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カウンセリングを開始する前、トラウマを治療をする前に身につけておかないと危険なもの

00:00 OP
00:33 生きる意味?
03:29 メタ認知、自己理解の危険性
06:56 サザエさん家は普通
09:52 ニュースはネガティブばかり
12:36 常識としての楽観性
14:57 自分が傷ついていることを認める

本日は「診察を受ける前、カウンセリングを受ける前に身に付けておかねばいけないこと、これを知らないとヤバイよ」ということをテーマにお話しします。

生きる意味?

精神科を受診される方は、言うか言わないかは別として、生きる意味を問うところがあります。
こんなに苦しい思いをしているのはなぜか?
どうして自分だけがこんなにつらい思いをしているのか?

精神科の患者さんというのは人口の1~2%くらいいます。
もうちょっといるかもしれません。
400万人くらいいるので3%くらいはいるのかな。

ただ、家から出ていないことも多いので、実際に外に出て出会う人というのは、人口の1~2%くらいになるんじゃないかなと思います。
ほぼ出会わないということです。

ほぼ出会わないので、自分1人だけが苦しいんじゃないかと思うと思います。
病院に行けばそういう患者さんはいるし、YouTubeを見てくれれば、コメント欄などを見ればこんなにも苦しんでいる人がいるとわかるし、僕のYouTubeの再生回数や登録者数を見てもらえば、決して一人ではなく、たくさんいるとわかると思います。
でもやっぱりなかなかリアルな世界では感じられないと思います。

だから「何で自分だけが?」と思い、生きている意味はないんじゃないか、死んでしまいたい、何で私だけがと社会から疎外されて苦しい思いをされているのかなと思います。
生きる意味を知りたいのだと思います。
皆さんそんな感じです。

僕自身ももちろん、生きる意味や何で死ぬのか、いつか老いるのか、病気になるのか、なぜ別れがあるのか、僕もそういうことで悩みましたし、今も悩んでいるから精神科医という仕事を続けているわけです。
でも臨床していく中で、患者さんよりもよく知っていることが多いと思います。

ただ、これを皆さんとすべて共有できるのか、YouTubeという無限に説明できる時間を与えてもらったことで、僕はそれを皆さんにきちんと伝えているのかというと、実はちょっと違うのです。
生々しくは伝えないようにしています。

「いやいや、ずいぶん益田は他のドクターとか、他のチャンネルと比べると生々しい現場を伝えてるじゃないか」と思われるかもしれませんが、それでもやはり抑えているんです。
それがなぜかという話をちょっとしようかなと思います。

メタ認知、自己理解の危険性

結局、何かを理解していくためには、本当の意味で、どうして自分が不幸なのか、どうして自分たちが苦しいのか、死んでしまいたくなっているのか、ということを考えるためには、人間の脳ではわからないことなのです。
人間の脳の処理能力を超えたものを考えようとしているんですね。

でも、脳の処理能力を超えていると言われても、知りたいですよね?
だから僕らはいろいろなことを駆使して少しでも近付こうとするのです。

そのひとつがメタ認知です。
メタ認知の力だったり、内省を深めていくことだったり、哲学みたいなもの、過去の偉人が考えてきたものを知り、温故知新、それを自分の人生に応用する方法を学んだり、生い立ちから今の自分の感情まで自己理解を深めていく、ということなんです。

でもこれは結構危険な行為なのです。
今までの常識、自分の世界を疑って壊し、そしてトラウマに直撃していく。トラウマを直視しようとしていくという行為なんです。
傷口をもう一回ガッとえぐって、そこからグっと異物を取っていく。

救急の外傷治療みたいなものです。
砂や石が混ざっている外傷を、バッと傷を開いて水で洗ったりしていく、取っていく、そしてレントゲンを見て、何か異物が残っていないか確認する、という作業と似ています。
だからとても痛みを伴います。

それをするためには、やはりその準備段階、準備が必要なのです。
それは何かというと、世界は安全だ、未来は明るい、ということを知るということです。
つまり、常識としての楽観性、というものを身に付けてからスタートしないといけないのです。

こういう話はしていなかったのですが、臨床的にはすごく当たり前の話です。
うつ病で苦しんでいる人、統合失調症の幻覚妄想状態の人、摂食障害でもうほとんど食べられなくて入院になった人、彼ら彼女らをカウンセリングはしません。

精神科医としては当たり前の話なのですが、急性期において、本当に今からでも死にたいと思っている人に対してカウンセリングはしません。
それは苦しいことを考えさせるからです。
だからしないのです。

でも、苦しいことをなぜ考えさせてはいけないのか、ということをもうちょっとわかりやすく言えば、僕らはもう体感的にわかっているのでしないのです、あまりにも当たり前のことなので。
右足を出したら次は左足を出す、だから歩けるんだ、というぐらい当たり前のことなのですが、でも皆さんはそういう体感がないと思うので、それを僕も言語化していこうと思いました。

言語化すると、常識としての楽観性ということなのかなと思います。

患者さんたちは常識的な楽観性を持っていないことが多いです。
これは自分たちで回復の中で身に付けていけばいい、学んでいけばいい、というものともちょっと違うと思うのでもう教えます。
教えることにしています。
知った方が良いです。

サザエさん家は普通

例えば、サザエさん家、ちびまる子ちゃん家、のび太くん家は別に普通と言えば普通なんです。

ちょっと怒られているし、ドラえもんという素晴らしい友人もいますが、でも一家の仲が良くて、お父さんもいてお母さんもいて、のび太くんは怒られるけれど愛されています。

クレヨンしんちゃん家もそうです。
インターネットではあんなに稼げないと言うかもしれないけど、でも一家の仲がいい、家族仲がいい。
お父さんが浮気をしていない、お母さんがお父さんのことをバカにしていない、夫婦がケンカをすることがあっても助け合っている、子どものことを一番に愛している、大事にしているというのは「普通」なんです。

もちろん時には魔が差すこともあるかもしれないし、時には家族だって順風満帆じゃないので何か困る出来事はあります。
でもおおむねこれが普通なんです。

だけど虐待を受けていた人、患者さんたちは、これが普通だとわかってないことが多いです。
よその家でも自分の家と同じような暴力や夫婦げんか、親からの虐待があったんじゃないかと思っている人がいます。
それはあなたの家だけが特別だったのであって、特別と言ってもそんなに珍しくはないですよ、たくさんいるのですが、でも大多数の家ではありません。

これをまず理解していく、なんとなく体で理解していくことがとても重要です。
自分も結婚して、将来あんなまた怖い家、家族を作るのか、またあんな嫌な思いを家族を作ったらしなければいけないのか、またあんな嫌な思いを自分たちの子どもにさせるのか、という風にどこまで言語化しているのかどうかわからないですし、意識に上っているかどうかわからないですが、そういう風に悲観していることが多いんです。

けれどもそれは違うんです。
全然普通のご家族を作っています。
治療の過程の中で結婚して幸せになった患者さん、子どもが生まれて幸せそうにされている患者さんはたくさん僕も見ています。
それを知ってもらいたいなと思います。

患者さんたちは、映画やアニメ、漫画を見ない人が結構多いです。
物語というものを吸収するのが苦手だったり、興味を持てなかったりして、平均的なところを知らないことが多かったりします。

ニュースはネガティブばかり

と言いつつ、映画にしても漫画にしても、平凡なもの、ありきたりな幸福な家族だけを撮り続けることはあまりありません。
テレビのニュースだって、ネガティブなものが多いです。

平凡なものとか、安心できるものとか、安全なものばかり撮影していたらつまらないですからね、テレビは。
だから映画にしても漫画にしてもニュースにしても、ちょっとネガティブなものに寄せるし、そこに登場してくる人たちはみんなネガティブなことを言いますが、それはリアルではない感じです。

僕は動物番組がすごく好きなんです。
「ダーウィンが来た」など好きで観ているのですが、サバンナだってライオンの横でバッファローたちが、真横にはいないけれど一緒に水を飲んでいます。
ゾウの横で踏まれるかもと思ってビクビクしていないです。
普通に水を飲んでいるじゃないですか、キリンも。

そういうことなんです。
そういうことって言われてもわからないかもしれないですけど。

確かに世の中には争いなどの悲惨なシーンがあるかもしれないけれど、わりとみんな平和に生きています。
平和そうにしていて、ほとんどの時間は狩りよりも寝ています。
あれが動物たちの世界であり、人間の世界もだいたいそうです。

子どものライオン、子どものゾウ、子どものサルたちは、動き回って遊んで、傷ついたり驚いたりしていますけれども、大人たちはゆっくりのんびりと寝ています。
人間の社会も一緒なんです。
だいたい寝てます、大人は。
起きていて何か必死にやっているように見えても、意外と仕事をサボっていますから。
そういうイメージが持てない人、益田は嘘をついてるんじゃないかと思う人は、やっぱりちょっとズレていたりします。

もちろん10代とか若い頃、思春期の始まりというのは争いの時期です。
争いであり競争の時期であり、迷いの時期なんです。
思春期というのは特別な状況です。
思春期の前の子どものときは、そんなに争いや苦しみはなかったはずだし、思春期が終わったら平凡な平和の世界が待っています。
だから思春期だけのものだというのも知った方がいいです。

もちろん患者さんは思春期前も苦しい生活を送っている方もたくさんいただろうし、色々な思いもしますが、それはあなたとあなたの近くの世界だけであって、多くの世界というのはそうではないということをまず知ってもらいたいなと思います。

常識としての楽観性

常識としての楽観性ということで、犯罪は減っています。
犯罪は減っているんです。
犯罪はどんどん減っているし、道徳やモラルは良くなってきています。

僕も決して長生きをしているわけではないですが、社会の中の正義感というのは高まっています。
男女差別の問題、セクハラ・パワハラの問題、いじめの問題はどんどん良くなっているのです。
件数として減っていたりします。

メンタル疾患にかかっている人が増えてるじゃないか、と言うかもしれないですけれど、でも自殺の数は減っています。疾患にかかる人は増えたけれど、医療にアクセスしやすくなったということでもあります。
だから良くなっているのです。

社会は病気も減っているし、進歩もしているし、テクノロジーも良くなっている。
お金の格差は広がっているかもしれないけれど、みんな豊かになっています。
だから若者はお金よりもやりがいを仕事に求めるようになってきている。
これは豊かさだと思います。

こういう前提を知ってもらう。
何度も言いますが、自分や自分たちの周りは確かに悲観的に見えるかもしれないけれども、ここの部分をポコッとちょっと移動してもらえば、本当に楽というか、新しいというか、良い世界が待っています。

だから治療を終えても苦しいんじゃないかと思うのは嘘で、治療を受けることによって自分が変わっていって、ここじゃない場所に行ければ、決して苦しいということはなく、楽な世界に行けるのです。
それは僕が自信を持って保証できます。

僕が今言ってることがわからないうちに、本当にガツガツトラウマの方にアプローチしていく、自分の内面に入っていったら、それは迷っていくし、生きていることには価値がないと思うかもしれないし、死ぬことだけが自分の自由なんだという風に思ってしまいます。
こういう前提を知らないから。
こういうことの真逆を持っていたらそう思うので、やはりそれは損だなと思います。
もっと楽な世界があるのに、どうしてそんなに悲観的な世界でディスカッションしているのかなと思ったりします。

自分が傷ついていることを認める

患者さんたちが準備ができましたとなると、自己受容をしていく過程の中で、自己受容の前に知らなければいけないことがあります。

結局、自分が傷ついているということを認めていかなければいけない。
自分は傷ついているんですよね。

それは自分の弱さだったり、不運だったり、自分のせいじゃないけれど自分だけが被っているものかもしれないし、ある種の生まれながらの劣等性の問題かもしれない、障害の問題かもしれない。

でもそれらについて僕らは骨の髄まで傷ついているということをやはり知っていくことが必要です。
それを否定して「いや、違うんだ」「モノの見方なんだ」「甘えているから自分は傷ついていると感じているんだ。でも本当は傷ついてないんだ」と思うと、話はややこしいというか、治療は進んでいかないです。

僕らは傷ついています。
そして同時にすごく怒っています。
怒っている、傷ついていると同時に怒っているのです。

傷つけられたことに対して怒っているし、助けてくれてないことに怒っているし、自分を理解してくれていないことに心底怒っているのです。
抑え込まれた攻撃性だったり、自分の中にある暴力だったり、抗う力だったりします。

治療をしていく中で、絶対に患者さんは怒るのです。
益田に怒るのです。本当に怒る。

僕はなんでこんなに矢面に立たなきゃいけないんだという感じですよ。
YouTubeで怒られ、患者さんに怒られ、色々な人から怒られてますけど、
本当にそれは「誰を怒ってるんだ?」という感じもします。
「僕が怒られてんの?」と思いますが、「いや、でも怒られる筋合いないよね」と思うんです。

それは何を怒っているかというと、僕ではなくて、何かに怒っていて、だけど怒る相手がいないから僕に怒っている。

思春期の子どもが父親や母親に対して怒るのと一緒で「何でご飯準備してくれないんだよ」と言って怒ってますよね、子どもって。
あれと一緒でなんか僕も怒られていると思います。

しかもそれが中高のとき怒ることができなかった分や、10年20年旦那に対して怒ることができなかったこと、子どもが育てにくくて抑え込んでいた怒り、全部まとめて何かよくわからない状態でこっちに来るからキツイです。

だけどそれは抑え込まれているし、気づけて良いことなんです。
だからこの怒りや爆発は、カウンセリングの中では避けて通れないと思います。

でもこの怒りというのが、もし僕の方に向かなかったら、それはどこに向かっていくんだろう、というのも思うんです。
もしこの怒りが僕に向かなかったら、それは患者さん本人に向かうかもしれないし、患者さんの家族だったり、患者さんの子どもに向かうかもしれないので、やっぱり僕に向かうのが一番良いんだろうな、と思います。

でもそれを向けるためには、そして向かった後に僕も傷つけられただけだと嫌ですから。
傷つけられただけでGoogleの口コミに「☆1」をつけてそのまま行ってしまう人もいますけど。
そうではなくて、傷つけた後で反省してもらって「いやいや、益田先生ごめんね」と謝ってほしいし「よくやってくれましたね」と背中さすってほしいです。

それをしてもらうためには、こういう常識としての楽観性、世界の明るさ、未来の明るさや安全性、そして安全な世界にいる僕ら治療者というのはあなたの敵ではないし、味方だし、いいんだよ、みたいな話をわかってもらう必要があると思います。

治療者に対する信頼感と言いますが、それは僕らが信頼させるもの、信頼してくれないのは僕らが聞いていないからだ、僕らがちゃんとやっていないからだ、そういう治療者側のマゾヒスティックなものから成り立つものではありません。
信頼感とは何かというと、患者さんが視線の先を変えているということなんです。

そもそもこちら側を見てるから不信感があるだけで、別の側を見たら大丈夫ということだったりします。そんな感じです。

とりあえず、世界は安全だ、未来は明るいんだ、ということです。
それをまず知らないと、カウンセリングをやってもただ苦しいだけになってしまうよ、ということをお話ししました。

ということで、なかなか治療がうまくいかない人、カウンセリングをする前に知らなければいけないこと、そういうことをテーマに、今回このお話をしました。


2022.9.17

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