東西線「早稲田駅」徒歩1分。夜間・土曜も診療。心療内科・精神科。自立支援対応

WEB予約はこちら

再診患者専用

03-6233-9538

予約制:木・日・祝休診

0362339538
初診WEB予約

  

再診患者専用TEL

03-6233-9538

パートナーが発達障害、カサンドラ症候群の治療法、その流れを解説

00:00 OP
00:57 メカニズム
02:28 あるがままに見られない
03:45 親子問題、対人不安、コンプレックス
06:15 治療
08:57 知っていくこと
10:30 何が成功か失敗かわからない

本日は「カサンドラ症候群の治療」というテーマでお話しします。

カサンドラ症候群とは、パートナーの方が発達障害、今でいう「神経発達症」の方で、心が通じ合わなかったり、日常の中ですれ違いが起きたり衝突があったりするんです。
その結果、疲弊してしまってうつっぽくなってしまう。
うつ症状を持つこと、適応障害になってしまうことを「カサンドラ症候群」と呼んだりします。

今回はカサンドラ症候群の人たちの治療はどういう形で行われるか、ということを解説します。

メカニズム

まず、どういうことが起きているのか、メカニズムについて話をします。

人間というのは現実をあるがまま見ているわけではありません。
現実と脳内の世界にはズレがある。
脳内では常に活動していて、そして現実を予測しているんです。
バーチャルリアリティの世界を作っているんです。

そして現実とのズレを認識して、脳内のバーチャルリアリティの世界を修正したり、行動したりしているわけです。
脳内では「こうあるべきなのに」と思うけど、現実では反応が違って「アレ?」とズレを常に感じるんです。
このズレがストレスだったり、不安を生んだり、怒りを生んだりするんです。

普通にボケーッと歩いてるとズレがないから全然イライラしないです。
でも初めて行く場所や海外に行くと、わからないことだらけなので、ちょっと歩くだけでも疲れます。それに似ています。

仲が良い友達だとズレがなさすぎて、久々に会ったのに久々な気がしなかったり、ずいぶん長く喋っていたのにあんまり覚えてなかったりする。
だけど職場の人、めったに会わない人や緊張する相手だと、たった5分、10分喋るだけでもすごく疲れたりとかします。
そういうことです。

あるがままに見られない

ズレがあるので、それが積み重なって精神疲労を起こしてうつになるということです。
このズレを生んでいるのは何かというと、結局、自分が期待してるもの、パートナーは「こうあるべき」なのにやってくれないなということなんです。

この歪みは何から来ているのか、なぜ現実をそのまま、あるがまま見られないのかというと、例えば知識不足です。

男性の人だったらこう振る舞うだろう、普通はこう振る舞うだろう、でも何でこうなんだ?ということがわからなかったりする。
だけど、発達障害の人はこういうことをしがちだよ、こういうことを考えている、といった知識を補うことで歪みを防げたりします。
予測が上手くなり、予測の精度が上がるので、ズレが減るということです。
現実に脳内が近付く、ということです。

あとは自分が見たいものに執着してしまうということです。
現実のあるがままを見ない。
自分はこう見たいのに何でこうならないんだ、という形で自分の理想を押し付けちゃうパターン。
トラウマみたいなもの、過去の生い立ちに何かあるのかもしれない。
そういうことが原因で、現実をあるがまま見れない。
自分の脳内の世界と現実をすりを合わせることができないのかなと思います。

親子問題、対人不安、コンプレックス

脳内はどういうもので作られているのかというと、記憶と配線で出来上がっています。
配線は脳の構造です。

脳はタンパク質でできていますから、物理法則に従うんです。
魂がある、もしかしてあるかもしれないですけど、おそらくないと思われるので、ただの物質です。物質の動きです。
そこに遺伝子という設計図で決められた脳が作られている。
ハードウェアです。

記憶はソフトウェアです。
記憶がインストールされている。
色々な学習、これまでの知識や経験、そういうものをインストールすることで脳内の世界が作られているんです。

ハードウェアとソフトウェアでできている、と。

で、このソフトウェア、どうしてこういう旦那さんを選んでしまったのか、どうして認知を歪めているのか、どういう知識、どういう経験がそれを生んでいるのかというと、例えばよくあるのは親子問題です。

親子の問題があってそういう人を選んだ、親が厳しすぎたから自分にあんまり意見を言ってこない人を選びたかった、ちょっと無関心なぐらいが心地良かった、などあるかもしれない。

あと、いじめや対人不安です。
いじめや対人不安があって友人関係が上手くいかなかったから、すごい優しい彼を選んでしまった。
過度に言ってこない、ちょっと人間味が足りないロボット的な感じだけど、それが却って心地良くて好きになってしまった、など。

成績など自意識が過剰だったり、コンプレックスがあったりして、華やかな人、強い人、グイグイいく人よりは、ちょっと頼りない人の方が付き合ってて楽だった。
自分が完璧主義だから相手はあんまり完璧主義じゃない人が良かった。
自分も発達障害傾向があるから似た感じがする人を選んでしまった、等々色々なパターンがあったりします。

これらの自己理解がとても重要です。
自己理解をすることで治療が進んでいくということもあります。

治療

先に言っちゃいましたけど、まず最初にカサンドラ症候群の治療は何をすべきかというと、治療の目的は脳内と現実のズレをいかに小さくさせるかということなので、まずは他者理解です。

旦那が発達障害だというところをしっかり理解していく。

本人が甘えているとか、わがままではなくて、そういう特性があるんだよ、ということをまず理解していくことが重要だったりします。
「ああ、そうなのね」と相手のことを理解すればすんなり動くかもしれない。

それだけでは上手くいかない場合は自己理解です。
知識があっても現実を受け入れられない場合は、自分が「こうあるべきだ」と思っているトラウマ的なものを解消していく必要がある。
だから自己理解を進めていく。
親子問題、対人不安、コンプレックスなどを解決していくということです。

それらが終わると、現実と脳内のズレが限りなくゼロに近付いていきますので、その結果、どんな行動をとるのがいいのか、今後の未来、過去は変えられませんから、どんな行動をとるのが合理的、もしくは自分に合っているのか、ということが選択できるわけです。

同居を続けていくのか、別居を選んでいくのか、もしくは離婚を選ぶのかは、それは人それぞれ事情が違いますし、経済的な事情も違いますし、相性の問題だったり色々な要素が絡むので違います。
あるがままを見られるようになったら、敵を知り己を知れば百戦危うからず、一番良い行動がとれますからそういうこと狙う。
それがカサンドラ症候群の治療です。

結局、一緒にいるとうつになってしまっているので、何か変化を起こさなきゃいけない。
変化というのは、自分の認知を変えていくだけでうつを解消できるのか、それとも物理的に環境を変えてあげないとうつは解消されないのか、これは様々なケースがあるんです。
正解はないです。

治療の過程で、すんなり行くわけじゃないんです。
3回、4回の診療だけで他者を理解して、自分を理解して、じゃあ何をどうするのが良いのかとできるわけではないです。

もしできるんだったらとっくのとうに離婚していたりする、もしくはとっくのとうに諦めていたりするので、別にわざわざ精神科に来ないんです。

精神科に来るということは、なかなか上手く行かない、自分で決められないので1年、2年、週に1回、月に2回と通いながら、何が良いのかなということを右へ行ったり左へ行ったりして考えたりするというのが普通です。

知っていくこと

こういうことを重ねていく中で知るんです。
自分が考えているより世界ってずっと複雑なんだな、ということがわかります。
色々な人がいる、色々な考え方がある、色々な不幸のタイプ、不運のタイプがあるんだ、ということを知ると思います。

自分の生い立ちのことも考えると、すごく苦しいというか、やるせないというか、孤独な気持ちになると思います。
世界の複雑さを知れば知るほど、自分たちがいかに孤独かというのがわかってくるので、その治療の過程も決して楽ではないです。

理解してほしいな、孤独は嫌だな、不安だな、と思うんだけれども、誰にも理解されないんです。
友人からも親からもなかなか理解してもらえなかったりします。
義母や義父が意外と理解してくれるパターンもありますけど、でもなかなか理解されないんです。

だから苦しいんだよね。
自分が悪いのかな、という気になるんです。
見当違いのアドバイスをもらったりして、余計苦しくなったりすることもあります。
それはみんなそうなんです。

だから家族会や自助会があるんですけど、そういうのも利用したり、でもそういう場所で説明するのも嫌だな、という気持ちもよくわかります。
だからYouTubeを見てもらったり、YouTubeのコメント欄を見てもらったりするのもいいのかなと思います。
自助会については、僕もオンライン自助会をやってますから、もしよかったら参加してください。

何が成功か失敗かわからない

同居がいいんですか、離婚がいいんですか、とか色々言いますけど、それはわからないです。
何が成功か失敗かわからないし、やってみても成功するのか失敗するのかわからないです。
どんなに考え抜いても、考え抜いた末に決断したことが失敗だったりすることもあります。
それはそういうものです。

自分がいいと思えば失敗なんかないんだ、と言う人はいますが、そんなに綺麗事ではないので、選んだ結果、失敗や成功という言葉も悪いかもしれませんが、でもそういうことになっちゃうこともあります。
とても複雑だし、そんなに楽なもんじゃないです。
綺麗な話だけじゃないです。

ここに子どもの問題も絡んできますから。
子どもが発達障害傾向があることもあったりします。遺伝性がありますから、そういうことで悩むこともある。
遺伝しないこともあるし、遺伝はするけれど却って社会的に成功することもあるし、色々あります。

そんな感じです。
一言じゃ説明がつかないですけれども、色々なパターンがあります。
今回はカサンドラ症候群の治療というテーマでお話しました。


2022.11.15

© 2018 早稲田メンタルクリニック All Rights Reserved.