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感情コントロールと、体得する方法

00:00 OP
01:20 感情のコントロールは技術
03:12 本能・感情 vs 理性
05:00 矛盾する様々な考えが浮かぶ
06:31 感情は8割正しいアルゴリズム
07:38 理性でコントロールする
11:11 技術を体得するステップ

本日は「感情コントロールと体得」というテーマでお話しします。

精神科に通われている患者さんは、感情のコントロールが苦手な人がたくさんいます。
不安に支配されて行動できなくなってしまう引きこもりの人や、気分の波が激しい人、衝動性を抑えることが苦手な人、怒りを抑えることが苦手な人、リストカットしてしまう人、過食嘔吐、アルコール、ギャンブル依存になってしまう人、いろいろな人がいます。
なかなか感情のコントロールが難しい、自分ではなかなかコントロールできませんと相談に来られるわけです。

うつ病や躁鬱病といういわゆる「内因性疾患」と呼ばれる病気であれば、薬物治療によってコントロールが利くようになるのですが、それ以外の病気の場合や、うつ病、躁うつ病であったとしても、この感情コントロールという技術を学ばなくてはいけません。

感情のコントロールは技術

感情のコントロールというのは、誰しも身につけられる「技術」ではあるのですが、生まれつき得意な人と苦手な人がいます。

運動神経などと一緒です。数学ができる、勉強ができるとかとも似ているかもしれません。
生まれつき得意な人は得意だし、苦手な人は苦手なのです。

例えば境界性パーソナリティ障害、人格障害と呼ばれる疾患の人たちは、生まれつき感情コントロールがかなり苦手です。
下手をしたら赤ん坊の頃から感情のコントロールが苦手で、育てにくい子供だったというようなことが知られています。
ですから、生まれつき感情コントロールが得意な人と得意じゃない人がいる。そ
れは体質としてわかっています。

ただ、薬物治療だけでは治りません。
なので技術として身につけていきましょうということになります。

この話をするときに、どういう形でイメージを持ってもらえばいいのかというのは常に僕ら精神科医は考えます。
ドクターによって説明の仕方は異なるのですが、僕も患者さんに合わせていろんな小話というか説明の話を考えたり、こういう風に伝えたらわかりやすいかなという、科学的というよりは科学半分・創作半分みたいな話をします。

脳というのは科学的にまだわかってないことがたくさんあるので、科学的な事実とそこまで違わない範囲内であれば、ある程度患者さんにわかりやすいように創作して伝える、デザインし直すことは許されているところがあります。

本能・感情 vs 理性

どういう風に感情やコントロールすることをイメージしたらいいのかということですが、僕は最近こういう説明の仕方をしています。

今でこそ「本能・感情」と「理性」というのは分けられるものではないと言っているかもしれないですが、少し前までは感情・本能と理性は別のものとして分けて、理性によって感情や本能的なもの、そういう原始的な力を抑えるべきだという考え方が主流でした。

ですが、こういう理性絶対主義というのは人類を誤った方向に導きました。
例えば戦争を起こしてしまったとか、人間の万能感、西洋的というか理性絶対主義のせいで戦争や世界大戦という悲劇が起きてきたわけです。

だから理性というのはそこまで絶対的なものではないし、理性と感情は分けられるものでもないということがわかってきて、だんだん資本主義の発展とともに理性と感情はぐちゃぐちゃになって理性絶対主義の地位がどんどん下がっています。

でもかつては、本能や感情と理性は戦って、理性というものを尊重するような文化背景がありました。
今はやりたいことをやればいい、好きに生きればいいなど、感情や本能を曖昧に許しているところがあります。
そもそもそういう考え方があったんだよということです。

矛盾する様々な考えが浮かぶ

人間の脳の中というのは、そもそも矛盾する様々な考えが浮かぶものです。
脳の中は忙しいんですよ。
「私の頭の中は混乱してるんです」「何かぐちゃぐちゃしているし、憎んでいると思ったら愛しているし、そう思ってたらなんか過去の嫌なことを思い出すし、私の頭の中がぐちゃぐちゃしてるんです、病気でしょうか」とよく言われるのですが、病気のこともあれば、そもそもみんなそうなんだということもあったりします。

脳の中はぐちゃぐちゃしているのですが、ある程度理性とか意識のフィルターをかけることによって、一つの心ということになっています。でも本来は人間の心の中にはたくさんの心があって、それがぐちゃぐちゃ動き回っていて、だけど意識に上がってくるときにはなぜか1つの「人格」というものができあがっている。
そういう不思議な現象なんですよね。

でももう少しぐっと踏み込んで行って内側を集中して見ていくと、自分の中にはいくつもの心があったり、いくつもの矛盾した考え方が散らかって、いろいろな方向に動いているというものが観察できます。

そういう中でどういう意見を重視するのか、どういう考え方、どのベクトルを重視するのかというのが理性がやるべきことです。

感情は8割正しいアルゴリズム

そもそも感情というのは8割正しいアルゴリズムみたいなものです。
だから生物が生きる上で感情や本能に従っていればだいたい当たります。

寒いと思えば羽織った方がいいし、喉が渇いたと思ったら飲んだ方がいい、お腹がすいたと思ったら食べた方がいい。
理性で「いやいや、違うだろう」とやったら喉が渇いて死んでしまう、熱中症になって倒れてしまう。
でもだいたいそれに従っていれば合っているのです。
それは何億年、何百億年とかけて、その生物が本能や感情という形で生物的に有利なものをアルゴリズムとして蓄積してきた結果なのです。

ただ、間違っていることもあります。
食べたいなと思って食べていたら、糖尿病になる、太りすぎる。
食べたいなと思って食べたり、休みたいなと思って休んでいたら、ライバルとの競争に負けてしまって受験戦争で負けてしまう。

理性でコントロールする

感情に支配されていたらうまくいかないこともあります。
悪い男だけ好きになってしまいズルズル続いてしまうのも、感情に負けているということです。
共依存のようになってしまっているのも悪いことなのです。

だから感情だけに支配されず、やはり理性によってコントロールしてあげなければいけないということがあり、精神科はその理性の力を強めてあげる。
感情と理性を分けてあげて、理性的に考えていく力をサポートするのが精神科の役割だったりもします。

いやいや益田はね、感情と理性では理性を重視する方が良いと言うかもしれないけど、感情の方が大事なんじゃないか、人間的なんじゃないか、悪い男だと理性で思っていても好きだったら仕方ないじゃないか、好きという気持ちを大事にしようよと思うかもしれません。
その方が幸せなんだと思うかもしれないけれども、基本的には理性を重視した方が良いです。

正しい理性になるようにバイアスを取ってあげる。
バイアスを取って、合理的に冷静に判断できるようにサポートするのが精神科の役割です。

そもそも感情や本能のアルゴリズムでは判断できないことを判断するために、大脳皮質というか理性があるわけです。
感情に支配されている動物たちはたくさんいますよね。
でも人間だけが感情に支配されず、理性の力で抑え込んで感情とは真逆の行動を取ることができるようになりました。

走って疲れて、もう嫌だなと思っても走り続けて餌を取るとか。
それは人間だからできることなのです。
これが人間の「強さ」であって、だから人間というのはこれだけ繁栄しているのです。

もし人間の理性がそんなに役に立たないものだったら、感情に支配された方がいいのであれば、他の動物の方が人間よりもはるかに強い筋力があったり、強い生命力を持っているので繁栄しているはずです。

もちろん、言葉、他の技術、道具とかいろいろあるかもしれないけれど、僕はそう思います。
やはり理性というものがあるからこそ、人間は繁栄できている。
いろいろな状況下でも正しく判断できるのかなと思います。

何か出来事があったとき、ワッと思ったときにいろいろな考えが浮かんで「嫌だな」「辛いな」「悲しいな」という思いと、「でも頑張ったほうがいいな」という思いがあったときに、やはり理性で客観視して、理性の力を持って動く。
そして理性できちんと感情をある程度抑え込んであげることは重要です。

もちろん、理性理性であると息苦しいし、疲れてしまうし、それが精神の疾患を生み出したという部分もあります。バランスが大事です。

ですがあまりにも理性の力を無視して、「薬で治してくださいとか」「今困ってるのですがどうしたらいいですか」という受け身のことを最近話されることが多いので、何かこういう概念が忘れられているなと思ったので今回動画を撮ることにしました。

とにかく理性でコントロールする視点もとても重要です。

技術を体得するステップ

精神科の臨床において、理解したらできるのかというと、ただ理解してもできません。

「感情コントロールが大事なんですね、でもできないんです」と言われます。
それはできないんだよね、これは技術なので。

何度も何度も練習して身につけなければいけないのです。
サッカーでうまくなるとか、PKのときに緊張しないように冷静になってシュートを決められるとか。
それと一緒で、コントロールをするにはトライアンドエラーを繰り返すことが重要です。

認知行動療法的なステップ分け:
STEP1. 気づく
STEP2. 理解する
STEP3. 戦略・行動
STEP4. 失敗・反省
STEP5. 体得

失敗、反省してまた計画を立てて行動するということを繰り返して、最後に体得するところに至ります。

臨床的には「今、あなたはこういうことじゃない?」と気付かせてあげたり、「こういう風に理解したらいいんじゃない?」ということを説明することはできます。
ですが、実行や反省というのは診察の中だけではなかなかできず、認知行動療法であればホームワークという形でやったりします。

カウンセリングであれば、診察時間が長いので、気づく・理解するというところから実際にカウンセラーとの中で会話をしていく、会話の中で失敗してみるとか嫌な思いをぶつけてみるとかやって失敗してみたりとか、カウンセラーの中で動いた心を相手に伝えたりなどして反省してとやっていく。
step3、step4の部分も起きます。
臨床の中でも少しは起きるのですが、イメージ的にはこんな感じです。
やはり体得に至るまでには、知識やモデルを身につけるとか、経験値を積むこともとても重要です。

頭でわかっても、リラックスしないと覚えられないんですね。
厳しいとか、自分はダメだとか思っているところだと、身につくものもつきません。
スポーツとか一緒で、楽しくやらないと身につきません。
恐怖の中だと身につかないものは多いと思います。
体力は身につくかもしれないけど、創造的なプレーは身につかないと思います。

僕らのカウンセリングや診察も、楽しくなければいけない。
楽しいというか、愛情があって、愛されているという実感があって、安心感がある空間を作って「ああ、自分は大丈夫なんだな」「失敗しても許されるんだな」「理解されているな」という思い、共感を得ながら、体得に結びつくということなのかなと思います。

理性でやりなさいというのはとても冷たく聞こえるかもしれないけれど、本当である。
でも冷たくならないように、愛情的なものは他の要素で僕らは補っているということです。

感情コントロールや体得と言って、「カウンセリングとか話とか、理解によって身につけていくものなんですか?」とか、「不安な気持ちを、今こういう気持ちなんだ、と自分に気付いて、自分がなぜ不安なのか、それは親子関係から来たのかとか、そういう理解から身につけていくものなのですか?」などいろいろ言われそうですが、それだけでなく、マインドフルネスとか、いろいろなアプローチももちろんあると思います。

集団療法とかいろいろあるとは思いますが、精神科でよくやられているのは、基本的には対話から学ぶ、対話を中心に感情コントロールという視点を身につけ、自分の日常生活の中でトライ&エラーを繰り返すということになっていくのかなと思います。

今回は、どうやって感情をコントロールしたらいいのか、どうやってそれを身につけたらいいのか、というテーマでお話ししました。

具体的な話がなく抽象的なのでちょっとわかりにくいかもしれないですが、コメントをわかったよとかわからなかったよというのをいただければ、また後日ブラッシュアップして動画にしたいと思います。


2022.8.8

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