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自分が傷ついているか、わからない人

00:00 OP
01:04 主観→客観
02:37 自分はすごく傷ついている
07:29 傷ついている証拠
08:20 自助会

本日は「自分が傷ついているかわからない人」というテーマでお話しします。

これは先日、YouTubeのメンバーシップ(自助会)の人たちと限定ライブをしたときに話題になったことです。

自分が感じていることや自分が今置かれている状況を客観的に見ようとしたときに、多くの参加者さんは、自分が傷ついているという事実を除外していました。

今どんな状況か客観的に考えてみましょうというときに、傷ついているという自分の存在を書かないのです。これは何でかなと思いました。

主観→客観

例えば、スポーツ選手が練習記録を書くときに、自分の健康状態、自分の今のモチベーション、自分のケガの具合など書き込みますよね。今の自分のフィジカルの状況はどうなのかとか。

会社で経営戦略を練るときに、自分の会社は資産がどれぐらいあるのか、資本がどれぐらいあるのか、借金がどれぐらいあるのかと書きますよね。従業員が何人いるのかとか。

なのに患者さんたちが今傷ついている状況や悩みの状況を書くときに、自分が落ち込んでいるとか、自分が傷ついているという状況を書いていませんでした。ほとんど書いてないんですね。
それに僕は改めて驚きました。

臨床場面でもよく思うのですが、自分たちがいかに傷ついているのか、なぜ傷ついているのかということに関して、改めて書こうとしない、もしくは改めて気づこうとしないという傾向があります。

僕はやはり主観的な出来事から客観的に今の状況を見るときに、自分はどうなんだろう、自分の今の状況は何なんだろうということを考えるべきだと思います。

家がこうなっているが片付いていない、親から虐待を受けていた、そういうのもありますが、今の自分の精神状態はどうなのかということを書いてみるべきなんじゃないか、とその場ではお話ししました。

自分はすごく傷ついている

今の自分の状態はどうなのかなというときに、「自分はすごく傷ついている」ということをひとつ書いてみます。

例えば僕だったら、腰が今痛いですよと。
ヘルニアがあって、去年の11月ぐらいからひどいですとか。
今の経営状況はこうです、YouTubeはこうですかいろいろ書いていくと思います。

このホワイトボードを書きながら、ふと思い出したことがあったのでちょっと自分の場合を書いてみようと思いました。

自分はすごく傷ついているということを改めて感じたことがありました。
自衛隊を辞めたとき、すごく僕の心は傷ついた状況にあって、それはなかなか気づけなかったことだったと思います。
その当時、僕も訓練というわけではありませんが、自分でもカウンセリングを受けていました。

当時その中で言葉を発して、発した後に改めて自覚したというのはあります。
自分は本当に傷ついているんだな、と思いました。
何度も何度も言って、言葉上、上滑りするような言い方もしていました。

僕も知識があるから、「こういう形で傷ついているんだと思います」「傷ついているから、今何か落ち着かないのかな」とかそういうことを喋っていたのですが、ある時に本当に腹の底から傷ついているという自覚を持てた瞬間がありました。

13年、高校を卒業して1年浪人を経て防衛医大に入るのですが、それで6年間学生生活を送り、それから7年ぐらいやって僕は自衛隊を辞めてしまいます。
9年間の義務年限があるうちの7年目で辞めてしまいます。

計13年自衛隊にいたんですね。
計13年いてそこから離れるときに、すごく心細かったし、すごく傷ついていました。
傷ついてるから辞めたんですよね。
辞めるということは栄転ということはあまりないので、転職をしたことがある人はわかると思いますが、やはり傷ついてるから転職するんですよね。
良い状態だったら転職なんかしないので、辞めるということはそれなりの傷つきがあったわけです。

その後に自分自身に何があるんだろうなと考えたときに、途中で辞めたので2600万円くらいの借金がありました。正確に言うと貯金も貯めていたので少し払うと1千万ぐらいの借金がありました。
途中で辞めたので2600万円くらいの借金を背負うことになりました。

13年自衛隊にいましたが、退職金はそれほど多くもらえませんでした。200万ちょっとだった気がします。
こういう言い方をすると偉そうですが、「こんなもんしかないんだな」と思ってしまいました。
自分の手元には借金しかないし、医師免許しかないなと。
家族はいるな、将来の見込みってどうなんだろう、とか。
若いと言ってもそんなに若くもないしな、とかいろいろ思いました。

今から医局に入るとか大学のどこかにいるわけでもないし、どこかに所属しているわけでもないし、本当に自分自身、悩んだりしました。

その時のことを思い出しました。
この、「自分が傷ついている」という言葉を書いた時に。

当時はONE PIECEが好きだったので、ルフィがお兄さんのエースを殺されて、「手元に残ってるのはなんじゃ」とジンベエに言われたときに、「仲間がいるよ」とルフィは言うのですが、そのシーンを思い出したりしながら、自分はどうしていくんだろうと考えたりしていました。

ルフィの場合は仲間がいますし、僕も一部仲間はいましたけど、多くの患者さんにはそんなに仲間はいないんじゃないかなと思います。

これは僕の話ですが、こんな風に自分が傷ついているということを客観的に書き出してほしいという意味で書いてみました。
何で傷ついているのか、そして手元には何が残っているのか、ということを客観視するときに書いてほしいです。
書いたり、言語化してもらいたいです。

傷ついている証拠

傷ついている証拠にはどういうことがあるのかというと、例えばアルコールの問題やギャンブルの問題が悪化していないか。
眠れているのか、食べられているのかとか、今の自分の自尊心はどう変わっているのか。
自己評価はどうなのか、自分のことをダメだと思っていないか、思っているのであれば傷ついている証拠ですよね。
自分には価値がないとか、自分には能力がないと思っているのであれば、傷ついている証拠だったりする。
そういうことが証拠として挙げられるのではないかなと思います。

僕もそのとき結構お酒を飲んでいたような気がします。
傷ついているから飲んでいるんだなと思って、飲むのやめようかな、飲むのを減らした方がいいなとか自戒したりしていました。

自助会

僕自身はそういうことからどう立ち直ったかというと、自分は精神科医だからとにかく仕事を淡々とやっていこうということで、指定医も専門医も取れてその後開業することになりました。

開業してからもコツコツやったりやらなかったり、やれなかったり。
うまくいったり、うまくいかなかったり、口コミに一喜一憂したりしながら、たまたまYouTubeを始めてそれがたまたま跳ねました。

たまたま跳ねていく中で、自助会も始めたということになります。
自助会にしても、自分からというのもありますが、それもたまたまなんですよね。
たまたまうちのクリニックで働いていた人が、自助会みたいなことをやりたいということで始めて、その人が辞めてしまったので僕が引き継いだのです。

コロナで一回止まってしまったのですが、通っている患者さんが英語圏だとこんな良い自助会がオンラインであるのに、日本語ではないのはどうしてですかねみたいな話をしていたから、英語圏では当たり前にあるサービスが日本にないのは良くないなと思いました。
そこで、自分で始められる範囲で始めたというところがあります。

もう一方でYouTube側としても、広告収入がどんどん減っていくんですね。
YouTubeはもう今3年目なのですが、僕がYouTube始めた時と今のYouTubeは全然違っていて、どんどん広告収入も減っていく中で、メンバーシップをちゃんとやって稼いでくださいという風にYouTube側からも言われています。

そういう流れがあるので、おそらく僕以外のYouTuberもオンラインサロンを作っていくことが見えていたので、そういう流れの中で自助会やオンラインサロン的なものを走らせてみるのもいいのかなと思って、今年の3月24日から始めたという経緯があります。

患者さんたちのこともよく考えるのですが、実際手元に何が残っているのかというときに、やりたいこともないし、手元にも残ってませんと言ってしまう人たちがいます。
本当に不運というか、不幸というか、そういう人たちがいる。

うつから良くなって、いい生活、楽しい生活、自分らしい生活が送れる人もいれば、うつは良くなったけれどもなかなか自分らしい生活が送れない、物理的に送ることが困難になってしまっている人たちもいます。

これからはメタバースの時代にもなっていくので、そういう中で自助会や患者さん同士のつながりとか、ボランティアができる場所があると生きがいになるのかなと思って、僕がやっていることと皆さんのやっていることがつながればいいなと思って、自治会を始めたというのがあります。

僕はたぶんオンラインサロンに複数入る時代が来ると思っています。
実際、東京のエンジニアの人たちは複数の勉強会やオンラインの繋がりに入っていたりもするので、これからのYouTuberの人たちはサロンなどをしないと収益化は困難というのもわかっているので、サロンは増えていくんじゃないかなと思っています。

複数入るサロンの中に精神疾患のこととか、こういう心の悩みを語る場所があるのも面白いんじゃないのかと思って1個作ったという感じです。
だからいろいろな人に入ってもらいたいなと思いますし、ボランティア的な協力もしてもらえたらなと思っています。
今はちょっと高いけれど。

とにかく、自分が傷ついているかわからない人たちはたくさんいるので、まず「傷ついている」ということを1回書いてみて、実際に何に傷ついているのか、どうして傷ついているのか、自分の手元に何が残っていて、何を失ってしまったのか。
そういうのは苦しいんですけどね。
書くことは苦しいけれど、それをやるということはとても重要かなと思います。

今回は、自分が傷ついているかわからない人、というテーマでお話ししました。


2022.8.26

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