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自己肯定感の高めかた 

00:00 OP
01:01 愛情、成功体験の乏しさ
02:46 自傷行為
04:26 認知の歪み
07:52 どうやって自己肯定感を高めていくのか

本日は「自己肯定感の高め方」というテーマで、愛情欠乏性および虐待サバイバーの人に向けて動画を撮ります。

色々な本やインターネットでも、どうやって自己肯定感を高めたら良いのですか、という質問があって、有名人の方が答えたりしてます。有名人や著名な方がいろんな持論を述べていると思います。
実際、精神科医目線でこの問題にどう取り組んでいるのか、どのように見ているのかということをお話しします。

愛情、成功体験の乏しさ

一般の人の自己肯定感を高めるテクニックはいろいろあると思うんです。
成功体験を積む、人に愛されるようにする、挨拶をしてみる、貯金を頑張ってみる、何でもいいんですけれど、何かしらの目標設定をして何か挑戦してみるということをすると、成功体験を積めるので自己肯定が高まっていくのだと思います。

ただ臨床場面で見る方はどういう人かというと、例えば親からの愛情が少なかった、愛情はあるんだけれどもそれが条件付きの愛情だった。
あとは自分自身の能力の問題で成功体験が少なかった。
そして成功体験が少ないが故に厳しく育てられたり、自分で自分を厳しく律することが多くて、大人になってから小さな成功を積み上げていっても、自己肯定感を持てない。
そんなのできて当たり前だと思って、成功体験としてカウントできないとかあります。

「早起きできて良かったですね」と言っても、「そんなの当たり前じゃないですか」。
「仕事を続けて偉いですね、勤続10年じゃないですか」と言ったら、「そんなの誰でもそうでしょう」「別に我慢してただけです」「出世はしてないからこんな10年意味なかったです」と言って、成功体験としてカウントできなかったりする人は結構います。

それは一般の人のそれとはちょっと違って、やはり精神科らしい、患者さんらしい認知の歪みというか、苦しさなのかなと思います。

自傷行為

10代の人の10人に1人は自傷行為の経験があると言われています。
こういう人はどういう人なのかというと、倒錯的だったり、暴力的だったり、不安だったり、抑うつ的だったりします。

倒錯的とは、ストレートにモノを愛せないということです。
女性を愛するんじゃなくて、ハイヒールを愛してしまう、脚フェチとかフェティシズムになってしまう。
仕事を頑張りたい、仕事で成功したい、というよりは、お金が儲かるからやりたいんです、とひねっちゃうんです。

医者として患者さんを救いたいです。ストレートでいいじゃないですか。
別にそれでいいんですけど、それで動機になりうるんだけど、倒錯的な人だと、そんなの偽善的だ、お金が儲かるからやってるんでしょう、コスパがいいからやってるんでしょうなど、何かそういう形になっちゃう。

もしくは暴力的だと、「優越感に浸りたいからやってるんでしょう」そういう言い方をしたりします。

不安な人、抑うつ的な人だと、「医者になったら病気になってもすぐわかるからをやってるんですか?」「病気になってもすぐ検査したり悪い医者を見つけやすいように、自分も医学知識を勉強してるんですか?」と言ったりします。
そんなひねくれた言い方をしなくてもなと思いますけど、その人にとってはひねくれた言い方じゃなくて、歪んでしまっているんです。
歪んでいるから、それが当たり前みたいになってるということです。

認知の歪み

人間はどのようにして物事を認識しているかというと、最近僕は「予測する脳」という話が好きなのでそのように脳のモデルを捉えてるんですけど、頭の中に内的な世界、バーチャルリアリティの世界を作るんですね。
それを基に人間は色々考えている。

バーチャルリアリティーがあって、現実世界とバーチャルリアリティのズレを認識しながら、適宜行動修正をしたり、認知の修正をしたり、不安だったら回避したりするんです。

この内的な世界、頭の中にあるバーチャルリアリティの世界、というのはどうやってできているかというと、生い立ちの記憶、今までの経験、遺伝子的なもの、知的な能力、遺伝的に特徴があります。
食べ物が好きな人だったら、食べ物がおいしく見えるような世界観になっているだろうし、例えば言葉は悪いですけど、僕は男性なんで女性好きの方が医者でいると、女の人と遊ぶことが人生にとってきらびやかに見える世界観だったり、色々な人がいます。

こういう体質や経験から内的な世界ができているんですけども、一番最初の人間関係で親との関係が崩れてしまったり、子どもの時の成功体験が少なかったり、親から「こんなんじゃダメだ」と厳しく育てられ過ぎると、やはり内的な世界、頭の中のバーチャルリアリティの世界が歪んでしまう、認知の歪みが起きてしまっているということになります。

現実を見ても、あるがままを見ることが困難で、悪く捉えがちになってしまいます。
小さい成功体験を積んでも、実際は成功していても、上手く行っていても、悪く捉えてしまう。
成功体験として積み上げていけない。
自己肯定感を高めることに至らない、というようなことが起きたりしています。

誰かが自分のことを好きだとか、愛されることがあっても「それは性的な欲望だから好きなんでしょう?」「本当に僕のことを好きなわけじゃないでしょ?」「お金目当てなんでしょう?」みたいに曲げて見てしまうんです。

でも性欲抜きの愛情ってなかなか難しいし、ましてや大人になってくるとないですよ。
親が子どもを愛するような無条件の愛情というのはやはりない。
それがなかったから現実的にもう一度それを取り戻したいと思ってやるかもしれないけど、もう立派な女性というか、男性というか、性的な魅力のある肉体になってきているところで、そういうものはなかなか手に入りにくい。それでいいんです、そもそも。

性欲があり、その人の積み上げてきた成果、お金の問題があり、仕事のことがあったり、名誉があったり、何でもいいんですけど、それを含めてその人の魅力であるのにも関わらず、何か悪く捉えてしまうということが起きたりしてます。

どうやって自己肯定感を高めていくのか

では、どうやって自己肯定感を高めていくのか?

普通にやっていれば小さな成功体験、何でも自己肯定感を高めるまで繋げるのですが、それがむしろ逆になってしまう、マイナスになってしまう場合どうしたらいいのかというと、これは結構難しいです。
難しくて「じゃあ、こうしたらいいですよ」という単純な話じゃないです。

内的な世界とは何かというと、無数の構成要素によってできあがっているんです。
産まれてから今に至るまでの膨大な経験、膨大な知識があります。
目に見え、文章にしたり言葉にしているもの以外にも日々入ってきているわけです。

この無数の構成要素を一つずつ訂正していくしかないんです。
親ってどういうもんなんだろうね、愛ってどういうものなんだろうね、死ぬってどういうことなんだろうね、と抽象的なものから具体的なものに至るまで、色々なものをディスカッションして訂正していく作業が重要です。

臨床をしていて僕らがいつも思うのは、焦点化された治療というものだけで治療がうまくいくわけじゃないんです。

論文になるような認知行動療法、論文になるような新しい治療のメカニズムやナントカ療法というものはありますが、論文にしやすいようにするためのモデルケースというか、限定的なパッケージみたいなものは出せるんです。

でも本当の臨床現場というのはそんなにきれいなものじゃなくて、やはり泥臭く何度も何度も同じことを繰り返したり、一見そんなに重要そうでないテーマを扱ったりします。

アルコール依存症の人にアルコールの問題だけを話し合うのではなくて、やはり生い立ちの話をするように、生い立ちの話をしつつも、テレビの話をしてみたりとか、それはなぜかと言うと、その人の内的な世界というのは本当に無数の要素から成り立っているからです。

無数の要素から成り立っているものの中で、ここだけやればいいということはあり得ないんです。
色々なことをやっていかなきゃいけない、ということになります。

色々なことをやってたら、診察時間で足りるんですか?
5分で足りるんですか?
これが1時間になったら足りるんですか?
ということになるんですけど、それは足りないよね。

常識的に考えていったら足りないんです。
だって、明らかに診察時間以外の時間の方が長いわけですから、精神分析みたいに毎日分析をしたらいいんですか?というわけでもないと思います。
何か新しい情報が入ってきたときに、種を蒔いたときに、その人の中で成熟して伸びていくまでの時間もかかりますから。

じゃあ週5で9年間分析を受ければいいんですか?
某有名歌手みたいなことをすればいいんですか?
というと、それは現実的でなかったりします。
診療やカウンセリングだけでは十分じゃない。

じゃあYouTubeを見ればいいの?
YouTubeは膨大にあるから、益田のYouTube見ればいいんですか?と言うんですけど、それももちろんで十分じゃないです、当たり前ですけど。
それは一方的なものだから。
コメント欄を含めても有限だし、その人の内的世界を構成するものとしては十分じゃなかったりします。

では自助会をやればいいんですか?
自助会をやってますけど、そこで色々な人と交流をしていけば絶対良くなるんですかと言われてもわからないです。

何をしたらいいんですか?ということになってきます。

無数の構成要素に対して僕らは色々なものをアプローチしていくし、その運動性というものを患者さんに提供してます。
その中で良くなっていくということがわかっている。

全員良くなっているのですかというと、もちろん全員ではない。
けれどもやはり臨床している中で、患者さんが通院していく中で、途中で脱落せずに何とか食らいついている人は良くなっています。

無数の構成要素、100%のうちの3%でも変わったら結構ガラッと変わるんです。
それを僕らは臨床的にわかっているから続けているし、自分たちがやってることに対して疑問を持ってないというか、疑問は持つかな、そんなに卑屈になってなかったりします。
今のYouTubeや自助会の活動、診療の活動も無意味だと僕は思ってないということになるんです。

ということで、今回自己肯定感の高め方というテーマでお話ししました。

結構難しいテーマですし、スッキリ「これです」という言い方はできないんですけれども、でもこんな感じのイメージを持っているということが伝わればなと思います。


2022.11.4

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