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【夏休み企画】YouTubeをどうやって撮っている? これからYouTubeを始めたい医療従事者へ

00:00 OP
00:53 YouTubeを始めたきっかけ
02:06 フィールドワークの手法と似ている
06:52 YouTube上にもプロの精神科医を
07:44 精神科医インフルエンサー
14:01 社会的影響力

本日は夏休み特別編です。
普段僕がどのような形でYouTubeを撮っているのか、どういう思いでYouTubeを撮っているのかをざっくり解説してみようと思います。

精神科のドクターや看護師さん、心理士さん、PSW(精神保健福祉士)の人で、これからYouTubeを始めたいと思っているけれど、どういう風にやればいいのかわからない人や困っている人も多いと思います。
そういう人たちに向けて、僕の普段やっていることを紹介できたらなと思います。

YouTubeを始めたきっかけ

もともとなぜYouTubeを始めたかというと、患者さんに向けた心理教育のためです。
診察時間はどうしても短いので、病気を説明する時間がなかなか取れません。
説明する時間が取れないので最初はプリントを渡していました。うつ病とはこういうものですよとか、抗うつ薬はこういう副作用があるんですよとか。
ですが患者さんは「紙はいらない」と言います。ゴミになるからいりませんと言われたりして、なかなか読んでくれませんでした。
なのでホームページに文章で書いていましたが、それもあまり見てくれませんでした。
そこでYouTubeを始めて、動画で説明するようにしました。そうしたら結構見てくれた、ということです。

そうするとアクセスも増えて、クリニックの広告的な意味もあって、どんどんアクセスが増えていったのです。
それが今大きくなって今日に至るという感じです。

フィールドワークの手法と似ている

どういう形で動画を撮っているのかというとです。

まず日々の臨床の中での疑問です。
これどうやったらいいのかな?とか、患者さんからの質問を受けて、こういうテーマで動画を撮ろうかなということをまず考えます。仮説を立てると。
それを本当だったら診察室の中で伝えたいのですが、なかなか伝える時間がないので動画にしているということです。

これに対して文献調査という形で教科書を読んだり、論文を調べたり、ガイドラインを見たりします。
臨床をしているとわかると思いますが、精神医学の範疇、心理学の範疇、患者さんのことは説明ができないですし、それだけの知識だと臨床を回せません。
臨床的な疑問は解決できないのです。
それ以外の本、人文系の本も読んだり参考にしたりします。

インタビューと書いていますが、臨床現場で感じていることとか、他の患者さんで感じたこと、他の患者さんでうまくいったこと、他の患者さんでうまくいかなかったことなどを思い出したり、カルテを見直したりします。

そういうのを全部ひっくるめて分析・報告という形でYouTubeを撮って公表している、というのが今の流れです。

この「仮説」「文献調査」「インタビュー」「分析・報告」と青字で書いているところが何だと思うかもしれませんが、これはフィールドワークのやり方、報告の仕方から取ってきました。
社会学や文化人類学での質的な研究で行われる手法です。

仮説を立てて文献調査をして、現地の人のインタビューを取って、場合によってはアンケートを取ったりして分析報告する。レポートにしたり、論文にしたりするということです。
このやり方に僕らがやっているYouTubeも似ているなと思ったので、これを参考にまとめてみました。

フィールドワークのやり方を見ると、すごくスッキリしました。自分がやっていることがよくわかって、大変スッキリしました。
臨床現場で起きていることは、本当にフィールドワークなんだなというのは思いました。

一般的な論文やレポートの方向と違うのは、YouTubeはすぐにコメントという形でフィードバックが来るところです。
アンケートも場合によっては取れるので、そういうものを取ってまた仮説に戻って次の動画に備える、日々こういう流れを繰り返しているということです。

いわゆる研究者の人たちと僕らが違うのはここです。
臨床現場を知っているかどうかです。

テキストだけでディスカッションをしているとか、実験をしてデータを取って何かを言っているのではなくて、僕らはやはり質的な要素、臨床現場での体験をダイレクトに反映することができるので、それが僕らの強みではないかと思います。

ただ、質的な研究というものは倫理的な問題を含みます。
例えば、患者さんのプライバシーをどこまで公表していいのか、それを言っていいのか、悪いのか。
科学的に正しいのか、正しくないのか。
いろいろな問題が含まれます。

ここら辺の話をするとややこしいので今回は割愛しますが、そういうことは松崎先生らとチームを組んで、メンタル系YouTuberの会という形で月1でミーティングをしています。
そういう形でブラッシュアップしながらこの活動を続けているということです。

皆さんも日々疑問に思うことがたくさんあると思います。
勉強したり、次から臨床に活かそうと思っているのですが、やはりアウトプットしないと勉強はなかなかできません。
インプットしにくいですよね。
僕もあまり勉強が好きじゃないですし、ダメなやつなんです。
だからYouTubeをすることで無理やり勉強しているというのはあります。
アウトプットが一番の勉強ですから。
そして僕のアウトプットは皆さんの役にも立つので、一石二鳥かなという感じです。

YouTube上にもプロの精神科医を

もうちょっと踏み込むと、僕がYouTubeを始める前は、YouTube上にプロの精神科医はそんなに多くありませんでした。
当事者YouTuberの人がやはり影響力がありました。
当事者YouTuberの人が悪いというわけではありませんが、医学的に見てちょっと違うなとか、臨床現場の意見を反映していなくて個人的な意見が強すぎるなとか、そういうのもいろいろありました。

臨床をしていても、当事者YouTuberの言っていることやインターネットで調べてきたものを否定したり訂正するところから診察が始まることも結構多くありました。
だからやはりYouTubeを精神科医もやるべきなんだなと思い、始めました。

精神科医インフルエンサー

2019年12月14日から始めているので、だいたい2年半ぐらいです。
やりながら、インフルエンサーとはどういうものなのかとか、精神科医がインフルエンサーになるというのはどういうことなのか、ということを覚えていきましたし、体感してきました。
言葉にしてみると単純なことですが、ここに至るまでは結構大変でした。

精神科医インフルエンサーとはどういう役割があるのかというと、1つは情報発信機能を持っているということです。小さなメディアなんです。
メディアとして情報発信をしていたりします。

もう1つの作用としてはコミュニティです。
インフルエンサーを中心に、今のインターネットやYouTube、Twitterもコミュニティが出来上がります。
それを見ている視聴者さんが集まってきて、視聴者さん同士がコミュニケーションをしあう。
そういうコミュニティの中心であり、シンボルになってしまうということです。
これは良くも悪くも避けられないです。

あとはサブ主治医であるということです。
結局、毎日動画を発信したりすると、どうしても影響力は高まってしまうし、主治医機能を持ってしまいます。
そういう自覚は必要だなと思います。

この3つが精神科医インフルエンサーの役割です。
とても責任が重いですよね。重いんです。
重いので、滅入らないようにYouTuberの会で集まっているということです。
滅入るんですよ、これは。インフルエンサーをやることはとても大変ですから。
大変なんだけど、楽しいですよ。
大変なんだけど、楽しいので皆さんやってくださいね。
始めてもらいたいのですが、結構大変なので会を作っていますから、一緒に慰めあいましょう。

・体系化、治療プログラム
日々単発の問題を考えて答えるということを2年半やっていたのですが、今後はもうちょっと体系化したものを発信できたらなと思います。
治療プログラムに発展させるにはどうしたらいいのか、ということを僕は今検討しています。

でもなかなか治療プログラムは難しいなと思いました。
デイケアでやっていることをそのままYouTubeにしたらいいんじゃないかと思ったのですが、それだと視聴回数が稼げなかったり、埋もれたりしやすい。
YouTubeで治療プログラムをやるということは、もともとあるプログラムをそのまま持ってくるだけだとうまく機能しなかったりするので、そこはどういうアレンジをしたらいいのか考えています。

・時事問題
あと、時事問題の取り扱いですね。
世の中には精神科が注目される場面があります。
例えば、芸能人とか有名な方が自分の病気を告白したときや、社会的な問題になったときです。

精神科の病気が社会的な問題になったとき、社会的な注目を偶然のきっかけで浴びるとき、何かしらの形で精神疾患は注目を浴びるときがあります。
そういうときに僕らは適切な情報を提供できるのか、ということがとても重要じゃないかと最近は考えています。

これをもしやらないと、他の人がやってしまいます。
プロじゃない人がいい加減な情報を流してしまうこともあるので、やはりやらないといけない。
ただこれを扱うのはとても難しいです。
デリケートな話題のときもあるし、危害が加わるかもしれない。

インフルエンサーやその家族に危害が加わるかもしれない。
何より患者さんたちのプライバシーの問題もあるので、すごくデリケートで難しいです。
でもせっかく注目を浴びている場面なので、うまく利用すべきなんだろうと僕は思っています。
僕らの責務ではないかと思います。

患者さんたちは注目されないし、なかなか見てもらえないんですよね。
精神疾患というのはどこまでいってもマイノリティなのです。少数の弱者なのです。

少数の弱者は、民主主義や資本主義の中では常に不利な状況に置かれます。
民主主義の中では少人数なので声がかき消されやすい。
民主主義では当たり前ですが多数派の意見が尊重されるので、マイノリティの人たちは迫害されてしまいます。

資本主義の論理でも弱者であることや人数が少ないことは無視されがちです。
資本主義において有利なのは多数派であり、もしくは少数の超大金持ちです。強者ということです。
どちらもないので迫害されやすいし、もみ消されやすいし、無視されがちです。

だからこういう場面できちんと僕らが声を出すことはとても重要です。
患者さんの気持ちを代弁していく。
インフルエンサーは代弁するのが仕事ですから、きちんと仕事をするべきなんだろうなと思っています。

あとはコミュニティの機能があるので、自助会を運営できたらいいなと思っていて、今自分で始めています。

2022年3月24日から始めましたが、これもやりながらノウハウをためていって皆さんに還元したいなと思います。
ノウハウやルールがたまってくれば、コピペして他でも使えます。
コピペしやすいように規約やルールを作っていますから、興味がある方はお声掛けください。
あとはサブ主治医とはどういうものなのかなど考えたりしています。

社会的影響力

今後の予定ですが、社会的影響力が増してくるんじゃないかと思っています。

メディアというものが変わっていく、我々の生活が変わっていく中で、必然的に後ろから背中を押してもらうような形で社会的な影響力は増してくると思います。

そういう中で動画制作のサイクルやインフルエンサーとしての情報発信をどうやって効率的にやっていくのか、どうやってより良いものを作っていくのか、というのを考えたりしています。

一つの解決策は組織化です。
例えば、文献調査チームを作る、インタビューチームを作るという形で組織化していくことで、より質の高い情報発信ができるようになる。

あとは多様化です。
僕と同じようなことをする人が増えていけば、いろいろなパターンのものが出てきます。
精神医学やガイドラインという基本は一緒ですが、それに付随する何かはバリエーションが出てくるので、それも患者さんにとってはすごくいいんじゃないかなと思います。

いずれにせよ、文化として根付かせるということはとても重要だと思うので、いろいろな人にYouTubeをやってもらって、選択肢が増えていくことはとてもいいことなんじゃないかなと僕は思っています。
僕一人で独占したいとはまったく思っていなくて、早くいろんな人が出てきて、引退したいとは言わないですが、みんなで苦労を分かち合えたらなと思います。
引退したいとは言わないですが、頻度を減らすとかそういうのはしたいなと思っています。

今回は、自分がどういう形でYouTubeを撮っているのか、どういう思いでYouTubeをやっているのかを動画にしました。

興味がある方は、この夏休みをいいきっかけだと思ってYouTubeを始めてみるのはどうでしょうか。


2022.8.14

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