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発達障害の診断について解説します 

00:00 OP
06:15 DSM-5の診断基準
09:05 心理検査
12:01 QEEG、光トポグラフィ
15:14 どこからが病気?

本日は「発達障害の診断およびその流れ」を解説します。

普段僕はどういう風に発達障害を診断しているのか、そして治療に結びつけているのかを解説できればなと思います。

皆さんは、発達障害の診断は難しい、人によって言うことが違う、ドクターによって言うことが違う、インターネットでも書いてあることが違うなど、混乱していると思います。

きちんとしている病院だったら心理検査をする、きちんとしているところだとQEEGや光トポグラフィーなど特殊な検査器具を使って正確に診断してくれる、と思っているかもしれません。

たぶん混乱されている方が多いと思います。
今回はオーソドックスな診断のスタイルをきちんと説明しようと思います。

DSM-5の診断基準

基本的には発達障害のみならず、現代的な精神科はDSM-5という診断基準に基づいて診断されます。

ガイドラインに沿った診断の仕方が良いのか悪いのかというのは賛否あります。
ですが一応、主流派の意見としてはこれに基づいて診断しましょうということになっています。

DSM-5に基づく診断の仕方は何かというと、誰が診断しても誤差が生じないように診断マニュアルが作られています。

例えば、ADHD・注意欠如多動性という病気は、主に不注意と多動性・衝動性という症状から成り立ちます。

この「不注意」の項目で、9つのうち6つ以上が当てはまっていれば、「不注意」という病的な症状があると考えます。
例えば「学業、仕事、または、他の活動中にしばしば綿密に注意することができない。また不注意な間違いをする」これがマルかバツかということです。
その例として、細部を見過ごしたり見逃してしまう、作業が不正確である、sとあります。
例えばテストに自分の名前を書かずに提出してしまうことがしょっちゅうないですか、とかそういうことです。
これらが9つのうち6つ以上ある。

他に、多動性・衝動性に関することが9つのうち6つ以上ある。
例えば「ソワソワしていませんか」「座っていられないことがありませんか」「行列に並ぶことは苦手ですか」などいろいろ聞きます。これらの項目に当てはまったらADHDということになります。

ASD・自閉スペクトラム症も同じです。
コミュニケーションの難しさがありますか、興味の偏りや儀式行為、何度も同じことを繰り返してしまうなどありませんかと聞いて、この項目にあてはまったらASDということになります。

診断基準が決まっているので、基本的にはこのマニュアルに沿ってやれば、経験のある精神科医であれば誰でも診断ができるということになっています。

マニュアル通りに聞いていても、ちょっとニュアンスが伝わりにくかったり、わかりにくいこともあります。
なので普通の病歴をきちんと聞きます。
これまで困っていたことや今の困り事をきちんと聞いたり、子供の時とか生い立ちの話も聞きます。

これは診断基準に当てはまるか当てはまらないかを、もう一回点検するために聞いているということでもあるし、同時に他の病気の可能性はないのかを確認するためにも聞いています。

精神科の診断というのは、発達障害のみならず、うつ病であろうが統合失調症であろうが、躁うつ病であろうが人格障害であろうが、基本的には病歴をしっかり聞いて、その上で診断基準に当てはまるかどうかを判断します。

他の病気の可能性を除外するために、例えば採血しないとわからない病気、甲状腺機能低下症や身体疾患は採血で除外しないとわからないこともあるので採血をしたり、てんかんは脳波を取らないとわからないので検査を行うこともあります。

それから、少しわかりにくいのがWAIS(知能検査)です。
知的障害であれば、生い立ちや学歴でわかったりしますが、境界知能になるとちょっと怪しいことがあるので、それはWAISを取って判断することが多いかなという感じです。

これが基本的な精神科の診断の流れです。
経験のある精神科医が、マニュアルを用いてやっているということです。
基本的にはここだけで診断ができます。

初回で診断ができることもあれば、初回の診察室の様子だけだとわからず何回か診ないとわからないという人もいます。
本人の言うことも変わってきたりするので、これまでの困り事や子どものときの様子など、何回か診察しないとわからないということもあります。

心理検査

では、心理検査をするかしないか、他の心理検査をする必要がありますかとか、Connersもやる必要がありますかとか、これは実際何とも言いがたいです。
病院によっては心理士さんがいるとか、心理検査をする体制があれば検査は取れます。
ウチは全然取れません。僕しかドクターがいませんし、心理士さんもカウンセリングが入ってしまって心理検査はなかなか取れないのでやっていません。

僕は操作的診断で診断できると思っているので、基本的には取りません。
ではなぜ心理検査が必要なのかということですよね。

心理検査がなければいけないという人たちがどうしているのか。
専門家であればあるほど、「心理検査をした方が良い」と言うのはなぜかということです。

これはポジショントークも入っています。
自分たちがその心理検査を研究してきたし、そこにアイデンティティがある。
発達障害は比較的新しい病気です。
他の人たちが発達障害をよく知らないときに、自分たちが心理検査を用いて研究してきた。これが正しいと思って研究してきたし、これが正しいと思っているから臨床してきているわけです。

そういう熱意のある人たちだから、そういう言葉になっていく部分はどうしてもある。
熱意があればあるほど、DSM-5だけで診断をしている人たちがダメなんじゃないかと思ってしまう部分もあります。
でも現実的なことを言うと、なかなか心理検査までは行かないというのはあります。

もう少し深い話をすると、心理検査みたいな客観的な図表、客観的な面接構造を作らないと、きちんと話を聞けないんじゃないか、という考え方の人もいます。

僕は患者さんは言うことが変わるし、心理的検査をしても言うことはコロコロ変わるものだと思うから、何回か話を聞きながら、なんとなく全体の流れでわかっていけばいいんじゃないのと思うタイプです。

ですが、人によってはそれだと誤差が出るし、間違いが起きるかもしれないから、きっちりと決められた基準で決められた質問方法で話を聞いていかないと、正しい診断をできないんじゃないか、客観的な見方はできないんじゃないか、と考える人たちもいます。

心理士さんの中でも、特に心理検査は心理士さんたちはすごく勉強して学びますから、心理検査に重きを置いている人たちはたくさんいると思います。
研究畑出身の人がよりそう思うと思います。
そこでポジションによって結構意見が違ったりします。

ですが、最低限やらなければいけないことの中には含まれていません。

QEEG、光トポグラフィ

では次にQEEGです。
脳波検査や光トポグラフィーはどうなのか。
そこからの流れでTMSという磁場療法はどうなのかというと、これもまだまだ臨床レベルとは僕は思えません。
研究レベルの話です。

研究レベルで、もしかしたらわかるかもね、わかりますよ、という論文がいくつか出ています。
そのレベルなので、まだまだ臨床的にどうなのということがあります。
それは検査もそうだし、磁場療法もそうです。

研究レベルだから医療としてダメなんだとか、臨床的に認められているものでないとダメなんだと言うと、相手の思うツボなのです。
ですから否定はしにくいです。

抗がん剤治療だったら、まだ保険の認可は下りていないけど有効な薬はありますよねと言われると、ぐぬぬとなってしまいます。

確かにそうなんだろうなと思うけれど、やはりお金がかかりすぎるのが問題です。
困っている人は藁をもすがる思いで、それが研究レベルであっても、研究では認められているというとびっくりするじゃないですか。
何か良いものだという気がして、ついついお金を払ってしまうけれど。

でも、研究的に認められていても臨床応用できないものは大量にあります。
そこが研究をしたことのない人たちにはよくわからないですよね。

研究で認められてるということは、将来的にすべて臨床的に応用できるものだと思いがちですが、そういうわけではない。
なかなか臨床応用は難しいことでもあります。

違うと言っても、これが嘘だったらいいんですよ。
100%嘘でモラルの問題だったら僕らも否定しやすい。
神様に祈れば良くなったという話だったら、科学じゃない、医学じゃないよねとすぐ言えます。
相手の土俵に立って言うのであれば、「エビデンスがちょっとある」ということになってしまいます。

ですが、科学は肯定するのも難しければ、否定するのも難しい。否定するための実験研究を用意するのも結構難しいので、なかなか撲滅は難しいということになります。
そういうものだと覚えてください。

どこからが病気?

結局、発達障害の問題というのは知的なものであり、本人の生まれつきのものでもあるので、伸び代というのがなかなかありません。
もし伸び代があるとすれば、それは発達障害ではなくて虐待の影響によるものや、うつ病による一時的な能力低下などになるので、伸び代は個人差はあると言えども、基本的にはあまりないというのが発達障害の発達障害たる所以です。
だから福祉導入や薬物治療が大事だったりします。

薬物治療で大きく改善することはないけれど、あった方が生活しやすい人がたくさんいるので使っているということです。

じゃあ病気はどこからなのかというのはよく聞かれます。
障害の程度ってどれぐらいなんですかとか、どこからが障害で、どこからがグレーゾーンなんですかと。

発達障害というのは誰でもあると言えばあるものです。
ミスをしない人はいないし、衝動的に何かをやってしまうことは誰しもあります。

年を取ったらミスは減るし、衝動性も落ち着く。
若いときには衝動性が高かったり、忘れ物が多かったりします。
それはそういうものです。
僕も10代のときより今の方が落ち着いているし、それはどんな人でも同じです。

では皆衝動性があるんだから病気はないんじゃないかと言われると、そういうわけではなく程度の問題です。
たとえば100人中、上位の1、2%の人たちは生活がかなり困難だったりします。
上位7%以内でも結構苦しかったり、いろいろな障害が起きたりします。
それで自分はダメなんじゃないかと思って、自尊心が低下してうつっぽくなることもあったりします。

一番上の層だけを障害と言うこともあれば、上位7%以上も障害というかグレーゾーンという形で治療していきましょうと考える人もいて、いろいろ違います。

例えば僕は「早稲田メンタルクリニック」ということで早稲田でやっています。
早稲田大学は超エリートじゃないですか。
地方出身の人で、地元のときには大丈夫だったけれど、大学の中に行くと皆が賢いからそこに埋もれてすごく自分のミスが目立つこともあります。

それは病気ではないのでは、相対的に見て優秀な集団だから問題が起きているだけで病気じゃないんじゃないかという考え方もありますが、でも本人は生きづらいわけです。
そういうときに薬を使ってあげた方がいいのか、薬は使わない方がいいのかというのは、ドクターの判断もあるだろうし、治療方針にもよると思います。

ただ、薬で何とかできるものもありますし、病気の特性を知ることで何とかできることもありますから、そんなに狭める必要はないんじゃないかなと思っています。
でも結構ここら辺も難しい問題です。
これは科学的というよりは社会的な問題でもあるし、治療方針の問題でもあったりします。

ちょっとわかりにくいんですよ。
立場によって言うことが違うのでわかりにくいのですが、基本的には診断基準に合っているかということがすべてです。
それにプラスして、立場によって、心理検査を学んできた人たちは、それを重視することも多いだろうし、それがないとだめだという意見もあるだろうし、QEEGなどの研究をしていた人たちはやはりそれが重要だという人たちもいると思います。
これを悪用している人たちもいるんじゃないかという噂もある。

そして、グレーゾーンの扱いというのもドクターによっても違うし、治療方針も変わったりします。
ただ基本はDSM-5だということです。

どうして僕がちょっと悪いやつもいると言うかというと、学会として声明が出ているからです。
学会の中で、悪用はあまり良くないんじゃないかという声明を出しているということなので、一応そういう風に言っています。注意喚起があったので言っていますということです。

今回は、発達障害の診断について動画を撮りました。


2022.8.16

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