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りゅうちぇるさんとぺこさんの離婚を精神科医目線で語ります (診察室での離婚や別居の話)

00:00 OP
01:01 時間の中でわかってくることがたくさんある
03:55 さまざまな家族のパターン
05:06 離婚に対する圧力
06:36 子どもに対して
07:32 家族の責任が重すぎる

本日は「精神科患者さんの家庭における離婚、別居の話」をしようと思います。

今回は時事ネタを扱うのですが、この時事ネタをきっかけに、精神科臨床でよく見る離婚の問題や別居の問題を語ってみようと思います。

この問題で悩んでいる家族の方やご本人がたくさんいらっしゃると思います。
こういう話は教科書や本には載っていませんし、インターネット上にもなかなか出てこなかったりすると思います。ですから、こういうYouTubeでお話ししようと思います。

時間の中でわかってくることがたくさんある

ryuchellさんとpecoさんが離婚されたということのようです。

僕もインターネットニュースを見て驚いたのですが、ryuchellさんという方が、自分の性自認の変化が起きたようです。
自分が性的マイノリティーだということに気が付かれて、彼氏の役目、夫である役目、父親である役目ということがどこか苦しくなってきたということで、離婚をすることになったようです。
そして、子育てのパートナーとして一緒にやっていこうという話になったようです。

僕はちょっとしか知りません。ryuchellさんのこともちょっとしか知りません。
AbemaTVで1回お会いしたことがあるくらいですが、とても素敵な方ですよね。
才能豊かでいろいろ考えがあって、自分のことを考えて発言されて、一流の芸能人の方ですよね。

そういう方が自分の内面や自分の行動や決断をカミングアウトした、公表したということにはすごく意味があると思います。

こういう話は精神科臨床では珍しくありません。
夫婦関係の中で何かが変化して、それがいわゆる普通の話とは違って、ある特殊な問題が起きてしまったということで何かうまくいかなくなる。
結婚という制度が合わなくなることは結構あります。

ryuchellさんの話では、自分を偽り続ける苦しみ、ということですよね。
奥さんは奥さんで、愛されないという苦しみ、愛されないというとアレですが、性的な意味で愛されないという苦しみもあったと思うので、離婚に至るというのはあるかなと思います。

最初から分かっていただろうという話ではないんですよね。
時間の中でわかってくることがたくさんあるので、そういうこともあるなと思います。

よく言われるのは、子育ての責任はどうなんだというのがあります。
離婚するなんて無責任なんじゃないかとか。

あとは恋愛の自由ですよね。
そうは言っても2人ともまだ若いですし、人生の中で性行為の楽しみというのはあるじゃないですか。
そういうものを放棄するというのは、酷なのかもしれないですよね。
恋愛の自由も獲得できたほうがいいんじゃないか、というディスカッションになるかなと思います。

さまざまな家族のパターン

では実際に僕らが見ている臨床はどういう話なのかというと、離婚の話は決して精神科の中ではタブーではありませんし、よく話に出ます。

例えば、旦那さんが発達障害、奥さんが発達障害で、夫婦関係が継続できなくなってしまった、カサンドラ症候群のようになってしまった、離婚の話が出てきてしまった。

旦那がギャンブル依存、アルコール依存で、家庭がぐちゃぐちゃになってしまったので、もう愛せなくなってしまった。病気とわかっても愛せなくなってしまった。

躁うつ病だとわかっていても、躁状態の時の激しさに家族がついて行けなくなった。
うつ病の時のうつ状態の頼りなさに、家族がついて行けなくなったなどいろいろあります。

慢性疾患を支える家族というのは、やはり精神疾患に限らず苦しいんですよね。
若いけれども障害を持ってしまったとか、脳梗塞になってしまったとか。
いろいろな家族のパターンがあったりします。
難しいなと思いますね。

離婚に対する圧力

常識的には「離婚はダメ」ということになっていますね。
カトリック的な教えは日本でも無意識的にじわっと広がっています。

「日本は別にカトリックの人はいないだろう」と言われるかもしれないですが、日本は明治期に一気に欧米化しました。
欧米の価値観を取り込もうとしていた。だからうっすら流れているんですよね。欧米の価値観に支配されてしまっている。
欧米の価値観の中では、基本的にはカトリックは厳しいですから、離婚はダメということになっています。まずそういうのがあります。

日本も「お前らが我慢しろ」みたいな要素があります。
今度は「世間体」というものがあって、離婚はダメみたいな感じなんですよね。
つまり、離婚はするな、お前らは頑張れ、我慢しなさいという。
世間体が悪いだろうというやつです。

両家からの圧力があったり、無理解の問題があったりします。
弁護士的な問題や法律の問題が絡んだり、お金の問題、教育費の問題があったりして、離婚は進みません。
家族も本人も苦しいです。二人で話し合って別々に生きようということを決めても、やはり離婚はダメという圧力があったりしてなかなかうまくいかないことが多いです。

子どもに対して

子どもに対してどうなんだろうと思いますが、子どもへの教育というのは、やはり常識との戦いというか、そういうことを教えていくということなのかなとも思います。

常識は全て正しいわけではないし、疑う余地のあるものなんだよということです。

じゃあ子どもにそれをいつ教えるのか。
小学校の時から常識を疑えというのはちょっと過激すぎる気もするし、大人になってからでは遅いなという気もする。なかなか難しいと思います。

親だけが教えるのではなくて、子どもの教育はすごく難しいですから、社会全体でやっていく。
多様性を社会全体で許容して、社会全体で子どもたちに教えていけるのがいいんじゃないかと思います。

家族の責任が重すぎる

こういう話をすると、他の男女はどうなんですか、ということですよね。

男女の中でも、最初は好きだったけれど今は異性として見られなくなった、恋愛の対象として見れなくなったら二人とも別れていいんですか、別れて自由に恋愛して子育てをやればいいんですか、ということになるんだけれども、ここもよくわからないですね。

この理屈でいくのであれば、確かに男女の自由の理屈も成立するわけじゃないですか。
確かになという気はしますが難しい問題だなと思います。

でも僕はよく思うのは、僕は哲学者でもないし、倫理学者でもないし、男女はどうあるべきかということを考える立場でもないのですが、やはり精神科臨床をしていて思うのは、家族の責任が重すぎるということです。

医療保護入院というのは家族の同意で強制入院をさせるのですが、やはり家族が負担をしなければいけないことが大きいです。

例えば、本人が働けなくてなかなかお金を稼ぐことができない場合、生活保護という手段もあるのですが、それは家族がお金を出さないとか、家族が絶縁状態であるという条件じゃないとなかなか取れません。
社会システムとして、確かに家族がフォローするとか家族が見張るというのは一つの正解ではありますが、ちょっと重過ぎるし、時代に合っていないなと思います。

シングルマザーの問題もそうで、離婚したやつが悪いんだから自分たちで頑張れみたいな要素が強すぎると思います。
そもそも離婚するなよみたいな話だったり、嫌だったら離婚すればいいじゃないかと無責任に言ったりとか、なんかなと思います。
これも社会的な問題のような気がします。

多様性とか福祉とか、個人の責任の問題とか、世の中は運と不運でできていますから、運の要素は大きいので、その運や不運がまた平等になるように社会正義が行われないといけないのですが、社会正義よりも家族の問題にしてしまうというのが日本の問題、日本の価値観という気がします。

こういう話は精神科の臨床でよくあるということです。
悩んでいるご家族はいます。

いつも通院に付き添っていい奥さんだなと思っていても、やはりすごく苦しんでいます。
旦那さんが奥様がいないときに一人で受診して薬を取りに来るときに、「先生に言うのは申し訳ないんですけれど」と言って、本当は私は離婚したいと思っているんですとか、本当は僕は離婚したいと思っているんですという話とか、相談を受けることはたくさんあります。

でも病気が悪いから、ここで見捨てるのはなんというか人でなしなのでしょうかと相談を受けたりして、僕も頭を悩ますというか、どう答えてあげたらいいんだろうと考えます。

とにかくいろいろなあり方があると思いますし、正解は一つではないというのはあると思います。

僕はそういう世間体というものよりも、やはり個人の人たちが幸せになってもらった方がいいと思います。
患者さん本人も、患者さんの家族も、世間体とかそういう常識ではなく、個人個人が幸せと思う道に行けたらいいと思います。

個人が幸せになるような道に行けるように、社会の雰囲気や常識が変わっていけばいいと僕は思っている立場なので、今回はこういう時事問題を取り上げることで、精神科臨床で困っていることを皆さんに知ってもらいたい、その上で多様性や社会の問題を理解してもらいたいと思いました。


2022.8.28

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