒れないようにするのかというのをいつも考えています。

でもこの運営は結構難しいんですよね。
僕の場合はコメント欄は承認制にしていて、原則返信ができないようにしています。全部チェックしています。
1日100件くらいチェックしていて、チームでやってはいますが、マメなのが僕なので結果的に僕が一番チェックしてるのですが、でもそういうことをやっています。

あともう一つはよくコメント欄に来るのでもう恥ずかしげもなく伝えますが、「サブ主治医」だということです。
僕がセカンドオピニオン的になっている、益田裕介というのが無料で受けられるYouTube上の主治医になっているということです。
これはもう偉そうに言うつもりもないですが、そうなんだろうなと思います。

YouTubeで毎日会えるとかいろいろな話が聞ける、シンボルとしての機能を果たしているので、そういう風に扱われているのだろうなと思います。
とても責任は重大だし、影響力もあるんだなと日々思っています。

だから潰れてしまわないように、暴走しないように、YouTuberの会という形で同じメンタル系のYouTuberの人と集まって、いろいろ議論をしたりケアし合ったりしています。

今までのメディアではできなかったことが、こういうYouTubeを使ってできるようになっているということです。

今困っていること

今自分が困っていることが4つあります。

1つは時事問題の扱いですね。これはまた後で詳細に話そうと思いますが、時事問題をどうやって扱うのか、どういう風にYouTubeで扱うのかということを考えなければいけないなと改めて思いました。

2つ目は、調べたいときに正しい情報、適切な情報を見つけてもらえるかというのがポイントです。
今、検索システムがうまく回っていないんですよね。
Google側もそうだし、YouTubeの検索システムも同様で、アルゴリズムをいろいろやるんだけれども、業者とかアルゴリズムの裏を取る人がいて、本当に患者さんが知りたい情報をダイレクトに見つけられなかったりもします。

僕のYouTubeも同様で、検索よりもリコメンドで上がってきたものを見たほうが効率的だったり、とにかくいろいろたくさん動画を撮っているのですが、適切な人と適切にマッチングできているとは思えないので、ここも今悩んでいます。
ただ、このマッチングに関しては益田裕介の努力というよりは、GAFAMの努力で解決する方が早いかなと思うので優先順位は低いとは思っています。

次は治療プログラムです。
オンライン上での治療プログラムをどうやって進めていくのか、ということは最近考えています。
どういう動画の連動をするのが一番効果的なのか、どういう動画を続けて見てもらうのが治療として良いのか、それをプログラムに移すにはどうしたら良いのか、ということも考えています。

でもこれもなかなか難しいです。そこまで手が回らないというのもあります。
ただ、患者教育の中で、それがオンライン上で気軽にいつでも受けられたら、本当に治療的にすごく良いと思うので、これも今考えているところです。

あとはオンラインコミュニティの運営です。
YouTubeのコメント欄もそうだし、メンバーシップのオンライン自助会もそうですが、どうやって運営するのがいいんだろうとか、どれくらいのお金が集まれば、どれくらいの人を雇ってうまく回していけるのだろう、ノウハウはどうやってためていけばいいのだろうということを日々考えたりはしています。
これも結構ややこしいし、難しいですね。
そんなことを考えながらやっています。

時事問題の扱い

時事問題の扱いですが、これはどういうことなのかというと、やはり市民議論、皆がやっている議論に精神科医は参加すべきなのではないかということです。

そうしないと憶測で適当な情報が流れたり、勝手にあいつは発達障害だったんだとか、犯人はそうだったんだとか偏見や誤解を増幅させかねないので、そういうことはとても重要だと思います。
市民議論に参加しないというのはそもそもダメで、議論に参加すべきだと思います。

多くの人はマスメディアやTwitterなどの短いメッセージで交わされる低俗な議論にうんざりしているんだろうなと思います。
マスメディアはちゃんとした情報を伝えなかったり、マスに向けているので僕が話したいと言っても2、3分しか時間を取れないのです。
そうすると、ちゃんとしたことを伝えられないんですよね。
それならばYouTubeできちっとやった方が良いというのもあります。

Twitterや短い情報しか伝えられないメディアだと、どうしても低俗な議論にしかなりません。
低俗な議論のやりとりで感情が刺激されて、妙に白熱して、相手は短い言葉しか使えないから相手が馬鹿に見えるんですよね。
だから優越感に浸れるのです。相手は自分が知らないことを喋らないので。
そうするとどんどん低俗になっていって、だけど自尊心が満たされる。それで腹は立つ。
でもこういうものにうんざりしていると思うんですよね。

自分が知らないこと、自分よりその問題について考えてきた人ともっと会話をしたい、というニーズがあるだろうし、話を聞いてみたいというニーズはあると思います。
それは聞くのは苦しいし、知る痛みもあるし、面倒だけれどもニーズはあると思うし、治療的だと思います。

「哲学カフェ」みたいなものを求めている人たちは多いなとコメント欄を見たり、臨床をしていても思います。
患者さんたちというのは、治療者側はついつい下に見て、そこまでのことを考えないだろうとか考えたくないだろうとかバカにしてしまうところが人によってはありますが、僕はそうは思っていません。

本当はそういう場所を求めているし、心の底から自分がどうして生きているんだろう、自分がなぜ苦しいんだろう、この人はどうして苦しかったんだろうといったことを話し合う、そして自分が感じたことを言ってみる、そういう場所を求めているんだろうなと思います。

これはすごく臨床的な行為なんですよね。
なので時事ネタを扱うとか市民議論的なことを診察室でやる、そうすると今まで甘えていた人やひきこもっていて親のことを恨んでいた人が、実はこういうことに関してはすごく大人の意見を持っていて、そしてその議論をきっかけに自分のことを反省するということもよく起きます。

臨床的にもすごく重要な行為なので、市民議論に参加する、時事ネタを扱うということは、YouTubeでもやっていきたいなと思っています。

時事ネタの扱いで気をつけること

では、時事ネタを扱うにあたってどういうことに注意しなければいけないのかというと、主に3つかなと思います。

・診断、評価はしない
まずはゴールドウォータールールに関する話題です。
診察してない人のことを診断しないし、心理学的なアセスメント、評価はしないということはとても重要です。

この人は他罰的な人間なんだとか、幼稚なんだとか、そういうことをメディアや多くの人の目に触れるところで勝手に犯人のプロファイリングをしないというのはとても重要です。
どこまでわかるのかという話です。
いろいろな資料を集めたところでわからないですよね。診察してないのだから。
わからないことを言ってはいけないというのは当然のことです。

そしてわかったとしても、今度はプライバシーの問題があります。
犯人とか、その人にまつわることを言ってはいけないというのがあると思います。

・逆転移に注意
次に逆転移の問題ですよね。
自分の思っていること、自分の気持ちを気付かずに言ってしまっているというのがあると思います。
例えば、父親に対する怒りが治療者側にあった場合、世の中のリーダーに対しての怒りをぶつけたり。
逆に父親に対して屈服している場合、もう勝てないと思い込んでいる場合は、変に屈服している。あの人は素晴らしかったと言ってみたりとか、そういう逆転移があったりします。
それで情報が歪められる可能性もあります。

・意見を言う危険、恨み
意見を言うことの危険や恨みを買うということです。
精神科の領域はやはり狂気の世界なので、幻覚妄想に支配されている人たちも少なくはないですし、間違って理解されることもあります。

そういう中で、ネット上にいるシンボルのような人が危険な目に遭うということはあるのではないかと思います。
恨みを買う、危険な目に遭う、脅されることもあると思うので、ここも注意が必要かなと思います。

市民議論に参加することも必要だけれど、注意しなければいけないこともある。
どこまで話せるのか、どこまで話せないのか、そもそもこの時事ネタを通じて患者さんたちに何を知ってもらいたいのか、何を考えてもらいたいのか、やはりゴールを考えながら喋ることはとても重要だと思います。

とにかくYouTubeという広場の利用はすごく重要ではないかと思います。
テレビやTwitterにはない側面です。

言葉では喋っているけれど表情では違う意味を持たせたりすることが動画ではできます。
YouTubeのコメントはTwitterよりも長くコメントをくれるのでいろいろなことがやりとりできるので、ここは利用した方がいいなと思います。
YouTubeを見ている人が多いですからとても重要だと思います。

1人のインフルエンサーを中心にしていけば、Twitterのように流れるのではなく、毎回同じ人が来て同じメンバーでディスカッションできますから、とても理解は深まると思います。

精神科YouTuber、インフルエンサーの役割や今後の見立て、そして市民議論にどうして参加すべきなのか、テレビやマスメディアとは違って、ここでどうして活躍すべきなのか、僕なりに考えたことをお話ししてみました。またコメント欄で意見をください。


2022.7.29

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